16話 あれよこれよと面会開始へ
さてと、あれよかれよとハートに連れられた僕は、そのまま病院に担ぎ込まれ治療を受けた。
診察の結果、治療期間は大体一ヶ月ぐらいらしい。医者が言うにはかなりの重症だったようで、後遺症なく助かったのは奇跡とのこと。
僕も今回の作戦で一生ものの傷を作るつもりはない。
治療室に入ってハートが見えなくなった瞬間、密かに体内で闇エネルギーを巡回させ最低限回復させたので無事である。
しかし、そうはいっても完全に治ったわけじゃなかった。治療が終わってからも僕はリハビリに励むことになった。
まだ歩くのも難しい状態だ。脳は回復させたのではっきりしているが、体の状態は一般人の回復力と変わらないように調整中である。
流石に全部治すと怪しまれるからな。この調子で早まらず治していくつもりだ。
まあいい、それよりシャインスターだ。
彼女等とはまだあれから進展がない。
僕が大怪我をしてしまったせいで、ある程度傷が治るまで面会が禁止されていたのだ。
でも今日面会ができるようになり、僕はシャインスターと会うことになっている。
初めて彼女達がお見舞いに来てくれるということで、少し緊張しているが……大丈夫だ。僕に抜かりはない。
僕はこの日のために何度もイメージトレーニングをし、『魔法少女に近づく男のための五十の奥義』を習得した。
これさえあれば僕はきっと魔法少女と仲良くできるはずだ。
◇◆◇◆◇
そんなわけで僕はシャインスターと面会を始める。特にこれと言って特別な病室ではないが、今だけは世界で最も安全な場所だと言っていい。
僕の目の前には三人の少女が座っていた。
一人は図書館で一度会ったことがあるハート。ピンク色の魔法少女。
もう一人はスカイブルー色を基調とした魔法少女ルミナ。
そして僕とは特にかかわりのないコメット。黄色の魔法少女。
僕は若干緊張した面影を残しつつ彼女らを見据えていた。
「皆さん、今日はありがとうございます。わざわざ僕のお見舞いに来てもらって」
開口一番、僕はそう言うと頭を下げた。まずはお礼からだ。最低限の常識は彼女らに見せなければ。
「い、いえ、そんなことありません! こちらこそ…お見舞いが遅くなってしまって申し訳ないと思ってます」
ハートが仰々しく言った。
「本当はもっと早く来るつもりだったのですけどね。受付の人がダメだって聞かなくて」
っとルミナ。
「仕方ないわ。彼もどうやらかなりの怪我だったようだし」
っとコメット。
コメットは包帯の巻かれた僕の腕と足を見ていた。
僕の体の中で最も重症といわれたのが僕の四肢だ。脳や内臓といった内傷はある程度こっちで治したが四肢に関しては治すとすぐにばれてしまう。だからほとんど治さなかった。
残りの二人も僕の四肢を見て顔が曇った。
「本当にすみません。私が不甲斐ないばかりにあなたを守ることができなきなくて」
「いえ、気にしないでください。十分守ってもらいましたから」
「そんな……。でもその足と腕。どう見ても重症ですよ」
「死んではないので大丈夫です。後遺症だってないって言われたし、結構元気ですよ」
「それは…そうかもしれませんが…」
予想通り。
彼女らの顔は沈んでいた。
それを見てるとやっぱり善人の思想はわからないな、と僕は思った。
人を助けたなら胸を張ればいいのだ。
助けてやったんだからその分金でも払えや、と。そのくらいの気概はあっていいと思う。
なのに彼女らにそんな様子はなかった。
ちょっとした傷でも一々気にしてしまう。そういうタチなのだ。
ただ、意外なことにハートやルミナと違ってコメットはそれほど落ち込んだ様子はなかった。
内心では二人と同じことを想っているのかもしれないが僕から見てそんな顔はしていない。
寧ろちょっと面倒くさいな、って顔だ。
こっちの方がまともな反応である。
そんなシャインスターを前に僕は包帯を解いた。
「ほら、腕はまだ上がらないけど指は動くようになったんだ。もう近くの物を掴むくらいはできる。たった一週間でね」
