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海鳴の町綴り  作者: あんこ猫
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一部、不快な表現が御座いますので、苦手な方はご注意下さいます様お願い申し上げますm(_ _)m

 ここ連日駆けずり回ってトラブル対処や侵入者を追い返していたアタシは、とうとう疲労でダウンした。

 途中、オバチャンが

 「“ビジン”、生きてるかー?ご飯持ってきたから後で食べなよ。」

 ってお粥とスープ、水を何度か持ってきてくれたり。


 台風のおかげで侵入者はこちらへ来なかった事と、周りのフォローもあり、久々に強風と荒波の海鳴りを聞きながら、うとうとと微睡んでいたら家の前で大声で叫ぶ誰かがいた。


 ー煩いなぁ。


 そう思いながらも、このまま叫ばれるのも迷惑なので渋々起き上がり、外へ出てみると“シマコ”や“マキコ”を始めとする女達が


 ー“ビジン”、大変!


 ー“ミナコ”が帰ってきたんだけど…ヤバい事になってる!


 ー男達もすごい殺気立ってて、アイツ、本当に殺されちゃうかも!


 出てきたアタシに女達はオロオロ、アワアワと狼狽し口々に言うので半分はよくわからなかったけど、ハッキリわかった事はひとつ。


 …ノコノコ帰ってきたのか、馬鹿女(ミナコ)

 今更帰ってきても、この組織に居場所なんて無いのに。

 ボスのお気に入りって事だけで戻れると思ったんだろうか?


 まぁ、推測を考えても仕様が無い。


 アタシはまだ少し重さが残る身体で、女達に道案内されて現場に向かった。


 いつもの細い路地。

 今は誰も住まなくなった空家数軒と小さい原っぱがある場所で、馬鹿は取り囲まれていた。


 血塗れで倒れているナンバー2の“ワカガシラ”の傍には馬鹿女(ミナコ)が周りの男共を威嚇しながら、甲高く頭に響く声でギャーギャーと何か叫んでいる。


 女達は“ワカガシラ”の事は言ってなかったな。

 どうでもいい男って事か。

 本当にどうでもいいんだけど。いや、騒動の中心だからどうでも良くないか。


 アタシ達が到着したのを見計らってか、返り血を浴びたボスが動いた。

 両肩に入った紋々は血で真っ赤になっている。


 ーおう。来たか女共。


 視線だけこっちに寄越しながらボスが言う。


 ーボス、寝込んでしまってすいません。こいつら捕まえてきたんですか?


 “ワカガシラ”と“ミナコ”がこの場にいるので聞くまでもない事であるのは承知しているが、アタシは寝込んでいた為に状況を掴めていないので、ボスから聞かねばならない。


 ーオマエから頼まれたって“ミスタ”から聞いたからな。俺もアミモトさんを敵に回したくは無ぇからよぅ。コイツ等捕まえるついでに、右のグループ潰してきたわ。


 何でも無い事のようにボスは言う。

 右のグループ…若い連中しかいないグループの事か。


 ーあんな根性無しの弱ぇ連中でどうにかしようっつーこの馬鹿は、心底馬鹿だったな。


 ーボスに敵わなかったから、他のグループでボスになろうとしたんですかね。


 ーだろうなぁ。歯向かわなけりゃ、それで良かったんだが、こうなっちゃあ示しがつかねぇ。


 だからこその、ボスの力を示すための私刑(リンチ)

 天辺たるボスは絶対。

 力こそ全て。

 それがアタシ等含む組織の掟。


 ボスは男共を上手く使い、グループを殲滅した後“ワカガシラ”と“ミナコ”を手加減しながらこちらまで誘導してきたのちに、まずは“ワカガシラ”から私刑を下した。


 あまりの煩さに若い衆から地べたに頭を抑えられていた“ミナコ”が会話に割り込んできた。


 ーアンタ達!アタシはボスのお気に入りなんだからね!こんな事して許されると思ってんの?!


 あぁ、どこまで馬鹿なんだろうな。

 頭を抑えつけている若い衆も「何言ってんだコイツ」と言わんばかりの顔で見ている。


 アタシが“ミナコ”に喋りかけようとしたのをボスが遮る。


 ーわかって無ぇなあ、“ミナコ”。オメェは組織を裏切って危機に晒したんだぁ。下手すりゃアミモトさんまで乗り込んでくる程のな。


 しかしなぁ、一番の問題は


 そこで死にかけてる馬鹿との掟破りなんだよ。


 ボスの顔が修羅の形相に変わり、纏う雰囲気が、ざわり、と更に禍々しくなった。


 ーえ、何…ボス、何するの…?


 底抜けの馬鹿でもようやくわかったらしい“ミナコ”は怯えた表情を見せるも、ボスがこうなったら止めるつもりは無いだろう。

 面子も威厳も潰された男が、許すはずが無いのだから。


 ボスはただ、ひと言。


 ーみせしめ、だ。


 そう言うと“ミナコ”を数度ボコり、抵抗する気力を削いでから周りに見せつけるように“ミナコ”への『みせしめ』と言う名の公開凌辱を始める。


 「あーぁ。やっぱこうなったか。」


 ふと、声がして後ろを向くと釣り竿とタモ、クーラーボックスを持ったオバチャンがいた。

 ヤンキー座りしながらポケットから細葉巻を出して火をつけながらオバチャンは続ける。


 「最近煩かったからさー、ちょーっと探ってたんだよね。ウチの親父殿がぶち切れる前にボスが納めてくれたから良かったけども。まぁ“ミナコ”は完全な自業自得だわな。」


 変わった香りの煙を吐きながらオバチャンは言う。


 その間にも“ミナコ”は


 ー何でっ、何でこんな皆が見てる所でヤるのよおっ!?


 ー止めてよおぉっっっ!!助けて、“ワカガシラ”ぁ!


 ー畜生っ!畜生ぉぉ!!テメェ止めろよぉぉぉ!!


 土塗れになり、叫びながら助けを求めるも、組織の仲間達は誰も手を貸すはずも無く、憎しみを込めるような目をし無言でボスの罰を受ける“ミナコ”を見ている。


 当然だ。

 一人の欲で生活を奪われるかも知れなかったのだ。

 いや、命すら危うかった。

 アタシを含め、怒るのは当然である。


 “ワカガシラ”は何度か身体を動かそうとしたが、若い衆や“ミスタ”から手加減無しの攻撃を食らい、そのうち動かなくなった。


 罰は一度では終わるはずもなく、“ミナコ”が身動き出来なくなるまで続いた。


 皆が去った後には、放心し、無様な姿を晒す“ミナコ”だけが残った。


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