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「EW・攻城戦➀」

「凄いところだな……」


 目の前には緑豊かな平原が広がっていた。

 空気も美味しい。

 物騒なことを思ったものの、ずっとこの世界にいたい気分だ。


「それにしても、動物はいないのか?」


 辺りを見渡すも、それらしきものはない。

 人間すら俺以外いなかった。

 この平原のどこかにはいるだろう。


 担任はアプリで俺たちを転送させる前にこう言った。


 クラスメイトで協力し合え、と。


 スマホで連絡が取り合えるか、遭遇できる範囲にはいる可能性は高い。

 

 突然、スマホの通知が鳴った。

 画面を一瞥してみると、購入の手順が表示される。




「……なるほど」


 右上にある数字がBPを表しているらしい。

 10000と記されている。

 それを使ってショップで買い物するわけだな。



 《ショップ》


 歩兵10→120BP

 歩兵50→500BP

 歩兵100→950BP

 歩兵500→4500BP

 歩兵1000→8500BP


 あらゆる時代から兵科は召喚される。

 選定はランダム制だ。

 そして、歩兵は1から購入できるのだが少し高い。セットで買った方がお得だ。


「歩兵50を購入しようか」


 購入ボタンを押すと、歩兵が周囲に召喚された。


「ハハッ、我らを召喚していただきありがとうございます」


 強いか弱いか、分からないな。

 どちらにせよ、戦は数で決まる。

 今のところ歩兵以外の兵科を購入するつもりはない。

 それに、一人の指揮官の手が届く人数は大体十人程だ。

 

 一隊から五隊にそれぞれ一人指揮官を用意する。

 

「下士官はBP……150程か」

 

 続いて下士官5人を購入した。


「「「「「ご命令のままに」」」」」


 一隊を俺の護衛として待機させ、残りの四隊は四方から見張らせた。


 もう一つ命令を下しておこう。


「一人の歩兵は二人の歩兵で倒せ」


 

 合流して作戦を立てるか?

 いや、ひとまず城に近づいてみよう。

 城の形状や敵の戦術を見なければ分からないことも多いだろうし。


「城の場所はどこだ……?」


 スマホの地図アプリを使うも、反応なし。

 このアプリもファンタジー戦争同様、許可がないと使えないのかもしれない。


 ならば手探りで探すか?

 それはナンセンスだろう。

 第一、城はここからでは見えないほど遠い距離にある、もしくは正攻法では見つからない場所にある、いずれかの二択である可能性が高い。


 担任は何を試している?

 手探りで探すのは地形、そして地理的距離から見ても難しい。なので、地図かそれに代替するものを探す必要があるだろう。


 


「あたりに人がいないか、試してみる必要がある。この陣形のまま、俺が歩く方向について来い」


「「「「「ハッ!!」」」」」


――歩くこと30分


「ようやく見つかった」


 一人、地図屋の看板を背負っている中年の女性がいた。その女性と目を合わせた瞬間、マシンガンのように伝言を言い始めた。


「システムリーダーより伝言です。『廿日の暦が揃わんと、高閣の姿は見えないだろう。古紙は没個性的でハゴロモセキセイの鳴き声は聞いたか?』」


「……」


 とりあえず記憶しておく。僕は聞いたこと、見たことは絶対に忘れない。この能力を羨ましがる人達もいるかもしれないが、普通の人にはデメリットも大きいだろう。僕も少なからずダメージを受けているが。

 


「何か、用件はありますか?」


 まるで、用件を待っているような言草だな。

 



「地図を売ってもらえませんか?」


「えーと、3000BPになります」


 この女には値段を提示するときに迷いがない。

 あらかじめ決めていたのか?


「値下げ交渉は受け付けてますか?」


「はい、受け付けております」


 一瞬、邪な考えが思い浮かんだ。

 地図を奪えばいいじゃん、と。

 担任は不正行為に関しては触れていなかった。

 



「ミート、マンブ」


 ミートとは歩いてる途中、仲良くなった青年歩兵のことだ。マンブもミート同様、青年歩兵だ。彼は歩兵としてお金を稼ぎつつ、医者を目指してるらしい。

 


「「ハッ」」


 二人の歩兵は彼女から地図を強奪した。僕の意図を察してくれる二人は手の加えようがないほど優秀だ。歩兵であることが勿体無い。

 