僕は彼女らに直ってきた指を動かして見せた。まだ満足に動かすのは難しい。だけど、大した傷ではないのだ。
「た、たしかに治ってきてますね」
「あれだけの傷をどうやって…致命傷だったのに」
各々思うところはあるだろう。まあ重傷だったのは確かだしね。
「この病院はどうやらシャインスターが怪我をした時のために聖騎士団が配置されてるらしいんだ。だから回復するのも早いんだよ」
「それにしたって早すぎる気がしますが…」
シャインスターは疑わしい目で僕を見てきた。
僕も脳や大怪我した部分はちょっと治したから、治るのが早いのは当然だ。
もちろんそれは言わないが。
「それより聞きたいことがいくつかあるんだけどいいかな」
「あ、は、はい! なんでも聞いてください! …答えられない質問もありますけど…」
「ありがとう」
僕は彼女らに質問する。
彼女らは魔法少女だ。国家機密として扱われることも少なからず知っているのだろう。そんなことを聞くつもりはない。
それより……
彼女等の隣に浮いている小さなパンダみたいなぬいぐるみを僕は指差した。
「さっきから気になってたんだけど、その浮いてるぬいぐるみって何?」
「え…ぬいぐるみって……」
ハートは僕の指差した方を見た。
僕が指すそこには3匹のかわいいパンダが浮いていた。
大体30センチくらいの大きさで、かわいらしい装飾品を着飾っている。
ここに入ってきてからずっと気になっていた。ウヨウヨしてて気が散るし偶に殴ってくるし。ぶっ壊してやろうかと思ったけどそういうわけにもいかないし。
「もしかして、あなたこの子が見えるんですか?」
ルミナが驚いた表情で聞いてきた。
「え、うん。見えるけど……もしかして見えちゃいけない奴?」
そう言うとシャインスターたちはお互い顔を見合わせた。
「そんなことはないですが、この子はある種の才能がある人にしか見えない星の精霊なんです。だから見える人はかなり珍しくて」
「ある種って?」
「主には戦闘の才能ですね」
「へぇ。道理で学校で誰も突っ込んでないなと。みんなスルースキル高かったってわけじゃないんだね」
僕は何も反応しなかった。戦闘の才能に関してはたしかにあるだろうが、そこは詮索されるわけにはいかない。
僕が言うとハートは笑った。
「流石にそれはないよ。多分学校でスタリンが見える人は君だけだと思うから」
「珍しいですよねこれが見える人って。多分光のスカイピアじゃあ100人もいないはずですよ」
ルミナは感心した声で言った。
100人もって言われると結構いる気がするのは気のせいだろうか。
「見える人が学校にいたら既に私たちが魔法少女だってことはバレてるでしょうね」
っとそこでコメットも会話に介入する。
「そっか」
まあ何はともあれだ。
僕はてっきり霊感がある人は見える的なアレだと思っていたけど意外と見える人はいないんだな。
そりゃそうか。魔法少女の近くに一匹はいるゆるキャラ枠って普通一般人には見えないもんな。そういうものだ。
「でもそれがいるおかげでみんなは魔法少女になれるんだよね。愛の力とかじゃなくて」
「そうよ。あれはテレビ関係者にスタリンが見える人がいないから彼らが勝手に愛の力とか夜空の力とかそんなあやふやな理由をつけてるだけ。本当はスタリンに溜め込んだ力を吸収して変身しているの」
コメットはそう言いながら机に置かれた魔法少女についての本を僕に見せた。僕がこの前図書館で借りた本だ。
ふむ。それで世の中に変な情報が出回っているのか。たまによくわからなくなるんだよね、どうやって変身してるのか。
ダークエクリプスにもスタリンの存在とかあんまり重要視する人がいなかったし。僕もそれが当たり前だったからあんまり気にしていなかった。
けどそういうことなら納得だ。
僕はその後も彼女達に話を聞くことにした。
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