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13話 僕は善人だぁあああああああ!!!


 善人とは何か。それはどんな人物なのか。それを考え始めたのは、つい2日前のことだった。


 善人とは何か。


 いい奴とは何か。


 考えてみるとそれは簡単な問いではなかった。善人ってなんだ。いい奴ってなんだ。どうやればなれるんだ。僕は善人なのか。僕はいい奴なのか。


 ずっとそれを考えていた。


 どうして急にそんなことを考えたのか。


 当然そんな疑問は浮かんでくるだろうが、その理由は至極単純だ。


 今回の作戦で彼女らに同情心と罪悪感を与えられるためには、人質である僕が善人でなければならないのだ。


 例えばもし僕が史上最悪の通り魔だったとする。そして「こいつを殺す」と言われたとする。

 

 そんな時あなたはどう思うだろうか。


 助けたいと思うだろうか。


 勝手にしろと思うだろうか。


 僕は後者だ。


 別に通り魔なんてクソ野郎はこの世から消えたって誰も悲しまない。寧ろ死ねば世界はちょっとクリーンになる。悪人なんていないに越したことはない。


 家族だからとか友達だからとかそういうのは関係ない。悪人かどうか。大事なのはそれだけだ。


 まあそれでもシャインスターなら全力で死を阻止しようとするだろうし、できなかったらできなかったで凄く悲しむんだけどさ。


 そこが彼女らの凄いところだ。そういうゴミのために涙を流せる人なのだ。


 じゃあ例えば逆に僕がものすごくいい人だったら。あなたはどう思うだろうか。


 もう…『こんな聖人この世界にいるんですか!?』ってレベルの人。そんな人が人質に取られたらあなたはどう思うだろうか。


 僕は……まあ、正直なところそいつが知らない人なら死んだところで別にって感じだが、目の前で善人だと分かっている人が殺されたら、後で「あの時はこうするべきだったのかな」ってちょっとした反省会をするくらいには後悔が残ると思う。だってそれが善人という存在だし、善人という在り方だから。


 とは言っても、数日後にはその人のことなんてどうでもよくなっているんだけどね。でも逆に言えばこの僕が数日は頭の片隅に残っているということだ。これは自分で言うのもなんだが凄いことだと思う。


 普通はありえない。僕は生粋の善人ではないのだから。


 じゃあ例えばそれが僕ではなくシャインスターなら?


 一体どうなるだろうか。


 多分、泣くどころじゃないと思う。


 一生後悔するほど彼女らは悲しむだろう、と推測ながら僕は思っている。


 それを考えた時、僕は興奮した。


 あのシャインスターがトラウマを抱えて生きていく。うん、なんだろう。この形容し難い感情は。きっとおもしろい。きっとそんなことになれば僕は心の底から笑うだろう。


 分かってる。僕もおかしいんだ。分かってるさ。けど、僕は思うのだ。


 シャインスターのあの輝かしい存在は、決して周囲から敬われたり羨望されたりという感情だけでなく、悪意や憎しみに支えられて存在してるんじゃないかって。


 彼女らも知らないことは沢山あるはずだ。あんなに笑顔で活動しているってことは裏で行われているであろう社会の闇を知らずに生きているはずなのだ。


 だったら。


 だったらその清潔を、純白を、僕は少しだけ貶してみたい。


 そして、そんな中でも成長していく彼女らと、何食わぬ顔して隣を歩んでみたい。


 これは僕がずっと昔から密かに思っていることだった。


 あれもこれも僕が面白そうだからって理由だ。それ以外の理由はない。面白そう。楽しそう。ワクワクする。興奮する。そんな感情の赴くままに僕は行動する。


 だから僕はこの二日間、とにかく鍛錬をした。


 滝に打たれたのはもちろん、道徳の教科書を読み漁ったり、光のスカイピアで人気だというイケメン騎士を一日中ストーカーしたり、山の仙人と呼ばれるおじさんに話を聞いたり、石に頭をぶつけて邪念を吹き飛ばしたり。


 考えられる作戦は全てやった。


 そして僕は進化した。完璧で、善人で、それでいて超人という、まさに最強に。


 その過程で星のエネルギーが使えるようになったらなぁなんてクソッタレな邪念はもうない。僕はそんな邪念なく、最強の男へと至ったのだ。


 そう。僕はーー。


 僕は、もう。


 ーー善人なのだ!!!!!!!



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