紅に染まる家(二)
見合いをした。
白地に赤、金糸銀糸の刺繍や吉祥模様の染めの振袖に包まれ唇には紅をさし、お人形のように席に座す。親は相手方の親と談笑していた。
(お友達だものね)
正直言って、世津子にとっては、これほど気の進まない会食はなかった。写真も見、釣書も目を通したが、これといって特徴もなく、社交場で見慣れた同年代の青年と同じようなものだった。
(留学をすると言っていたわね)
それなら式を挙げるのはしばらく後になるのだろうか。
「おしとやかに育ったねえ、世津子ちゃんは」
「とんでもない、まだまだ至りませんわ」
母のよそいきの声が耳をこする。父親代わりとして来てくれた叔父は、柔和な笑みをたたえたままだ。
(お母さまは)
いや。母は母で、彼女なりに接してくれている。少し勝ち気なだけで。
そう、悪い人ではない――と思った自分に気づいて世津子はそっと目を伏せた。
「世津子さん」
声に、現実に引き戻された。
正面にいる相手にゆるやかに顔を向ける。
聞こえてくる言葉は天気から始まって、振袖をほめ、簪を褒め、自分の将来についてひとしきり語り、最後に「君は僕を陰から支えてくれるいい奥さんになってほしい」と締めくくられた。
「そういった方がお望みですの」
「そうあれかしと教わっていませんか。学校でも」
「違うと思いましたらそのくらいははっきり申し上げておりますわ」
一度目をやや伏せ気味にしてから再びまっすぐ視線をとらえ、微笑む。相手は意表を突かれたようで、世津子からは目を逸らして茶椀を手に取りごくりと飲んだ。
少し癖のある髪は後ろが長め。銀縁の細い眼鏡が一瞬光を反射した。
――なぜこの人なのだろう。
そんなことを世津子は思った。
「世津子さま、お茶を」
三島京子の声がした。
顔を上げると、部屋の瀟洒なテーブルに、茶器を乗せた銀色の盆を護衛が置いたところであった。
「あなたがそんなことをせずとも良いのですよ。必要なら小間使いに」
「その小間使いの方が、うっかりすると、お嬢様はご自分でなさってしまうと申されてましたので。私ごときの淹れ方ではお口に合うかわかりませんが」
「そういったことに気を遣う必要はありません。契約には入っていないのでしょう」
そう、お茶くらい自分で淹れる。湯を用意し、茶葉を――
『はい、蓋をして。砂時計を返すんですよ』
これまで飲んだ中で一番美味しいお茶だと言ったら、「誰でもできる」と返されたあの日。穏やかにほほえみながら、淹れ方を丁寧に教えてくれた時間。一人暮らしだから、と言ってはいたが、下宿にいたのだ、何もかも本当に一人でしていたわけではないだろう。
お茶を淹れるのは自身で、というのが他ではそれほど特別なことではないのだ。そう知ったのは、今の学校に行ってからだった。
それでも、護衛の淹れてくれた紅茶には口をつけた。味はともかく、思いを受け取るために。
彼女は黙って立っていた。
「おいしい。ありがとう」
「恐縮に存じます」
あからさまにほっとして、三島は頭を下げた。
カップを皿に置く。
「ねえ、お願いがあるのだけど」
三島が怪訝そうな目になる。
「……どうぞ、何なりとお申し付けを」
「そう言ってくれてうれしいわ。ではね、これからもお茶を淹れてくれるのなら、あなたの分も淹れて頂戴な。そして、二人でお茶を飲むの。それなら喜んで淹れてもらいます」
「世津子さま?」
いったい何をという顔に微笑む。
「一人では寂しいの。わたくし、このところ学校にも行っていないのだもの、一緒にお茶を飲むお友達がほしいのよ。それに、あなたがそこに一人で立っているよりは座ってくださったほうがいいわ」
