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海鳴の町綴り  作者: あんこ猫
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9

あれからまた少し過ぎ。


“ジュニア”は僅かずつ、ではあるが組織内の地位と経験を積み上げている。

最近は自分の力量以上の相手と喧嘩になると、逃げると言う事も出来るようになり、酷いケガや周りが仲裁する事が減った。力量が測れないと最悪、死ぬ事もあるのでこれは良い事である。


組織もそんな“ジュニア”の姿勢に感化されたのかはわからないが、若手の底上げが自然と成されるようになり、引き締まってきたように思うし、問題児(バカふたり)が居なくなったので問題が起きる件数がガタ減りしたのでアタシ的にも楽になり、自分の子と触れ合う時間が増えた。


この状態が長く続けば良いな、と誰しもが思うように。


組織は平穏かつ平常運転なのだが、この空気を良く思わないのか欲が出たのか。


最近、ボスがちょくちょく不在(いなく)なる。


あの厳つい風体である。

目撃情報が無いのが不思議である。

そしてたまにとは言え、トップ不在は組織としても不味い状態なのだ。


幸い、前回侵入者を寄越した小浜地区の組織は動きが無いのと監視をつけているので大丈夫だとは思うが胡座をかいているままではいられない。


どうしたものか、と思案する。


とりあえず、ナンバー2に繰り上がった“ミスタ”に連絡を取り、ボスの動きを探る事にしよう。


ーわかってるとは思うけど“ミスタ”、ボスの不在はあんまり良くないから、居場所と目的をさぐってくれる?


ーまたかよ!アイツ何してんだ。確かに不在は不味いから探ってはみるけどよ。何か騒ぎの種を増やされる前にやっておくわ。


幸い“ミスタ”もその点に関して同じ様に考えていたようで、あちこち走り回る若い衆を使いつつボスの動向を探る事に同意してくれた。


じわり、と暑くなる日が増え、何もない地面につむじ風が起きるように


アタシ等が知らなかっただけで、物事が起きる下地は既に出来上がっていた事を知る。


数日後、“ミスタ”から報告が上がってきた。


ー案外簡単だったわ。アイツ、向こうの女に手ぇ出してたぜ。お盛んなこった。


ボスは以前潰した、右のグループの女達に手を出しに行っていたようだ。

飽き性でワンマンなボスの事だ。

アタシ等組織の女達では飽き足らず、壊滅して取り残された女達に手を出しに行ったのだろう。

“ワカガシラ”が後見のような位置にいたようなグループなので、どんな女がいたのか興味が湧いたのだろうと推測がつく。

女達もとりあえずは反抗したようだが、“ミスタ”曰くあちこちケガをしていたらしいので、ボスから軽く制裁を受け、反抗心をバキバキに折られた様子。


ー“ワカガシラ”が向こうにしょっちゅう顔出してたから、どんなのがいるのか興味持ったんだろうね。どんなのがいたの?


ーあ〜、上玉ってのはいねぇな。肉付きだけは良いのがゴロゴロいたからこっちの女達と違って、ヤるだけならテキトーな扱いにするって感じだったわ。


組織の守るべき女達と、守らなくていい外の女達。


ボスの中に、アタシ等の明確な線引きがある事に今更ながら驚くが、女達の事以外にも組織の縄張り(シマ)をどうするのか内外に明示しないと無法地帯が生まれてしまう。

アミモトさんに睨まれる、新たな抗争なんてまっぴら御免だ。


力のある阿呆ほど厄介なものはない、とオバチャンが言ってたけど、本当にその通りだと思う。


盛大にため息を吐いていると、静かだった小浜地区の偵察から連絡が入った。


また侵入者がこちらへ入り込んできた、と。


前回程の頻繁さと数ではないが、向こうは実働部隊と偵察部隊とに役割が明確に分かれており、更には手厚い後ろ盾があるらしい。


後ろ盾についてはこちら側に軍配が上がるので心配は無いのだが、組織力が未知数なのが正直困る所だ。

そうでなくても、悟らせないような搦手ややり口が多い、としかわからない。


前に“ミスタ”が言っていた「騒ぎの種」のひとつなんだろうか…。


今まで衝突や抗争らしいものも無かったのに、今になって動きを見せるのも、全く意図が掴めない。

代替わりしたとの話も無いし、向こうは“長老”と呼ばれる存在がトップだったはず。


…何もわからない。

繋がらない。


ただ、黙ってはいられないので、情報を集めるしか出来ないのがもどかしい。


じっと、地面を見つめながら考え込むアタシの前で、ふたつのつむじ風がぶつかって、消えた。

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