15話 ヘイト買いのシリウスくん!
さて何はともあれ『僕はいいからシリウスを倒してくれ』作戦はこれにて閉幕。
僕のセリフはここで終わりだ。
打ち合わせ通りに行けばここからはシリウスの出番になる。今は魔王城で話し合った作戦通りに行っているがこの先どうなるか分からないし、うまくやって欲しいものだ。
シリウスは僕に向かって僅かに頷いた。その目には『ようやく俺の出番だな』と心の中で言っている気がした。
「ふっ、馬鹿らしい。しょうもない人生だ。たかがそんなことで人生に悔いがないとは、馬鹿も休み休み言え。そんなだから友の一人もできないんだ」
シリウスは僕に見下し唾を吐いた。
ペチッ、と。
僕の髪に唾がついた。
ここはアドリブだ。予定にない精神的攻撃である。
「そんな人生、私なら自殺しているぞ。しょうもなさすぎてな」
彼はトドメにそう締め括った。その声はとても楽しそうで、ウキウキだ。
僕は心の中でニヤついた。
素晴らしい。
あぁ、最高だシリウス。いい、凄くいい。もっと罵倒しろ。もっと尊厳を踏みにじれ。お前にはその権利がある。
いい唾だ。
「シリウス!!!!!」
しかし、そんな僕とは裏腹にハートは激怒した。その瞳はシリウスを睨んでいた。
「あなたにはその子の言葉が伝わらなかったのですか!?」
滾る星エネルギー。それはたとえ幹部のシリウスでも無視はできないほどだった。
返答を間違えればやられるかもしれない。彼女らにはそう思わせる気迫がある。
「言葉の意味? なんだそれは。意味がわからん」
シリウスは特に興味なさげに目を細めた。
「わからないなら教えてあげる。彼は、私たちが心置きなく戦えるように気遣ってくれたの! 本当は未練があるはずなのに、ないって嘘をついて。……あれはなんの力もない彼が私たちを想って言ってくれた決意なんだよ!」
それっぽことを言うシャインスター。
よくわかっているようで感心だ。
こう…僕が演じた人物像をうまく捉えてくれているのを見るとなんだか嬉しくなるな。僕も頑張った甲斐があるというものだ。
「そんなものに興味はない。所詮は下等生物の言葉だ。胸に響くこと自体がどうかしてる」
だが、なおもシリウスは毅然とした態度を崩さない。
その言葉を聞いたシャインスターはより一層、星エネルギーを滾らせた。
それは今まで僕が見た中で最も輝かしく、最も暖かい光だった。
魔法少女がこんなに怒っているのを見るのは初めてだ。
流石、憤怒のシリウス。人を怒らせる方法をよく知っている。
いや、今回の場合『ヘイト買いのシリウス』って感じだ。まあそれはどうでもいいけど。
おかげで彼女は僕の言葉を完全に信じきっていた。
「もういいわ。あなたは絶対に私たちが倒す!」
彼女らはそういってシリウスを睨んだ。
倒すというより殺す勢いだ。
そのエネルギーに巻き込まれれば僕は死ぬだろう。そこはぜひ気を付けてほしい。
「ふん、そうか」
シリウスはそこで僕を見た。
「その様子じゃ、こいつのことはもうどうでもいいってことだな、了解した」
そしてニヤリと笑うと、僕は服をガシッと掴まれた。
ん?え?なに?
「な、何を!?」
シリウスさん?
「利用価値のない人間はただのゴミだ! そんな奴は灰にした方がいい! その方がエコだろう!」
シリウスはそう言うと僕を空中に投げた。
まるで野球ボールのように僕は軽々と宙を舞った。
その様は某ドラゴン〇ールのワンシーンだ。
まさかこいつ僕を爆散させるつもりだろうか。
クリ◯ンみたいに。
あの地球人のように……!
僕は心の中でちょっと焦った。
「ま、まさか!!」
ルミナもそこでシリウスが何をしようとしているのか気づいたらしい。
「や、やめなさい!!」
シリウスに向かってそう叫んだ。
だが。
「救えるもんなら救ってみろ!」
シリウスはルミナの言葉を無視して爆撃弾を放つ。
当たれば即死のそれが僕に迫った。
え、えーっと。
これ当たると流石の僕でも死ぬんですが……。
というか作戦にはこんなこと書かれてなかったんですが。
あの打ち合わせはなんだったんですかシリウスさん!?
あ、やばい!
まじで死ぬ!!
誰かどうにかして下さい!!
まじで!!
「私がどうにかします!!」
その声に反応したのはハートだった。
彼女が僕に向かって手をかざすと、僕の周りに結界が貼られた。
その瞬間、爆発音が鳴り響く。
弾は結界に当たり、僕はどうにか死なずに済んだ。
「チッ。まったく、無駄なことを」
シリウスは僕が無事なのを見ると目を細める。
そして舌打ちをした。
「ふぅ…間一髪だった…」
ハートは地面に落ちる僕をお姫様抱っこで受け止めてくれた。柔らかな何かが僕に当たる。
そういうのには興味がないので具体的には言わないが、これもシャインスターの魅力の一つなのかもしれない。
「ハート! 彼は!?」
「無事だよ! 大丈夫!」
「よ、よかった」
ルミナは僕が無事だと分かるとホッと胸を撫で下ろした。
彼女からしても目の前で一般市民が死ぬのは見たくないだろう。
僕も流石に死にたくはないし、助かってよかった。
「では私は彼を病院へ連れていきます! その間アイツをお願いします!」
「はい! 任されました!」
「それまでに終わらせておくわ!」
後ろから二人の声が聞こえてきた。
何はともあれ、これで作戦は一区切りだ。
僕はハートに咲き抱えられたまま病院へと連れていかれた。
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