それには困惑を混ぜた笑みで返された。
「私は護衛です。座ってしまったら仕事になりません」
「この家の中、それもわたくしの部屋でも?」
安全ではないのかと匂わせつつ言うと、護衛はさらに困った顔になって目をそらし、考え込んだ。
「わかりました、上司に相談してまいります」
お願いね、と微笑みかけると相手はかしこまって頭を下げた。
「そうだ、一つ聞きたいのだけれど」
「何でございましょう」
「わたくし、週末に人と会うの。お祖父さまから聞いているかしら」
「はい」
「あなたは来てくださるの?」
「もちろんお供いたします」
「そう、よろしくお願いしますね」
あまりよくないことが起きるかもしれない。そんな予感が世津子にはあった。
「二人きりではないの?」
劇場で待ち合わせをした相手は、はっきりと落胆の色を見せた。
「あのこと、ご存じではありませんの?ご両親さまにお聞きでは?」
それとなく祖父に対する脅迫状のことを匂わせる。すると顔をしかめながらも彼はふいと横を向き、桟敷に行こうと世津子に言った。
そのまま出し物の最後まで劇場で過ごし、食事をし、当たり障りのない会話をする。観た劇のこと、それに近況。料理の材料と、それにお酒の知識を披露されて、儀礼的な笑顔を浮かべていると、それを察したのかやや機嫌が悪くなった。
(わかるほどに表情に出してしまったのかしら)
自分はどうにもこの手の愛想笑いが苦手だ。
その自覚はあったものの、だからといって責められるほどではないくらいには――要求される時の、そつなくこなす程度にはやってのけているはずだと思う。
それでも相手の要求を満たす態度ではないことが時折、ないわけではないというのも事実である。
『わたし、何か悪いことを言ってしまったの?』
祖父にも父にも問いかけたことがあるが、対する答えは『お前は何も悪くない、気にしないでいいのだよ』だった。
『放っておいていいのだ、世津子。お前はちゃんとすべきことをしていたから安心していい。ただ、すべての人に好かれるなどありえないということは覚えておきなさい、わかったね』
そう言ったのは父だ。
着物の袖口を汚さないように気を使いながら、果物を口に運ぶ。色無地の着物は気に入りの物で、今はそれだけが気持ちを保つよりどころだった。
「世津子」
「……はい」
呼び捨てか。
まだそれほどの交際はしていないと思っていたので、思わずぴくりと眉を上げてしまった。
後ろには、護衛が控えている。
機嫌が悪そうだ、と思う。
黙っている時でもそれほど愛想のない人間ではない。世津子は。
(なのに)
鮮やかな色合いをまといながら、表情はそれに見合っていなかった。
北向きとはいえ、店は昼間ならば広く取られた硝子窓のおかげで明るい。その中をよくしつけられた店員が行き交うのだが、今は夜だ。良家の令嬢としては意に染まぬ相手だろうがにこやかに応対しなければならないこともあるだろうに、今日の彼女はそれを忘れたかのように儀礼の域を出ないとわかる顔をみせていた。
(いいのか)
いや、とうつむく。
わかったところで介入できるはずがない。
食事処を出た。車を呼び、さて別れの挨拶をするところだと思ったが、相手はまだそのつもりはなかったらしい。
「近くになじみの店があるんだ。そこに行こう」
「どういう……?」
小首をかしげた形になった。
それを見、男は口を歪め、目じりを下げた。
(お酒でも飲もうというのかしら)
あとどのくらい付き合えばいいのだろう。
――婚約か。
この人と。
いずれ同じ屋根の下に。
想像する。起きること、その先にあるであろう営みを。
生まれた家が家だ。それは甘受しよう。
