「東雲朱雀、死す」
オーク隊は前方のゴブリン隊に、なだれ込むように突撃した。ゴブリン隊は相変わらず、連携をとり上手く戦ってくれている。
騎馬武者隊はもうすぐ、戦いが終わりそうだったが……すぐにグールが導入されたことによって足止めを食らっている。騎馬武者は一応、貴重な兵科だ。
ここで死なせるわけにはいかない。
「魔法使いを導入すれば、すぐに片付けられるが……」
魔法使いには当然、魔力がある。魔力が底を切らすと魔法は使えない。全体攻撃の技は魔力を著しく消費して、単体攻撃の技は魔力の消費量が比較的省エネ。
おそらく赤城はグールを囮に、魔法使いに広範囲の技を使わせて、殺封するつもりだろう。
「ふふふっ……神官は魔力の回復は無理だからねぇ。さて、どうする? 早乙女のくん」
騎馬武者と魔法使いだけを天秤にかけていては合理的な判断はできない。戦況を見て、判断するべきだ。
敵方のグリフォンは、空中から指令を行う東雲を攻撃しない。そして、【暴れん坊】アウルベアやカルキノスなどの強力な兵科をまだ導入していない。
僕の後方には竜騎士が待機している。
それは何故か?
敵を怯ませるための威嚇だ。
正直、竜騎士をあまり使いたくはない。竜騎士は最強クラスの兵科なので、東雲暗殺に使うのは勿体無いだろう。
竜騎士は空中戦に、まだ導入しないが威嚇を止めさせることは可能だ。威嚇を止めることによってアウルベアやカルキノス、グリフォンが暴れることになる。
アウルベアやカルキノスはオーク隊で対処するが、グリフォンは対処しない。野放しにしよう。
「竜騎士、グリフォンへの威嚇を止めよう」
「何故ですか!? ……分かりました」
竜騎士、さすが最強クラスの兵科だ。
事態の飲み込みが早い。
竜騎士は僕の指示通り、グリフォンへの睨みを止めた。グリフォンは今まで、ドラゴンに睨まれていたので動かずにいたが、敵意がないことを感じると、即座に空へ飛んだ。東雲はグリフォンと竜騎士の間に起こった事態を知らない。警戒心が薄いため、東雲はまだ気づいた素振りを見せなかった。
「……うぉ!?」
ようやく気づいたか、東雲。
君の役目は終わりだ。
「……ぐあぁぁぁ!!」
グリフォンは初手、右肩を爪で抉る。まるで、土をスコップで掘るように。
東雲はバランスのコントロールを疎かにして、地に吸い込まれるように落ちた。その反動でスマホは宙に舞い、竜騎士とグリフォンによる争奪戦が始まる。
ドラゴンは文句なしに強いが、素早さだけは他の飛行種に劣るだろう。対してグリフォンは素早さは一級品。普通の奪い合いならば勝ち目は薄いが……
「ふふふっ……」
生憎、風向きがこちら側。グリフォンよりも竜騎士に分がある。
ドラゴンの爪は強力すぎるので、スマホが壊れてしまう。なので竜騎士がスマホをキャッチした。
「キィーキィーン!!」
グリフォンが背を向けた、ドラゴンに対して追い打ちを仕掛けようと接近。
「甘いっ!!」
竜騎士は片手に持ったランスを接近したと同時に突き上げて、串刺し状態にする。
「まだ、生きてるの!?」
グリフォンは上半身が鷲で下半身がライオン。上半身はピクリともしないが、下半身はなぜか生きていた。だが、死ぬのは時間の問題。
「まだ殺すな!!」
グリフォンはまだ、殺しては駄目だ。
グリフォンは実験第1号になる存在。
死ぬなら、その後だ。
「神官!! グリフォンの治療頼む」
神官にグリフォンを治療させて、実験する算段。そもそも回復できるかが問題なのだが、出来なければ諦めよう。
「東雲さんは……」
「あぁ、もういいんだ……」
東雲は僕と直近で落下した。落下したと同時に嫌な音が鳴り響き、口からは汚物が排出されていた。
僕は死体に向かって、話し掛ける。
「僕は平和な未来を築く。戦争のない平和な世界……。君の死は無駄ではなかった。いや、僕が無駄にはさせない。僕について来てくれて、ありがとう東雲」
これから、そうやって何人も殺していくんだ。
僕の将来のために。
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早乙女は、東雲の死を無駄にしません。
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