幕間ーぼくの、とうさんー
じっと、みていた。
おとなの、ほんきのケンカを。
おとこのほこりをかけた、ほんきのケンカを。
ぼくのままは、とてもびじんできれいなまま。
じまんのまま。
ても、あしもながくて、まわりからは「モデル」みたいっていわれてる。
でも、いつもいそがしくて、ぼくは“しまこ”ねえちゃんや“おふく”おばちゃん、“りんご”ねえちゃんたちによくあずけられてる。
ともだちもいるから、まいにちたのしくあそんでる。
あとは、ごはんはおっきなおばちゃんのとこでたべる。
びっくりしたけど、ままは、おっきなおばちゃんのことがだいすきみたいで、よくあたまをなでなでしてもらったり、くしできれいにしてもらったりしてる。
あ!ごはんはおいしいよ!
おとといは、かたいエビ?みたいなのがでてきて、はじめてだったけど、おいしかったなぁ。
ままのおしごとなかま?は、こわいおじちゃんばかりだから、あんまりあったことはないんだ。
こどもには、まだはやいって。
でも、たまに“みすた”おじちゃんや“じゅにあ”にいちゃん、たっちゃんのおじちゃんなんかがこっそりあそんでくれたり、ごはんやおやつをわけてくれるんだけど、ままにはないしょなんだ。
そんな“じゅにあ”のにいちゃんのこえや、おっきいおばちゃんのこえがきこえたから、にかいからしたをみたら
おとなの、ほんきのケンカをみた。
ビックリした。
こわかった。
パンチされて、ボスがとんでいく。
キックされて、ゆかにねっころがる。
けど、なんだろう。
むねにある、わくわく?どきどき?
わかんないけど、みなくちゃいけないケンカなんだとおもった。
じっと、みていた。
おじちゃんたちも、ままも、じっと、みていた。
しずかで、ただ、ままのおしごとのボスだけが、うるさくさけんでいた。
ボスは、パンチをぜんぶかわされて、ぼくのともだちみたいにぎゃーぎゃーさけんでた。
はんたいに、あいてはぜんぜんボスのパンチがあたらなくて、さわっただけでパンチをよけてた。
かっこよかった。
ずっと、みていた。
あんなにつよいのに、ぜんぜんこわくないの。
ふしぎ。
“みすた”おじちゃんがいってたけど、おとこのほこり、をかけたケンカなんだって。
とくべつな、ケンカなのかな?
だから、こわくないのかな?
はじめてみた、とくべつなケンカ。
ぼくにも、わかった。
ケンカがおわったのか、こわいおじちゃんやにいちゃんたちが、あいてのところへいって、わぁわぁよろこんでた。
おっきいおばちゃんや、こわいかおのおじちゃんたちもきて、あいてをほめてた。
ボスが、ちだらけで、ものすごいスピードでにげてった。
おっきいおばちゃんはボスをゆびさして、ゲラゲラわらってた。
なにがおかしいんだろ?
へんなの。
そのまま、じっとしてたら、ままがむかえにきたから、したにおりたら、ぎゅっとしてくれた。
ままは、いいにおいがするし、やわらかくて、あたたかいからすき。
おなかにかおを、すりすりしたら、なんかほっとした。
おっきいおばちゃんのとなりで、ままとごちそうをいっぱいたべた。
おまつりかなんかかな?
いっぱいのごはん、おいしいな。
ぼくは、ごちそうをたべながら、ボスにかったあいてのはなしをいっぱいした。
なんでか、ままは、しんけんなかおをしたから、ぼくは「どうしたの?」ってきいてみたんだ。
ーあのおじちゃんね、アンタのとうさんなのよ?
でもね、まだナイショにしててね。
ぼくの、とうさん?
うまれてから、はじめて、みた。
いままで、とおくにいて、あえなかったんだって。
なんか、びっくりと、ホントに?がむねにあってぐるぐるしてる。
でも、うれしいな。
あんなに、つよいとうさん。
ふふふ。
かおが、ニコニコする。
はずかしくなって、ゆかをゴロゴロしたくなっちゃう。
ごはんもおわって、おじちゃんたちがいなくなってから、とうさんがままとぼくのとこへきた。
ままは、しんけんなかおになって、とうさんとおはなしをしているのを、ぼくは、とうさんをみあげながらきいていた。
とうさんは、すこしおどろいてたけど、ぼくをみると
ーそっか。オレの子か。…今まで帰ってこれなくて悪かったな。許してくれるか?
っていったから、ぼくは
ーうん!ぼくのとうさんは、つよくて、かっこいいとうさんだから、ゆるしてあげる。
っておへんじした。
とうさんは、へにゃりとわらって、じぶんのおでことぼくのおでこをかるく、コツンとした。
むねが、ほわほわして、どきどきして、なんかうれしい。
とうさんのむねに、だきついた。
とうさんは、それからままにもおでこをコツン、としてた。
まま、なんだかうれしそう。
ままとはちがって、むねはかたいし、匂いもへんだけど。
ひろくて、あったかい。
つよくて、かっこいい、ぼくの、とうさん。
おかえり。