祖父の、そしてさかのぼること幾代か、その血筋と家柄により受けた恩恵は計り知れない。
(良いことばかりではないのだけれど)
それでも飢えることはないのだ。着の身着のままで放り出されることも。
そんな世界があるのだと知ってからは、なるべく不平不満を表に出さないようにと心がけてきた。どれほど苦しかろうと。
上質の絹、きれいに設えられた調度、丁寧に作られた食事。己の手で作り上げたものではないそれを、見ることさえできない人々が、それこそ自分の知ることができないほどの数存在する。
恵まれていることは知っている。
けれど、苦しい。
(加賀さん)
――会いたい。
会ってあのはにかむような笑顔を見たい。
目の前にいるのは、なぜあの人ではないのだろう。。
その日は洋酒の甘いカクテルを二杯馳走になり、その後別れた。
その後また、食事や音楽会へ伴われ、行く先々で知り合いに紹介された。
(うまく笑えたかしら)
毎回、帰った後に考えることはそんなことだ。
自分の手で衣装の手入れをし終わって、疲れた、と肩を落とす。
芝居がはねた後のことが脳裏をよぎった。
『あら』
おそらく自分よりは年上の、相手と同年くらいと思われる洋装の女性が世津子の全身に視線を巡らせた挙句、何やら笑ったのには何とも言い難い気分だった。
名前、年齢、学校を訊いた後に小首をかしげてもう一度赤い唇の端を上げ――
『わたくし、この方と大学で同じ講義を取っていましたの。よろしくね』
それだけかと思ったが、胸にしまった。
(先が思いやられるわね)
夢など見ていない。見合いの席で、すでに予感じみたものはあった。礼儀作法など期待しても無駄なのだろうか。
つ、とほほを何かが伝った。
(わたしは)
(わたしは、まだ)
立場を、現実を受け入れたつもりだったのに。
こんなに苦しい。こんな――
堰を切ったように涙があふれた。
――こんなところで。
「どうしたんですか」
「え?」
顔を上げると、加賀が立っていた。
「ぼうっとしているようだったから。珍しいと思ったもので」
中庭の長椅子に座っていた世津子を見下ろしていた彼は、空を見上げ、また視線を戻した。
「じきに雨が降りますよ。建物に入ったほうがいい」
柔らかく微笑むと、加賀は手を差し出した。
その手に手を重ねる。自然と笑みが浮かんだのが分かった。
――ああ。
その笑顔。
たいしたことをしたわけでもない。ただ、手を差し出しただけ。
声をかけただけ。
それだけなのに、彼女は笑って自分を見る。
なぜだろう。そんなことを頭をかすめるけれど、すぐに忘れた。忘れることにして、思考を追いやった。
彼女は、仕事にかかわりはない。何も。
だから、これでいいのだ。
「秋嶋さん」
「世津子でいいのよ。何度言ったらいいのかしら」
――身分が違いますよ、とこちらも何度言ったか。それも忘れた。
『何をしていたの?』
ああ、非番だったのかしらと言う同僚の声は少々からかうような色を帯びていた。
「休みのわけないでしょう。別の警戒に当たってました。それは知らされてないんですか」
『さあね。もともと直接関係なければ知らないのが普通でしょ、私たちは』
――まあそうだが。
『お嬢様のこと、気になる?』
「なぜ?」
『あら、どうでもいいの。あの様子、見たんでしょう』
婚約間近だと言って、彼女は言葉を切った。
「――」
何をどう言えというのだ。そう思って黙っていると、向こうで息をつく音がした。
『つまらない』
「何がです」
『いいわ、もう。ほんと朴念仁ね』
「何の関係が」
『少なくとも、あの方、あの見合い相手のいけすかなさは置いといても、会って楽しい思いをしているわけじゃない。帰ってくるとものすごく疲れていらっしゃるもの』