「こちらでございます」


 地図を受け取ると、それは白紙の紙。

 地図としてなんの価値もないものだ。


「試しに、もう一回奪ってみろ」


「ハッ」


 再度、地図を受け取るとやはり白紙だ。

 一つを残して、彼女の持っていた地図は全て白紙だった。


「そうか……。なんの説明もなかったけれど、正当なやり方じゃないと受け付けないのかな?」


 目の前の女性に再び視線を向ける。


「貴方の名前は?」


 少し驚いた顔をする。

 予想外だったのだろう。


「アイリス・ブラウン」


「アイリスさん、地図を売る以外に何をされていますか?」


「答えられません」



 こいつはAIなのか、召喚された人間なのか試してみたい。

 それと、AIを殺害したときの代償についても調べる必要があるな。

 しかしそれをやると、俺はなんらかのペナルティを受ける可能性がある。

 

「……」


 うん。

 いいこと思いついた。

 それは後でやるか。

 あとで、ね。


「アイリスさん、待たせてしまいすみません。とりあえず交渉しましょうか」


「はい」


「100BPで譲ってもらえないでしょうか?」


「ダメです」


「どうして?」


「割に合わないからです」


「割に合うと思われる値段はいくらでしょう」


「3000BPです」


 交渉次第で下げられるらしいが、それをしてしまうと割に合わなくなるのではないか?


「割に合わない値段でも購入できますか?」


「交渉によります」


 割に合わない値段でも、なんらかの物を付加させることによって割に合うものにすることもできる、ということだろう。


「499BPで譲っていただければ、追加で30代の歩兵一人お付けしますよ? 歩兵はボディーガードとして機能する他、話し相手、恋人(?)としても一応機能すると思いますよ。歩兵をお付けするのはこの交渉一回きり、ですが」


「……分かりました」


 あっさり、だな。

 本物の地図を渡してくれるのか心配ではある。


 目の前の女は箱から一枚の地図を差し出した。

 とても大雑把なものだが、城の位置は記されているので満足だ。

 だが……


「この地図が本物だと分かるまで、499BPは払わない」


「え……?」


「いや、前払いとして199BPは払っておきましょう」


「今、ここで499BP払ってください」


 そうくるか。


「それなら、前払い199BPと下士官2人をここに置いていきます。合わせて499BPの価値はあるでしょう。本物の地図だと確認したら、下士官2人を回収し、残りのBPを払います」

 

 同意したので、彼女にBPを送る。

 BPは相手の口座に直接振り込むことができるようだ。

 現実となんら変わりはない。


「下士官二人はここに待機。下士官のいない第四隊と第五隊は俺の直属隊に編入させる。いくぞ」


「「「「「ハッ」」」」」


 さて、城を目指しますか。


「この地図によると……最初の地点!?」


 最初の地点に城がある、というのだ。

 最初の地点にはなかった筈。

 

「こやつ、嘘を吐きましたぞ!!」

「斬りましょう!!」


 短絡的な奴らだな。

 まぁ、こいつらは別の時代から召喚された人物なので人間味があるのは仕方ない。


 衝動的な歩兵らを手で制すると、蛇に睨まれた蛙のようにおとなしくなった。


 とりあえず、最初の地点に向かいますか。

 

「なんらかの条件……」


 攻城するために必須アイテムでもあるのだろうか?

 ショップを開き、一通り確認してみた。


「詳細の内には何も書かれていない」


 そう、これは試験だ。

 なんらかのヒントがある可能性が高い。


 ゲームの説明書にも書いていなかったと記憶している。


 その前に説明はされただろうか?

 

 担任が説明していた。

 確か……クラスメイトと協力し合い城を攻略しろ、と。


 つまり条件はクラスメイト。

 



 最初の地点まで戻れば、クラスメイトに接触するかも知れない。




――最初の地点


「誰も、いない?」


 ぐるっと見渡しても、誰一人として姿は見当たらない。

 


「やっぱりあの女、嘘をつきよった」

「指揮官殿、斬っても宜しいですか?」


「やめておけ」


「「ハッ!!」

 

 あの女は嘘をついていない。第一、あの女のお陰で城の出現方法が分かったからだ。

 他のクラスメイトはどうだろう? 僕より早く気付けたかな?




 

 

 









 















 


 

 

 


 



 

 

 


 


 


 


 



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