女主人 至れり尽くせり
フランは息を飲む
主=男性と頭の中での方程式が覆され
今まで出会った女性の中で一番美しさと気品さを兼ね備えている人物だと彼は瞬時に見抜いた。
腐っても商人。
人を見抜く力は備わっている。
『フラン様、初めまして。ジュリアス・フリードリヒと申します。呼ぶ時は是非ジュリアスと。』
恭しく頭を下げ、丁寧に頭を下げる彼女の所作と声の綺麗さと美しさに、危うく挨拶を忘れかけたが
『あ、突然の訪問をお許しいただきありがとうございます。私は各国にて商人として旅をしております。フラン・マホトニーと申します。今回は助けて頂きありがとうございました。』
彼がしっかりと頭を下げると
ジュリアスは綺麗な笑顔を見せ、彼に座るように促す。
『そこまで丁寧にご挨拶はしなくてもよろしくてよ?森は深く道が要り組んでいるから、迷う方は結構おりますのよ。』
彼女も暖炉を背にテーブルについた。
ルーベルが彼女に耳打ちし、ジュリアスが頷くと
彼はメイド達に命ずる。
すると次々と料理が運ばれてきた。
とても森深くの中の屋敷とは思えない豪華な料理。
美味しそうな匂いに商人の腹が素直に鳴った。
『どうぞ。お好きなものから召し上がって?色々とお仕事の事や訪問した町や国の話をお聞きしたいわ。』
見た目に反して明るく話しかけてくれるジュリアスに、フランはすっかり打ち解け
色々と会話と料理を楽しみ夜は更けていった。
しかし、初めて訪問した私に何故こんなにも
至れり尽くせりをしてくれるのか?
気になった彼はジュリアスに素直に疑問をぶつけると。
一瞬、瞳が揺れ
彼女は少し哀しげな表情になった。
[聞いてはいけなかったか?]
彼が質問を下げようかと迷っていると。
ルーベルが主を心配そうに見ているのがわかった。
そんな執事に主はそっと頷くと
背筋を伸ばし、話す体制を作り出し
少しずつだが質問に答えだしてくれたのだ。