「個人の事情に立ち入るのはご法度ですよ」
『立ち入ってない。様子を把握しておくことは大事よ』
(見合いか。)
だから何だというのだ。
世津子は知ってか知らずか重いものを、歴史や家柄というものを背負っている。本人の意向はどうあれ、家の名はついて回るのだ。
そして、それを彼女はわかっている。
それを振り切って、責任を放棄するような身勝手な娘でもない。
「どうされました?」
護衛に言われるまで、自分の状態に気付かなかったというのは迂闊以外の何物でもない。
何かおかしいかしらと問うてみたが、護衛は心得たように「何も」とだけ言って下がった。
仕方なく、寝間に行って鏡を見る。果たして、目のあたりがまだおかしかった。
(わかったのかしらね)
でなければあんなことは言うまい。例えば、政治家の家に勤める女中の心得は知らずとも、そばに常にいなければならない身として、理解していなければならないことは頭の中に叩き込んでいるのだろう。
つまり、泣きはらした跡を何とかしろ、ということである。
小さなため息をついて、世津子は布を探した。
今日はまた出かけなければならない。祖父の供だ。いつものように母ではなく、なぜ自分なのかと思ったが、何か理由があるのだろうと考えるのをやめた。
今日も和服を選んだ。
様々な色の花や意匠を凝らしたものをまとっていると気が晴れる。鮮やかな色、上質な絹の重さ、地紋の織りが、目にも体にもうれしい。
祖父はそれをわかっているのか、家にいるようになってから、時折衣装を作らせてくれている。贅沢だと思うが、このところの気持ち、倦みを消してくれるものはそのくらいしかなかった。
何という、甘えだろう。
何という、――
(わたくしは辛抱が足らないのだわ)
結った髪に髪飾りを刺してもらい、ようやく微笑みが満足いくものになる。
さあ、行かなければ。
鏡の中の自分の姿を今一度確認し、世津子は鏡像に笑いかけた。
華やかな空気の、華やかな茶会である。
みながそれぞれに趣向を凝らした衣装でめかしこみ、最高の笑みで彩る集まり。
政治にかかわるもの、経済で寄与するもの、それぞれに思惑はあるのだろうが、笑みの裏にすべてを隠して集う。
何としたものか。
いや、わかっていたとしても、表面だけでも同じようにせねばなるまい。
(お祖父さま)
いろんなものを飲み込んで、かつ渡り切ってきた老獪な人を思う。
今日は招かれた側だが、場所は新しくできた会館とやらで、どうもその宣伝を兼ねているらしい。
「お孫様の披露の席にもよろしいかと。どうぞよしなに」
招待主にそう言われ、祖父は当たり障りのない言葉を返していた。それについてはおそらく昔からの付き合いのあるところを利用するか、自宅に招くかということにしたいのだろうが、今はまだそんな話が具体的に出ているわけではない。
それは安全を慮ってのことであって、祖父は内心で歯噛みしたいほどの気持ちだったであろう。だがそれでも、笑顔で――おそらくこれも本心からの――挨拶をして回っていた。
その背中を見つつ、今はいない人のことを考える。
父だ。
(お父さまがいて下されば)
さぞ心強かったろうに、と思わずにはいられない。祖父も、自分も。
娘婿ではあるものの優秀で、祖父が後を継がせるつもりだった父。
その一人娘である自分は何をなすべきか。これまで考えたこともなかったことを思いめぐらせている自分に気づき、ひとり笑った。
(政治、か)
夫となるはずの人は何というだろう。いい顔はしないに違いない。
そう思った時、ふと視線を感じた。
――?
