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13.狼、再び現れる

 下着を買った際に、生活に必要なものは全て買い揃えたため、早速準備をはじめる。

 山で生息している薬草と次々ととっていき、再び、私は薬づくりに精をだした。


 アルマンドの山に生息している薬草は、私の知識内にあるものばかりが救いだった。

 売れるほどの薬を作るとなると、それなりに日数がかかった。

 枝を編み込んだ大きめ籠に、布を敷き詰めて、薬をいっぱい用意する。

 それを背負って、以前塗料をつけた方へと歩を進め山を下る。


 以前会った、馬獣人に同じように荷馬車に乗せてもらいサンダへ向かう。馬獣人には賃金とそれから、ひずめに塗る用の軟膏を渡し、帰りも頼めないかとお願いした。


 町の中に進めば、露店はちらほらとある。

 よく見れば、サンダの街も首都同様にスラムっぽい雰囲気が路地裏にはある。

 私はローブを深く被って、あまり雰囲気の良くない場所で、薬を売り始めた。


 ふむ。

「ここまでとは思わなかったな」


 あっという間に半分盗まれた。

 帰りの乗車代金が払えなくなるため、そのあとは街を練り歩き、人に声を掛けながら薬を売った。売り込むために「今日だけ」と言って、タダ同然の安い価格で売り込んだ。

 一日目は、手元に薬はないのに、ほぼ利益はゼロ。



 けれど、薬の効能にはかなりの自信があったので、二度目からはこちらから声をかけなくとも客の方から来てくれるようになった。



 薬がなくなれば、また一週間は山に籠る。そして薬が溜まったらサンダや周辺地域で売る。


 それを三度繰り返したある日のこと。




 暑い……。

 今日は一段と日中の気温と湿気が高い。

 日中、ローブのフードで頭からすっぽりと隠しているのだが、蒸し暑さにローブの中が汗だくだ。


 一度日陰に入って休憩するかと思ったら、こちらに向かって伸びてくる小さな手が見える。


「いらっしゃい」

「……」


 目の前に現れた小さな客は、金を持ってはいなさそうなのに、がっぽりと薬を胸に抱く。


「おい、わっぱ。薬には用法があってな。一日一包だ。そんなに要らないだろう? どうするつもりだ」


 私はそう声をかけておいて、その子の手にサービスの薬を置いてやる。案の定、彼は金を払わず一気にその場を駆けていった。

 その背を眺めていると、子供は路地に入り大人の男に渡していた。


 弱肉強食。

 そんな四文字を脳裏に浮かび上がらせていると、彼らは路地の奥へと入っていった。


 スラれることは日常茶飯事。

 子共相手の場合、私は放っておくのが常なので、すっかりカモにされてしまっているようだ。



「──いらっしゃ……」


 私の横に影が現れるので、そう声をかけた。だけど現れたのは客ではなく──茶色の毛をした狼だ。

 座っている私より大きい。


 先日山小屋に来た狼と同じだろうか。

 狼が街に現れるなど、騒ぎになってもいいようなもの。なのに、流石獣人の多い国だ。

 行き交う人に怯える様子はない。ただ、警戒心の強い狼が人里に現れるのは物珍しいようで、こちらをジロジロとみている。


「商売の邪魔だ」


 山で出会った狼ならば言葉が分かると思い、声をかけた。すると


『商売ですか? ──わざとスラせておいて、商売ではないでしょう』


 突然、頭の中に声が届いた。


 狼が言ったのか。


 これは、私の使い魔と同じだ。

 使い魔となれば、主人の言葉が理解出来、伝える能力を持つ。──では、この狼は誰かに仕えているのだろうか?


 狼は口を一切うごかさず、言葉を続ける。


『随分、お噂とは違いますね。圧倒的で排他的な力で人を恐怖に突き落とす。恐ろしい大悪女、エリザベス王女』


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