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「EW・攻城戦➂」

――1時間後


 福田から連絡がきた。

 福田は確か女子のリーダー的な存在で、あらゆる能力が高水準だったように記憶している。

 初めの地点に集まるよう言って回ってるらしい。

 確認したところ地図は同じであり、まだ地図を入手していない生徒も多いみたいだ。

 ここは時系列が平行に進んでいっているのか。

 地図の入手方法を伝授すれば問題ないだろう。


――3時間後


 地図上、20人がそれぞれ最初の地点に集まったようだ。

 人数があと1人増えるだけで、確実に城は出現しなくなるだろう。

 

「早乙女君、城が出現しないんだけど。どうしてだろう。やはり地図屋の初めの言葉が鍵なのかな」

 

「そうだろう。お前はあの言伝(ことづて)に関してどう思った?」


「”廿日の暦”は二十日のこと。つまり20人を指していて、”高閣”は城を指しているだろうね。20人揃わないと城は姿を現さないということかな。”古紙”はこの地図のこと。”没個性的”というのは個性がない、全て同じ地図だということでしょ。最後のハゴロモセキセイの声に耳を澄ませたか、は分からなかったね。入学テストで満点の早乙女君なら、何か分かったんじゃないのかな?」


 ハゴロモセキセイは頭と背中の羽が逆立っている。

 つまり言ったことの逆を考えろ、と言うわけだ。

 そして、個体差はあるものの、インコは基本的に騒騒しい生き物だ。

 騒々しい生き物に喩えられている人といえば、甘坂か? 騒々しいというより、騒々しくさせる要因だが。


 そして、その甘坂の発言を一言一句思い返す。



 『じゃあ……”生き残り”を賭けた試験を始めようか?』


 生き残り、と言う箇所が強調してるように聞こえた。

 生き残りの逆。

 りこのきい。

 りこのキー。

 利己のキー。

 

 利己的であることが鍵、だと考えられる。

 自分の利益だけを考えろ、と言うことだ。

 

 利益だけを考えて、クラスメイトを陥れろと言うことにも捉えられる。

 だが、これはダミーだ。

 あの状況や場面で、そう考えられるだろうか?

 地図屋は一番初めに言伝(ことづて)を伝えた。

 つまり、地図の取引に関することだと推測できる。

 地図屋と自分が得をする形ではなく、自分だけが得をする形に持っていけ、ということだろう。

 

 


「ハゴロモセキセイについては知らないな。鳥類だろう? 鳥について造詣が深いやつに聞けばいいんじゃないのか?」


 

 

 

「うん。そうするよ。ありがとう早乙女君」


 そう言い、電話は切れた。


 

 

「下士官。先程の話を聞いて、どう思った?」


「いえ、試験には口出しできませぬ」


「そうか」


 下士官や歩兵たちは別の時代から召喚された人間なので、僕とは違う視点も持ち合わせている。だから意見を聞きたかったが残念だ。

 

 しかし、召喚されたときに、おどおどしていなかったのは何故だ?

 普通、突然別の時代へと召喚されればあたふたするだろう。

 ここから考えられることは元々話を合わせていて、試験官的な役割も果たしていると言うこと、か。


「とにかく、早くしないと争いが起きるなぁ」


 担任や甘坂は生き残りを賭けた戦いだと言った。

 つまり、20人以外は退学、もしくは本当に死ぬ可能性が高い。

 担任の意図は掴めないがあのとき、嘘をついていた。

 僕らはこの世界で死ぬと、現実世界でも死ぬ。これはシステム上、確実的な話だ。


「おっ」


 再び福田から電話がかかってきた。


「一応、皆に聞いてみたけどしらなかったらしいよ。本当に解決の糸口はあるのかな……」


 福田は消え失せそうな声を必死に絞りだした。

 


「学校側が解決できない問題を普通、出すか?」


「出さない、よね」


「なら、学校側はこれから何を試すと思う?」


「えーと……知力は試されたし、統率力や意思疎通能力も試されたね。胆力と武力?」


「そうだ」


 ほう……

 福田は頭の回転が早いようだ。

 扱いやすい。


「……つまり胆力か武力、又は一方が試されるわけだから、もしかしてこれから戦う可能性があるよね?」


「そうなる。20人以上になれば城は出現しない。つまりどう言うことかわかるか? 福田」


「戦うことになる……」


「あぁ、もしくは胆力だけが試されてクラスメイトを冷静に取り扱う、か」


 それが意味するところを福田なら理解できるだろう。



 そして、この試験は入学試験とは違い、総合評価が測られている。

 満遍なく能力値を測定するためのテストを受けさせられると考えるのが妥当だろう。


「クラスメイトにそんなこと……」


「やるかやられるかだ。やられるくらいなら先に蹴落とせ。後から絶対に後悔するぞ?」


 福田からは返事が返ってこなかった。

 少しキツめに言ったのは訳がある。

 福田は高水準な能力の持ち主で、今後使える駒になると思ったからだ。


「そう、かな……」


「じゃあ、切るぞ」


 最後、何か言いたげな雰囲気を感じたがとりあえず電話を切った。

 

 福田には、先程の言葉を咀嚼させる必要がある。


 


 

 





 






 

 

 

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