SS1-2. 夢見る枕は並行世界を見せる(ムツキとナジュミネ その2)
約2,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
この話に登場するキャラの簡単な紹介
ムツキ:男性、主人公、紫髪、黒い瞳、ビジネスカジュアル姿。
ナジュミネ:女性、ムツキのハーレムの1人、赤い髪、赤い瞳、今はピンク色のスウェットでちょっとラフな格好。
レブテメスプ:男性、人族の始祖の1人でトンデモ発明家、黄緑色の髪、灰色の瞳、少年博士のような白衣姿。
レブテメスプがどこからか何の変哲もなさそうな枕を取り出した。彼はその枕を軽くポフポフと音を立てるように叩いた後に、ナジュミネとムツキの方へと突き出すように見せた。
「さて、ここにあるのは不思議な枕!」
レブテメスプは少年らしい少し甲高い声を張り上げて、枕とムツキたちを交互に見て、自慢げな顔で話を始めた。
ムツキもナジュミネもレブテメスプのトンデモ発明品ということで枕を訝し気に見ていたが、突如始まったレブテメスプの語りに2人は思わず笑い声が漏れてしまう。
「急にショッピング的な何かが始まったぞ……」
「奥さん!」
ムツキは笑った後に、前の世界のテレビショッピングを思い出して、少しげんなりした様子を見せるが、レブテメスプは彼の表情を気にした様子もなく意気揚々にターゲットをナジュミネに絞り込んで対話を始めようとする。
「え? あ? 妾か?」
「そう、奥さん! もしハーレムなんか作っちゃった旦那さんを、もし独り占めできたらなあ、って思ったことはありませんか!?」
戸惑うナジュミネに対して、レブテメスプは枕と会話に集中させるように、手に持っている枕をぽふぽふ叩いて注目させながら、耳に残りやすい声色で話を続ける。
「え、あ、ああ、まあ、思ったことはある。それを否定したら嘘になる」
「そうでしょう! そうでしょう! 誰だって、好きな人を独り占めしたい!」
「ナジュが引き込まれている……」
律儀に答えてすっかりと枕を凝視しているナジュミネ、彼女の言葉に過剰に肯定的な反応をして味方だと思わせるレブテメスプ、その傍らで何もできないと思ってただ見ているムツキ、という不思議な不思議な状況ができあがっていた。
「そんな時にはこれ! その名も……パンパカ、パンッ! ゆぅ~めぇ~みぃ~るぅ~まぁ~くぅ~らぁ~」
レブテメスプの癖の強い発明品の名前紹介とどこか聞き覚えのある独特な効果音に、ムツキが思わずコケた。
「おいおい……言い方のクセが強いな……って、夢見る枕?」
「そう、夢見る枕! 現実では難しくても夢なら叶っちゃう!」
発明品の名前、夢見る枕にムツキが反応した。その食いつきに気を良くしたレブテメスプがムツキの方へ向き直り、楽しそうに自身の発明品の説明をしている。
「夢で叶えても虚しいのではないか?」
ナジュミネに身も蓋もない言葉に、レブテメスプが嫌そうな顔を隠さず、溜め息まで大きく吐き始めた。
「……はぁ。じゃあ、君はもういいや、せっかく最初に使わせてあげようと思ったのに。2回目はないかもね。まあ、リゥパちゃんやサラフェちゃんとかに売り込むから、もういいよ」
「え、ちょ、ちょっと待て。急にそんなこと言われても」
「いや、いいから。価値の分からない相手に売り込むほど、ボクは暇じゃないんだけど? やっぱりさ、ボクは作り手としてね、価値が分かる人に使ってもらって喜んでもらいたいんだよね、それ分かる? きっとあの2人なら分かるだろうしね」
「ま、待ってくれ! もう少し聞かせてくれないか?」
「あ、がっちり捕まった……」
一転して突き放すような言葉と別の女の子と比較するような言葉をレブテメスプが呟くと、ナジュミネは慌てて彼を引き留めるように積極的に話を聞く体勢に入った。
ムツキはこうやって物が売れていくのだとうんうんと肯きながら感心している。
「仕方ないなあ……これは、一種の転移装置で、寝ていて夢を見ている間に願ったことが叶っている並行世界に転移しているって代物さ☆ それはつまり……」
夢見る枕。レブテメスプが作った発明品の1つであり、寝ている間に身体から魂を一時的に引き剥がして、寝る前に望んだ世界がごく僅かな確率でも起こり得るもしくは起こり得たなら、その望んだ世界を夢として見せるものである。
「い、異世界に転移?」
「並行世界だけど、まあ、異世界でもあるね」
「ま、待て! 意識を違う世界に飛ばすのか?」
「異世界から魂がぶっ飛んできたムツキが怯えるなよ☆ ちゃんと元の世界に戻れるセーフティ付きさ☆」
レブテメスプが発明品に不備などないと言わんばかりに自信満々で答える。
「なるほどな。起こりえたかもしれない世界という意味で並行世界か。夢見心地で、もしもの世界が見られるということだな?」
「そうさ☆ ただし、何でもかんでもうまいこといくわけじゃないぜ?」
ナジュミネの冷静な理解力に、レブテメスプが称賛しつつも、少しばかり意地の悪そうな笑みを浮かべていた。
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