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12/21

11話 殺すんじゃねえよ


 というわけで翌日。


 僕は学校帰り、アルデバランに会うために闇のスカイピアの王城を訪れ昨日のことを伝えた。


 主に屋敷への襲撃についてだ。


「そうか。作戦は順調なようだな」


 話を聞いたアルデバランはそう言って僕を見下ろした。


 作戦は順調。今の所、特にこれと言った問題は起きていない。


「既にあれから一ヶ月。作戦は失敗に終わるかと踏んでいたが、どうにかなりそうだな」


「まだこれからどうなるかは分からないけどね。シャインスターとの関係性は一ヶ月前とまったく変わってないし」


「なに、焦ることはない。時間はいくらでもあるからな」


「そんなことないよ。うかうかしてたら僕もシャインスターも寿命んじゃう」


「それもそうか」


 フハハ、とアルデバランは笑った。笑ってはいるがあまり楽しそうには見えない。寧ろ少し疲れた表情をしているように見える。


「して、ゼノン。お前はシリウスから作戦の段取りを聞いたか?」


「いや、まだだけど」


「なら聞いてくるといい。今回の件はどうやらやつが指揮をとるとのことだ」


 どこか遠くを見ながら彼は言った。


 そうか、もう作戦ができてるのか。思ったより仕事が早いな。


 僕はそう思いながらもふと気になったことを聞いた。


「アルデバランは作戦についてもう聞いたの?」


「ああ、その上で作戦の許可を出すのは私ではなくお前に任せると言っておいた。今回の功労者はお前だからな」


 どこか険しい顔をするアルデバラン。


 シリウスの作戦を聞いて何か思うことがあるのかもしれない。


 にしても今回の作戦はシリウスが指揮をするのか。嫌な予感しかしないな。


「分かった。じゃあ話はシリウスから聞くよ。…そういえば、ソラリスは今回の件について何か言ってた?」


「言っていた」


「なんて?」


「万が一のことがあれば私がシリウスを殺すと」


「そっか」


 やはりシリウスとソラリスで何かあったのは間違いないようだ。アルデバランが滅入っている理由はそれだろう。


 僕は少しの間アルデバランの愚痴を聞いた後、謁見の間を離れた。


 あと、最後に「ブッタのやつ普通に生きてたよ」っと言うと彼は「そうか」とだけ呟いていた。


 僕にはわかる。言葉にはしていなかったがあれはちょっと喜んでいる顔だ。気力が少し回復したんじゃなかろうか。ブッタはアレでいて意外と従順だからな。


 さて、あとはシリウスに作戦の概要を聞いて許可するだけだ。


 僕は近くにいたダークエクスプレスの従業員から情報を集め、シリウスがいる執務室を訪れた。



 ◇◆◇◆◇



 数分歩いたところで執務室に着いた。執務室は謁見の間からそう遠くない位置にある。


 僕はドアノブに手をかけて中に入った。


「……」


 っと、いきなり入ったらブチ切られそうなので念のためノックをしてから入ることにした。


「誰だ?」


 扉の奥からシリウスの声が聞こえてきた。


「ゼノンだけど」


 僕はシリウスに向けてそう答える。


「帰れ」


 冷たい声が聞こえてきた。


「なんで?」


「死ね」


「なんで?」


「邪魔だ」


「アルデバランからの」


「なに?」


「提案で」


「あ?」


「来たけど君がそういうなら帰ろうかな!!」


「………入れ」


「どうもー」


 許可が出たので中に入った。シリウスはアルデバランを崇拝しているからこうすれば簡単に聞いてくれる。


 まさに魔法の言葉だ。ありがとうアルデバラン。


 中は書斎かと思うほど本や書類が山積みになっていた。


 相変わらず凄い量だ。これが全部仕事に使うというのだから笑えない。


「っで、一体何の用で来た?」


「作戦についてだよ。この前送ったやつ」


「あれか。随分と遅かったな」


 シリウスは吐き捨てるように言いながら机に置かれたコーヒーメーカーを作動させた。相変わらず僕に対してのよく思ってないのが分かる。


 彼は出来上がったコーヒーを机に置いた。


「コーヒーだ」


 意外だ。いつもは何もしてくれないのに今日はコーヒーを飲ませてくれるらしい。


 ありがたくいただくことにした。


「どうも」


 そうして手を伸ばしす僕に対し、彼はそのコーヒーを先に取って自分で飲み始めた。


「誰がお前にコーヒーなんぞ入れてやるか。身の程を弁えろ」


 最後に「バカが」と付け加えた。


「……」


 その瞬間、僕の天才的な脳が悠久の時を覚えた。


 僕は深呼吸をした。


 大きく息を吸って、吐く。


 また吸って、吐く。


 その後胸を押さえて心を沈めた。


 落ち着け。大丈夫。大丈夫だ。僕は冷静だ。うん、冷静だ。


 こいつはいつも通りだ。なに、怒るほどのことじゃない。


