金脈の呪い 消息不明の子息
『もう、数十年前になります。私は隣国の屋敷からこのフリードリヒ家に嫁ぎました。20歳の時です。夫であるジョーゼフと私は政略結婚でしたが彼はそんな事とは関係なく、私を大事にしてくれ愛情も注いでくれてました。しかし、』
ジュリアスはそこで言葉を詰まらせ、立ち上がり
暖炉前のソファーに腰を掛け顔を覆ってしまった。
私がどうしたら良いか困惑していると
そんな主に同意を得た執事が先を続けた。
『ジョーゼフ様との間にご子息とご令嬢を授かり、皆様はとても幸せに過ごされてました。私も使える側として幸せを分けていただいておりました。
そんなある日、ある報せが届きました。前々から旦那様は金の鉱山の仕事に携わっており、目を付けていた鉱山から金が出たと。』
金?それと婦人の哀しみがどう繋がるのだろうか?
疑問が沸き上がるフランをよそに話が続く。
『旦那様はご子息様を連れて、金鉱山に向かい数ヵ月後に数点の金を持ち帰られました。[これでフリードリヒは暫くは安泰する]と旦那様もご機嫌で話し奥様もお子様達も喜ばれておりました。
ですが、その数ヵ月後に旦那様が亡くなられました。』
『亡くなられた?そんな、何故ですか?』
思わず大きめに声が出てしまったが、そんな事を気にしないように執事がジュリアスに涙を拭うようにハンカチを差し出している。
ジュリアスも落ち着いたのか、執事ルーベルから話を引き継ぎ話し出した。
『ジョーゼフは原因不明の病にかかりました。熱も引かず食べても、食べても痩せていってしまい、私が一生懸命看病をしあちこちの医師にも見せましたが回復の見込みはなく、僅か一月後に息を引き取りました。私が沈んでると息子のロベルトが[父さんが亡くなったのは金脈のせいだ]と言い出しました。何故息子がそんなことを言い出したか問いただすと。夫はどうやら持ち帰ってはならない金を持ち帰り、呪いを受けたんだと。』
フランは息をのみ首を降る
『そんな、亡くなったのは呪いだなんて。』
そんな彼に構わずジュリアスもそうだろうと目線を合わせてきた、が。
『確かにフラン様もそう思われますよね?私も未だに信じられませんでした。しかし、息子は私の否定を無視し夫が持ち帰った金を持って、再び鉱山に向かいました。そして5年経ちますが帰ってきてません。』
『ご子息から手紙は?報せはなかったのですか?』
フランが訊ねるが彼女は首を降る。
『娘も二十歳を過ぎ別の公爵家に嫁ぎました。父と兄を失い、塞ぎ混んでましたが公爵が娘の身の上を案じ、我が屋敷からそんなに離れていない場所に新たに屋敷を建て移住してきてくれたのが、唯一の救いですね。』
しかし、娘も公爵家の公務に勤しんでるため
なかなかこちらには来れていないらしい。
ジュリアスがここまで塞ぎ混む気持ちがわかるような気がした。
『私も悲しんでいられませんでしたからね。夫と息子の分も含め、生きていかないととフリードリヒ家を継ぎました。いつか息子が帰ってくることを信じて。』
そこには妻であり母である強さを備えたジュリアス・フリードリヒの顔があった。
『さあ、夜もすっかり更けてしまいましたね?今日はもうお開きにしましょう。では、フラン様また明日の朝食に。』
そう言うと彼女は少しだけ微笑むと足早に暖炉の間から去ってしまった。
私も暫くはボーッとしていたが、眠くなったので寝室に案内してもらい、ふかふかのベッドに潜り込むや否や、ぐっすりと眠りについたのだ。