4
すみません、ちょっとアレな言葉や表現があります。
殲滅作戦を思った以上の戦果で終え、男共は上がったボルテージのまま騒ぎ、女達はやれやれといった風に乱れた身なりを整えてちらほらと去ってゆく。
体力の有り余る一部の男共は、そのままじゃれ合うように乱闘を始める。騒がしいったらないわぁ。
多少の呆れを乗せた顔で眺めていると
ーやれやれ。終わったねぇ“ビジン”。これでしばらくは安心出来るかなぁ?
そう言って顔を拭きながら寄ってきたのは“シマコ”。
可愛らしい顔が返り血で台無しなので、血を拭くのを手伝いながら返事を返す。
ーまぁ、ああいったのはまた湧くからねぇ。でも今回は叩きのめしたから暫くは平和になるし、アミモトさんも喜ぶでしょ。
あ。そういえばアミモトさんが新鮮なホタテ料理提供してくれるってさ。食べ放題で。
そう言うと“シマコ”は鼻をピクピクと動かし
ーホント?!やったあぁぁ!お腹いっぱい食べるっ!!新鮮なホタテだあぁぁ!
ぴょんぴょんとアタシの周りを跳ねまわり、“シマコ”が喜びを露わにする。
アミモトさんはホタテも扱ってるし、オバチャン経由で食べたことがある“シマコ”はその美味しさに夢中になっていた事を思い出す。
ぷりっぷりした貝柱は甘くてやわらかく、歯応えもあるが味が濃い。卵や耳も味わい深いのだ。あれは産地直送、採れて直ぐだからこその贅沢だと思う。
そんなはしゃぐ様子にアタシも表情がフッと緩むも、角から出てきた影と声に再度表情が凍る。
出てきたのは組織のボスと、後ろに付き従うのはいつもより目つきの悪いナンバー2である“ワカガシラ”と
ー“ボス”ぅ、ネズミ共の始末、お疲れ様でぇす♪
妹の“マキコ”に自分の子を託児し押し付けている、姉の“ミナコ”が見苦しい程ボスに擦り寄り、身体を密着させまとわり付きなから姿を現した。
不快感しかもたらさない、甲高い声と間延びした喋りに、先程まで喜びを爆発させていた“シマコ”や、まだ残っていた女達もアタシと同じく眉間にシワを寄せ、表情を険しくする。
アイツが喋るだけで、いや、姿を認識させるだけでこうもヘイトを集めるとは、何かの才能なんだろうか?
極力表情を出さないようにして、“ボス”に結果を報告しなければ。
ーボス、ネズミ共の殲滅は完了です。そちらの大ネズミはどうでした?
“ミナコ”を纏わりつかせながら“ボス”はアタシを見つつ
ーあのバカは息の根止めてやったわ。図体がデカいから遊び甲斐がある玩具だったけども、アミモトさんの頼みは断われ無ぇしな。
流石に不快だったのか、返り血を拭きながら“ボス”が気だるそうに答える。
“ミナコ”が纏わりついてなければ大分様になるのだが。
アタシは気付かれない様に、ふぅ、と息を吐きつつ
ーお疲れ様でした。後はこちらで処理します。
ーおう。任せた。
ネズミ共を1箇所に集めておけば、アミモトさんの部下が処理してくれるしそれが完了の証でもあるので、残っていた若い衆と一緒に取り掛からなければ明け方前に間に合わない。
オバチャン曰く、ここいらの浜辺と山をアミモトさんは持ってるので処理する場所には困らないらしい。
段取りを頭で組み立ていると、“ミナコ”が“ボス”に
ーねぇ、“ボス”ぅ〜、身体キレイにしてからお祝いしようよ、ねぇ、良いでしょ?“ミナコ”もっといっぱい“ボス”と一緒にいたいの♪“ミナコ”だけが“ボス”をキレイにして癒やしてあげるからぁ〜、お願い?
ーお前を血塗れに出来ねぇからなぁ。じゃあ一緒にキレイにするか。
不快感しかもたらさない、イチャつきながら交わされる会話に正直どうでもいいと思いつつ、早く行けと遠回しに伝え、送り出す。
後ろから身だしなみを整え終わった“シマコ”や他の女達が次々と
ーなに、アイツ。あからさまに媚売っちゃってさ。
ー発育不全で他の男共にボコられてたのにねー。“ボス”に保護されてたからっていい気になってさぁ。
ーオバチャンに命救われたってのに、恩知らずにも歯向かいまくって、育児放棄して完全に見限られたんだよ、アイツ。
ー“マキコ”が可哀想だよね。自分の仕事もあるのにあんな一所懸命に育ててるのにさ。
ーアイツ、他の男共にも媚売りまくってるよ。私等は“ボス”の女なのにさ。
ーあ、それアタシも見た!他の組織の男とかにも手ぇ出してるじゃん。くそビ○チだよ。
そう。
これが最も頭の痛い案件なのだ。
女達のヘイトを集めまくる“ミナコ”。
多分コイツは自分がどんなに沢山の問題を生み出しているかわかっていない。
会話しても伝わらないし、自分話しかしない時点で会話が成り立たない事がわかっちゃいないんだろう。
そもそもアタシ等、女達が“ボス”の女でもあるのに他の男共にも手を出すのが問題なのだ。
バレたら男共は確実に制裁が下される。アタシ等女達もどうなるかわからない。
勝てない相手にケンカを売る馬鹿はいないが、“ミナコ”はそれがわからない馬鹿なのだ。
美人度は女達の中でも低いし、身体も小さいので戦闘力も無い。頭もよろしいとは言えない。仕事も任せられない。子育ても出来ない。性格は性悪で女達との会話では悪態と愚痴ばかり。声も甲高く無駄に大きいのでこちらの思考が削がれるオマケ付き。
何が出来るのかと問うた方が早いだろう。
男共の中にはそれが良いというヤツもいるのだが、正直理解出来ない。
「バカな子ほどかわいいって言葉があるけど、それは子供の時と性格が良いヤツの事であって。見てくれがかわいいってだけで生きていけんのは若い時限定やし性格悪かったらタダの阿呆やで。」ってオバチャンが言ってたけど激しく同感だわ。
更に高まった女達の“ミナコ”へのヘイトに頭を抱えたくなる。
ホントにもう、これ以上問題を起こすな!とパンチ喰らわしながら叫びたい。
食欲も毛も、ごっそり抜けそうな状態だけども完全に処理しないと騒ぎになるなぁ、と重いため息を吐き、女達を宥めながら現場に戻る。
ため息と一緒に足取りも重くなるが、潮風すらも重くなっていた事に気づく事が出来ずにいた。
うわぁぁぁぁぁ!!
初めての「いいね」ボタンが…(TдT)
ありがとうございますっ!
ありがとうございますっ!!
めっちゃ感動して、その日の徹夜仕事はお高いユ○ケル無しで乗り切れました&みやじさんのチケットが当たりました✧◝(⁰▿⁰)◜✧
この年でも嬉しい「初めて」は貴重で、感動します。
心からの感謝を。