 あれだ、こいつを頭の中でフルボッコにして……けちょんけちょんにしてミンチにして……よし、殺した。


 粉々に消し飛ばした。満足だ。


「それで、作戦について聞きたいって話だったな。一体何が知りたいんだ?」


 シリウスが早速本題に入る。机からいくつかの紙を出した。


「僕が送った作戦の概要だよ。段取りはシリウスが考えたって言ってたからね」


「あれか」


 彼は納得した様子で立ち上がり、近くのソファに腰掛けた。


 そして机に何枚かプリントを置いた。


 中身はまだ見ていないが今回の作戦についてのものだろう。


 僕も彼と反対側の椅子に座る。


「さて」


 っとシリウスはコーヒーをふと口飲むと話を切り出した。


「最初に言っておくが、私は作戦を変更するつもりはない。例え貴様が許可を出さなくても強行突破するつもりだ」


 開口一番そんなことを言ってくるシリウス。初っ端から悪意全開だ。僕の話など聞く気はないらしい。


「それなら、僕がここに来た意味ないと思うんだけど」


「いいや。たとえ貴様がどれだけ強かろうと今回は力が使えないからな。いくらお前でも何かあったときに対応はできんだろう」


「それもそうか」


 話を聞いて納得した。


 僕の作戦『ダークエクスプレスに襲われ、巻き添いをくらった僕!しかもそれはシャインスターが不甲斐ないせいだった!?』は僕が大怪我を負うことでシャインスターにそれを同情されるのが目的だ。


 つまり闇エネルギーを感知することができるスタリンがいる以上僕はエネルギーなしの状態でボコボコにされなければならない。


 そんな時、何かの手違いで僕が死ぬようなことがあれば大変だ。作戦を知っていればそうなる確率は確実に下がる。


「この作戦を見た時は驚いた。まさか貴様が自分を犠牲にする作戦を立てるとはな」


「そのくらいしか方法がなかったからね。無理に近づくと仲良くなるばかりか嫌われそうだったし」


 無理やりシャインスターに話しかけるモブの僕。どう見ても仲良くなれる気がしない。


 それを聞いた彼は小馬鹿にするように笑った。


「そうか。まあ過程などどうでもいい。大事なのは普段ふざけた態度を取り続ける強いだけが取り柄のクソみたいなゴミクズ野郎の貴様を完膚なきまでに嬲り殺しにできる日が来たということだ」


「殺すんじゃねぇ。死なない程度に抑えるんだよ」


「どちらも変わらん」


「違うわ!」


 上機嫌なシリウスにツッコミを入れる僕。


 ノクターナにも言ったことが、やはりこの作戦、シリウスならすぐに乗ると思っていた。


 なんせ彼は僕の事が大嫌いだからな。


 シリウスはフン、と鼻を鳴らした。


「いつも魔王様を名前で呼び、敬語も使わない。シャインスターにトドメもさせず、悪人を殺すようなゴミ。それが貴様だ。そんな奴が好きな奴などここにはいない」


 この様子である。


 うーむ。ソラリスが万が一のことがあったら殺すと言っていたのも納得だ。


 まったく…勘弁してほしいね。


「それで作戦はどういう段取りなの?」


「この紙に書いてある通りだ」


 シリウスはそうして、作戦についての流れについて説明してくれた。


 作戦はかなり精密だった。腐っても策士のシリウスが作っただけはあった。


 僕がボコボコにされる部分は妙に具体性のあるものだったがそれはこの作戦を思いついた時から承知の上だ。我慢するしかない。


「うん、許可は出しとくよ」


 話を聞いた僕はプリントをトントン、と机に身揃えつつ許可を出した。


「勝手にしろ。どうせ変わらん」


 返ってきたのは予想通りの言葉だった。


 元々強行突破するとは言っていたものの、細かな説明をしてくれたところを見るとアルデバランの命令は遂行するつもりだったのだろう。


 僕にとってはそれだけで十分だ。


「じゃあ明後日は手筈通りということで」


「貴様を殺せる日を楽しみにしている」


「殺しはなしだよ」


 そんな会話をして僕は彼との対談を終えた。



 ◇◆◇◆◇

 


 それから二日後。


 作戦実行の合図が来る少し前。


 僕は教室でその時が来るのを今か今かと待った。


 そろそろお昼休憩に入る時間にいくつかの生徒がお腹を鳴らしていると、隣のクラスから声が聞こえてきた。


「ち、ちょっと!? ハートさん!? 今授業中ですよ!? ルミナさんもです! コ、コメットさんも!?」


 僕は声のする方を見てみた。


 すると三人の少女が学校の窓から飛び出していく姿が見えた。


 まるでアニメのワンシーンのような光景だ。


 シャインスターである。


 僕はチラリと時計を見た。


 時間は11時35分ジャスト、ちょうど昼休憩前だった。


 作戦開始の時間だ。


「よし、行くか」


 授業が終わるまで5分ほど待つと、僕はすぐに彼女らの跡を追った。

 

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