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「EW攻城戦➅」

「おぉ……!! 帰って来たぞ!!」


 チャーリーの手足が縄で縛られ、エビのように丸くなった姿勢で城門前に捨てられていた。チャーリーの声は体格と比例して大きく、遠くにいたクラスメイト達にも聞こえたようだ。


「ちょ……おまえ、無傷!?」

「あんなヒョロヒョロしてるのに……」

「かっこいいー!!」


 先程までの緊迫感はどこにいったのだと突っ込みたくなるほど、切り替えの早い連中だ。クラスメイトの数人は宝でも見つけたかのように目を輝かせて、こちらへ駆け走って来た。


「ねぇねぇ、無血開城しちゃったの?」

「え? マジか……」

「いやいや、それはねぇーベ。こいつに限って首を狩ってどこかの商人にでも売ってる筈だべ」


 3人目に話した斑尾(まだらお)は僕を”非道な暗殺者”だと勘違いしていないか……?


「無血開城は残念ながらできなかった。城主は勝手に死んじゃったよ。その周りにいた人間は僕の部下にした。大体、30人くらいだ」


 3人の頭の上にはクエスチョンマークがついていることだろう。だが、今はそれを話すべきではない。


「おっと、どうやったかは聞くなよ」


「「「は〜い」」」


 僕は3人を後にして、他のクラスメイトの元に向かった。どうやら3人の言った通り、右京が五十嵐をボッコボッコにしていた。五十嵐の端正な顔に痣が幾つもでき、イケメン台無しだ。


「あなた、不細工ですねぇ〜?」


「……っ、ぐ……あっ」


 五十嵐の頭部が片手で掴まれる。片手の握力だけで宙に引き上げ、五十嵐の頭蓋骨はミシミシと鳴っていた。


「うん? おや、早乙女君じゃないですかぁ〜」


 僕に気づくと、右京は五十嵐の頭から手を離し何事もなかったかのように僕と話し始めた。


「早乙女君、無血開城できました?」


「いや、城主が勝手に死んで出来なかった」


 右京は口角を上げて満面の笑みを不気味な顔に貼り付けた。無駄に大きい口が際立っており、なんだか怖い。


「何なら、私が単身でぶっ潰せばよかった」



 こいつも相当なバケモノだな……。

 右京なら本当にやってしまいそうだ。武将だと打ち明けられてもおかしくないほどの強さを秘めいている。


「では、私はこれでっ♪」


 右京はブレザーを脱ぎ捨てると、どこかへ走っていった。


「まったく……何なんだ、あいつは」


 溝内が不満に思う理由は分かる。だが、僕はあいつの抱える気持ちの方がもっと分かる。


「それより、五十嵐君大丈夫?」


 今更か。右京が怖すぎて手出しできなかったのに。


「あ、あぁ……大丈夫だよ」


「ほんとに?」


 疑念の眼を五十嵐に向けているが、五十嵐は本当になんともないだろう。五十嵐は……特別だ。


 五十嵐はお尻の砂をパッパッと払うと、僕に向けて微笑んだ。その後、直ぐに目を逸らし、ぐるりとクラスメイトを見回した。


「早乙女君が敵に城を明け渡すように誘導してくれた。みんなも最後まで戦ってくれて、ありがとう!! 脱落した10名は”残念”だけど、彼らの分まで共に戦おう」


 五十嵐が拳を上に突き上げると、みんなもそれに合わせて突き上げた。みんなと言っても縛られて放置されてるチャーリーと僕と右京はカウントされていないんだが。



「おや?」


 突如スマホの画面が金色に光り始めた。その光は僕たちを飲み込んで、うっとりとした眠気を呼び起こす。


 瞼が閉じられたときにはもう、そこは特殊士官学校だった。




 


 







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