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海鳴の町綴り  作者: あんこ猫
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12

わあっ、と仲間達が“タヌキ”を囲んでいく。


“タヌキ”を知ってる古株の仲間は


ーやっぱ強ぇなあ、お前は!

ー今までどこ行ってたんだよ…ずっと気にしてたんだぞ?!

ーリベンジ果たすなんて、すげえ男だよ!


等と泣いたり笑ったり、再会を喜び合っている。

付き合いの長かった“ミスタ”に至っては男泣きして、“タヌキ”に逆に励まされていた。

“ミスタ”にとって“タヌキ”は兄さんだったし、憧れの存在で側にいたから、思いもひとしおだろう。


“タヌキ”を知らない若い衆は少しオロオロしながらも、まさかの展開と“タヌキ”の強さに畏怖と憧れの目を向けて挨拶の機会を窺っている。

気の効く若い衆のひとりは、女達にこの事を知らせに走っていく。じきに女達と子等もやってくるだろう。


そうこうしている内にアミモトさん達もやってきて、流れで祝勝会と襲名披露を盛大に行う事になった。


オバチャンも“タヌキ”の手当てをしながら「やっぱアンタ、カッコいい良い男だよ」と背中をバシバシ叩きながら褒めていた。手当てが終わると、さっきまで捌いていたホッケとカレイ、追加でトゲクリガニやホタテ、ヒラメ、何か知らないお高い肉などの下処理と調理に入っている。ちなみに辰っつあんも“タヌキ”の所へ行こうとしていたらオバチャンに下処理作業をぶん投げられていた。

頑張れ、辰っつあん。


アタシは喜びと興奮の坩堝にいる仲間達から少し離れ、二階の階段に張り付いて降りてこられない自分の子を迎えに行った。


ーまま、ケンカ、おわったの?


ー終わったよ。怖かったでしょ?もう大丈夫だから降りといで。お腹空いてない?


ーこわかったけど…だいじょぶ!


恐恐と階段を降りてくる子を抱き止め、そのままぎゅっと抱きしめて無事を確認する。

暖かなお日様の香りのするこの子は“タヌキ”との子だ。

“タヌキ”が組織を去ってから腹に宿っているのがわかった。

運良くボスに目を付けられる事も無く、周りの助けもありながらここまで無事に育ってきた。

この子の事は…まだ話す事はしない。

今は話す事でもない。


子の頭に顔を埋めながら思考に沈んでいると、腕の中の子がもじもじと動く。


ハッと意識を戻すと子は


ーまま…もれる…!!


急いで子を抱え、トイレに走った。









***********************


賑々しく祝勝会と襲名披露が終わり、仲間達が其々散っていく。


オバチャンは後片付けをしながら突然笑いだしたので、何かあったのかと思っていたら


「いやぁ、“タヌキ”に完全にボコられたボス、いや、元ボスだけどさ、アンタ達が喜び勇んでるのを見計らったか何かでガバッと起き上がってさ…ぷっくく…」


続きを早く!

オバチャンは思い出し笑いが収まってから続きを話す。


「すんげー必死な(ツラ)して、口半開きにして一目散に逃げてったわ!クッソ面白過ぎてヤバい!あの(ツラ)思い出すだけで暫く笑えるわ…クックックッ」


ツボったらしい。

笑いを堪えているのか、オバチャンは何かニヨニヨしてる。


そっか。

スキを突いてボスは逃げたのか。

まぁ、“タヌキ”に完膚無きまでに負けたし、シマから出ていかなければならないからなぁ。

体一貫から始めなきゃならないし、あちこちでやらかしてるから“タヌキ”よりもヤバい暮らしが待っているだろう。


まぁ、アタシは知らないけど。


そう言えば“ミスタ”とアミモトさんの部下の阿部さんが話してたけど、“タヌキ”はどうやら小浜地区の後ろ盾の世話になっていたらしい。

意外に近くにいたんだなと思ったけど、そのおかげで“ミスタ”と阿部さんはたまに“タヌキ”が姿を見せるのを知って声をかけたと。

阿部さん曰く「あの馬鹿(ボス)は本当にギリギリのラインに居たんだ。もう少しでオヤジ(アミモト)さんの怒りを買う所だったからな。」と怖い暴露をしてくれた。

組織の存続の為の、小浜地区組織からの仕掛けだったのか…。

情報を漏らさない為とは言え、あの苦労と心労の日々は中々に辛かったぞ?



片付けを終え、オバチャンが祝勝会で残ったおかずと炭火焼きにしたホッケを持たせてくれた。


明日から新しい組織が動き出す。


再び天辺に返り咲いた“タヌキ”が率いる組織は多分、前みたいに守られるのだろう。


明日はどんな日になるのかな。


オバチャンからのお土産を手に、アタシは二階に戻る。

胸の奥の、熱さはまだ


治まらない。

あと少しで終わります( •̀ㅁ•́;)

予想より長くなっております。

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