誰もいない。
目を走らせてみたが、特に周りにおかしなことはなかった。
とはいっても、自分は素人そのもので、勘が働くようなことはこれまでも経験したことがない。
(思い過ごしかしら)
むしろそうであってほしい。
そう思った時、全身に衝撃を受けた。
――ほう、と息を吐く音がすぐそばでした。
それも、耳元で。
「危ないな」
「え?」
「ああ、失礼。それじゃ」
触れていた腕が離れる。
「本もいいけれど、周囲には気を付けたほうがいいですよ」
『本も』
ああ、初めて会った時だ。
もう少しで車にぶつかるところを彼が止めてくれたのだった。
厚い、専門書に夢中になって、寸暇を惜しんで読んでいたあの頃。講義までに読み込み理解したかったのに、時間が足りずにそんなことをしていた。
次に会ったのは中庭の池のほとり。椅子に腰を下ろして時間を忘れて辞書を繰り、外国語の本を訳していたらいつの間にか彼が立っていた。
「日が暮れますよ」
「え……あ」
空を見れば東は藍に、西のほうは淡い青の下が焼けた色に。
「大変、帰らないと」
慌てて本と帳面をまとめていたら、辞書を落とした。
「どうぞ」
世津子が手を伸ばそうとする間もなく、拾って差し出した彼は、受け取ると同時に身をひるがえして行ってしまった。
『誰かしら』
そう思っていた矢先、広い講義室の中に見つけた姿。
地味な風貌の、どこか田舎から出てきたのかという学生そのままで、一緒にいた友には気づかないふりまでされたのだ。気もそぞろに終わるのを待ち、出ていく背中を追ってやっと声をかけることができたのは、教室どころか建物を出たところだった。
『お礼を言いたくて』
その言葉に何かしました?と言われた時には面食らい、説明をした後にもたいした反応もされずに拍子抜けしたのだが。
それでも、数度顔を合わせるうちに、勉強を教えてもらえるようになり、図書館で空いた時間に会うようになり――
どこにでもいそうな、そんな空気をまとっていたというのに。
いったい、何度助けてもらったのだろう。
――まぶしい。
「世津子さん」
母の声だ。いつもの、抑え気味の。
「お父さま、世津子さんが目を開けましたわ」
ああ、祖父がいるのだ。そんなことを思って顔を横に向ける。
物音が、そして足音がして人が入ってきた。
「世津子、大丈夫か、わかるか」
「おじいさま」
息を吐き、そして母のことも呼ぶ。
「お母さま……」
「よかったこと。世津子さん、気分はいかが」
ああ、珍しい。母が、こんなに柔らかく微笑んでいる。
(優しいわ)
子供のころの、熱を出した時を思い出して笑う。
「どうした、世津子」
「だって、久しぶりなのだもの。お母さま」
「何を言っているの、この子は」
毎日会っていますよ、と言いさして、母はふと表情を変えた。
「そうね、忙しくしていたから……どこか痛むところはない?」
「痛む?」
聞き返して、やっと自分のいる場所が病院らしいと気づいた。
「わたし、いったい」
「脳震盪ですよ。突き飛ばされて、頭を打ったの」
なんだ、と思ったが、様子を見るために数日はこのままだと言われ、さすがに抗議の声を上げたが聞き入れてはもらえなかった。
「何か、大変なことがあったの?」
「いいえ」
母が首を振った。が、すぐにもう一度小さく首を振り、「いえ、あった――というべきかしらね」と言った。
「うちの別邸に比べたら被害はないに等しいだろうよ。怪我人も少なければ、家も崩れてはおらん」
「お父さま、そのようなことは今でなくとも……」
おおそうだった、と祖父が自身の額に手をやった。
「お母さま。では、またあの時のようなことが」
母が、ためらった後にうなずいた。
「様々な方のご尽力があったのですよ。あなたの命が救われたのも、おじいさまが無事だったのもね」
「あのしゃれた壁や窓に少々穴が空いたようだが」
祖父が笑った。
「まあよかろうよ。それよりも世津子、お前が無事でよかった」
「ええ。……ええ、本当に」
母の目が少し潤んでいる様に見えた。
起き上がるにはまだ早い。
そういわれて、数日が立っている。
「痛むでしょ」
見舞いに来た京子が言った。
「あなたのお嬢さまは、退院してお屋敷に戻られたそうよ」
目を閉じる。
「それは良かった」
「なぜあそこにいたの?」
「たまたまです」
「嘘つき」
代わりに弾を受けられるようなところにいたくせに――と続けられたが、それには沈黙を通した。




