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海鳴の町綴り  作者: あんこ猫
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6

 境界にて侵入してくる余所者を見つけ次第、向こうに追い返しつつ、あの日から行方をくらませた“ミナコ”を探す。

 原因の一端でもあの馬鹿女(ミナコ)が担っているのならボコってでもとっ捕まえて事情をきかなければならない。


 仲間達も“ミナコ”を探しているが、要として居場所が知れない。忘れていたが目を引く容姿でもなければ、顔の作りが整っているわけでもない。性格がとんでもなく舐め腐った性悪なので、外見はあまり気にされてなかったのが正直な所なのだ。


 もう面倒だからいっそ死んでくれていてもいいな、と思いはじめたある日。


 組織のナンバー2である“ワカガシラ”がミナコを連れて反対側の新興組織に出入りしているとの報告が入った。


 あの新興組織は若い連中が寄り集まって、組織とも言えなかったグループだったはず。

 “ワカガシラ”はそこを潰しに行ったのだろうか?もしそうなら喜ばしい事ではあるが…逆に自分の組織として乗っ取ってからこちらに攻めこんでくるとしたら?

 最悪のシナリオは、今揉めている組織と手を組まれて挟み撃ちにこちらを潰される事だ。

 新興組織は若い連中が主なので攻め方は単調かつ連携はとれていなさそうだが、“ジュニア”みたいに特攻で来られると被害は馬鹿に出来ないだろうし、小浜の組織は老獪なのが多いから確実にこちらの戦力をじわじわ削いでくるだろう。


 どう転んでも不味い展開しか無い。


 確実にアタシの手には余る。


 ボスに報告して、何か手を打たないとアミモトさんの怒りをこうむる。それだけは何としても避けたい。

 状況がどうなっても対処できるだけの手を打たないとアタシ等の先は無い。

 女達はまだ大丈夫だけど、男共はこの地にいることは不可能なのだ。運が良くて下っ端、悪ければ命は無い。

 アタシ等の世界は、そんな世界。

 昔から変わらない、優しくはない狭い世界。


 それでも。


 自分の居場所なんだ。


 無くしたい訳じゃない。


 アタシはボスの所へ急ぐ。

 現状とこれからの報告をする為に。


 狭い路地を走りボスが塒にしている家へ入る。

 ボスは…いない!!

 こんな時にっっ!


 ボスの塒から出たアタシは丁度出くわした“ミスタ”にボスの居場所を聞いてみるも、“ミスタ”も知らないと首を振る。

 しかし、探す手は多いほうがいいので“ミスタ”に軽く現状を話し、探してもらう事にした。


 ーあの便所(ミナコ)、本当に厄介だな。ボスには見つけ次第伝えるから、とりあえず探し回れ。


 ーわかってる。早く対処しないとアタシ等よりアンタ等がマズイ状況になる!


 お互い頷きあい、二手に分かれて其々走り出す。


 台風接近で重く垂れ込める雲と、じめっと暑さを感じさせる風がアタシの焦りと不安を益々煽りたてるようで、言い様の無い不安だけがずっしりと伸し掛かってくるようだった。


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