表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

『EP001:目標』Part.1/2

パチッ、パチッ――

燃え盛る炎の音が、崩壊した都市の中でこだまする。

かつて高くそびえ立っていたビル群は、今や玩具のように粉々に砕け、

立ち込める煙と砂塵が視界を完全に覆い隠していた。

焦げた空気を裂くように、

メイジの制服を着た三人の影が駆け込んでくる。

額から汗が流れ落ち、表情には緊張が張りつめていた。

「くそっ……!前の部隊、全滅だと!?」

短髪の青年が息を荒げながら叫ぶ。

彼の目の前には、十数体もの無残な死体が散乱していた。

ひとつとして同じ死に方はない。

焼け焦げた者、氷漬けになった者、

そして――身体を切り裂かれ、バラバラになった者。

「これ……ひとりの仕業じゃないわね」

女のメイジが唇を噛みしめる。

「まだ決めつけるな。冷静になれ」

先頭に立つ男が低く言い放つ。

黒髪に金の瞳――その眼光は、まるで獣のような圧を放っていた。

三人は瓦礫と焦げ跡をかき分け、さらに奥へと進む。

足を進めるたびに、異様な魔力の残滓が肌を刺した。

まるで百、いや千の戦いが同時に繰り広げられたかのような戦場。

炎、氷、石槍、水流――無数の属性が混ざり合っている。

「レンゾ……どう思う?」

女が振り向いた。

短髪の青年も立ち止まり、あたりを見回す。

三人は互いに頷き、慎重に散開した。

一歩一歩、緊張が高まり――

空気が、突然重くなる。

身体が地面に押しつけられるほどの圧。

「っ……なんだ、このプレッシャーは……!」

レンゾは思わず膝をついた。

滝のような汗が頬を伝い落ちる。

彼が顔を上げたとき、そこに“それ”がいた。

――炎の海の中、

黒い仮面をつけた影が、ゆらりと立っていた。

仮面に刻まれた文字が、不気味に歪んで光る。

まるで生きているかのように。

「レンゾ!! あのプレッシャー……やばい!」

「逃げろっ、二人とも!!」

レンゾが叫んだ瞬間、

仮面の男がこちらを見た。

その視線は――まるで狩人が獲物を見定めるような冷たさだった。

「こいつ……複数の魔法を使ってる!?」

足が震える。

けれど、仲間は逃げなかった。

「隊長を置いて逃げられるかよ……!」

「わたしたちは……一緒に戦う!」

燃え立つ決意に、レンゾの目が見開かれる。

「……バカ野郎ども……」

仮面の男が一歩、また一歩と近づく。

そして――

轟音が、世界を裂いた。

炎、雷、土、水、風。

五つの属性がぶつかり合い、

光と爆音が戦場を包み込んだ。

――しかし、戦いは一瞬で終わった。

仲間の悲鳴が、炎の中に消えていく。

血と煙の匂いが混ざり、世界が赤く染まった。

レンゾだけが、立っていた。

息は荒く、身体中が傷だらけだ。

「……クソッ!」

歪んだ腕で武器を構える。

仮面の男は、無言のまま。

手をひと振りすると、空間がねじれた。

背後に、黒い渦――吸い込まれるような闇が開く。

「逃げろ……っ!」

最後に聞こえたのは、

死んだ仲間たちの声だった。

そして、レンゾの姿は闇に消えた。

残ったのは――燃え続ける炎の音だけだった。

──────────────

昼下がりの風が木々を揺らす。

陽射しがまぶしく差し込む、穏やかな午後。

山と森に囲まれた都市――マディモンティス。

自然が豊かでありながら、技術も発展している。

巨大スクリーンや電車が街中を走り抜ける、大都市だ。

だがその日、郊外にある中学校から――

ドォンッ!と爆音が響いた。

校庭の中央には、チョークで描かれた巨大な魔法陣。

まるでサッカーグラウンドほどの広さだ。

一瞬、光が走り――爆発。

砂煙と焦げた臭いがあたりを包み込む。

観客の生徒たちは歓声を上げた。

「うおおおっ!」

中の様子が見えなくても、興奮は止まらない。

爆発の中から、黒髪の少年が弾き飛ばされた。

制服のボタンを外し、ヤンキーのような雰囲気。

その身体が防御バリアに叩きつけられる。

炎の海の中、静寂が訪れる。

熱気で息が苦しい。

――ピチ、ピチ、と火花の音だけが響く。

少年がゆっくりと目を開けた。

乾いた喉から咳が漏れる。

手には、半分溶けた杖の残骸。

「……チッ」

舌打ちし、壊れた杖を投げ捨てる。

代わりに、制服の内ポケットから杖を取り出す。

炎の中を、慎重に歩き出した。

「どこまで隠れるつもりだ、鬼島(おにしま)!」

返事はない。

空気は熱く、息をするたびに肺が焼けるようだ。

「出てこいよ、鬼島(おにしま)!無駄だっての!!」

だがその時、背後に気配――!

「ファイアボール!!」

炎の球が爆ぜた。

命中――と思った瞬間、それは人影ではなく、ただの制服だった。

「ガクラン……!?」

振り向いた瞬間、目の前に拳。

「っ!」

鈍い衝撃。

腹に一撃、体が吹き飛ぶ。

防御バリアに叩きつけられ――

ドンッ!!

「ぐっ……!」

反撃しようと詠唱する前に、

連続の拳。

四発、五発――壁に叩きつけられたまま、意識が遠のく。

「……勝った、な」

鬼島(おにしま)・アオが息を荒げながら呟いた。

全身が火傷と傷だらけ。

それでも、目だけはまだ死んでいなかった。

彼が立ち上がろうとしたその時――

ドンッ!!

巨体のオークが飛びかかり、アオを地面に押し倒す。

周囲の炎が消え、観客の姿が現れる。

そのすべての杖が、アオに向けられていた。

スラストがゆっくりと歩み寄る。

「よく頑張ったな、鬼島(おにしま)。――ファイアボール」

杖の先に炎が灯る。

アオの目が細められる。

「……ルールを破ってまで、まだやるのかよ」

「ルール?そんなのあったっけ?」

スラストが肩をすくめた。

「1対1だって言ったろうが!!」

ドンッ! さらに押し付けられる。

観客たちは――誰も止めない。

むしろ、声を上げて煽る。

「やっちまえスラスト!」

「燃やせ!」

鬼島(おにしま)なんかいらねぇ!」

スラストは笑った。

「お前が消えれば、俺がこの学校のトップだ」

アオの唇が震える。

「……テメェ……」

炎が膨れ上がる。

空気が焦げる。

その瞬間――

「そこまでえええええ!!!」

鋭い女の声が、校庭全体を切り裂いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