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初投稿初執筆作品になります。
読みづらかったりなどする箇所があるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m
初投稿初作品となります。
どうぞよろしくお願い致します。
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止むこと無く寄せる波と潮風
この町に産まれてから子守唄のように波音は優しく、時に荒々しく叩きつけるような音を聞いて育ってきた。
それはまるで、この町に住むモノ達の性質や生き方の様で。
これは海鳴が絶えず聴こえる町の、とある話。
暖かな日差しと穏やかな波音、そして時折聞こえるカモメの鳴き声でゆるゆると目覚める。
ーあぁ、今日は気持ち良いな。昨日までずっと曇っていて潮気がキツかったからなぁ。
潮気が強いと洗濯物はおろか髪の毛や身体までベタつき、ゴワつく。海の間近に住むモノ達の宿命と言うべきか。潮気が強い時は身体どころか建物に至るまできっちり手入れしないとあっという間に痛む。海っぺりは憧れだけで住むと大変な事になる。
何となくまだ潮の香りがする寝床からモソモソと這い出、くあっと欠伸とひとつ。
そして両手を伸ばして身体をググッとのばす。
空を見上げると、太陽は思っていたより幾分高くなっていた。いつもの日課をこなすべく、軽く身支度を整えてから外へ。
―さて、見回りついでに朝ご飯でも食べに行こうかな。
今日は何が食べられるだろうかと空きっ腹をさすり、腹の底から深呼吸をひとつして路地をゆるりと歩き出す。
古きと新しき家々の間をあちこち眺めながら進む。食堂へ向かう道すがら、仲間達と挨拶を交わしちょっかいを軽く受け流し、話を聞いたりしながら朝からの町の動きをチェック。
とりあえずは現時点でトラブルや騒ぎの元は無いようで、見た感じも特に変わった所は無い。いつもの顔触れといつもの様子に少しだけ安堵の息を吐く。
アタシはこの浜町の一大勢力の面倒見を引き受けているから、これも大事な仕事の一環。
組織の面倒事を減らし、敵対勢力の情報などを集め、組織を円滑化が第一の役目なのだ。
男共は荒くれているが、女達はよくある揉め事なども少なく、この組織はなかなか居心地が良い。
子育ても女達はなるべく協力しながら行う、と言う他ではあまり無い体制がある。
冬に産まれたアタシの子も面倒を見てもらっている。
逆も然り。アタシが他の子の面倒を見る事だってある。
産まれたばかりの子は無理だけど、ある程度首が座って可動域が広がると預けられるようになるのは正直もの凄く助かる。これはある人が関係している。
ーオバチャン、いる?
「おー、“ビジン”おはよう!ご飯あるよ、食べてく?」
そう、オバチャンと呼ばれているこの人のお陰。
オバチャンはこの町のアミモトさんの娘で、私等組織のモノでもすんなり受け入れ、イヤな顔せずご飯を出してくれる。
食の不安が無いって事だけでもありがたいのに、オバチャンは住む所も提供してくれている。建物が古い事だけ我慢すれば安住できる。
アミモトさんはアタシ等と違い、昔々からこの町にいて漁師達をまとめている人だけど…この人はもの凄く怖いし強い。敵対しようものなら私等はいとも簡単に潰される。漁師一人ひとりが驚くような強さではあるが、アミモトさんはそれ以上。前に若い衆の一人が調子こいてアミモトさんにたてついて、一撃でぶっとばされて姿を見なくなった。
道理が通らない事は許さない。示しがつかないから。
私等の前では優しく、気さくなオバチャンもアミモトさんの子らしく鬼の様に強い。チラッと聞いたけど、木刀片手に男共を叩きのめしたとか。
アミモトさんは秩序を乱したり私等が面倒を起こさなければ、ココにいる事を認めてくれているからこその現状だ。
「今日はねぇ、鶏ハム丼だよ。ちょっと見てくれは悪いけど味は大丈夫!」
山のように盛り付けられた鶏ハム丼に思考はぶっつりと遮られ、瞬時に食欲に支配される。
ーうわぁ、めちゃくちゃ美味しそう!スープまでついてるし!オバチャン、いただきます。
かつかつかつかつ
煩く鳴きわめく腹の虫を黙らす勢いで鶏ハムタワーをもりもり食べる。
合間に新鮮な魚の出汁が効いたアラ汁。
あぁ、良い朝ご飯だなぁ。
お腹の底から温まって、身体が満たされてく感じ。
今、ここでご飯食べてる仲間もきっとそう思っているはず。
オバチャンはニコニコしながらアタシ等の食べてる様子を眺めてる。美味しいよ、オバチャン。
「今日はソイ釣りしてくるから、夜は期待してなよ?」
オバチャンはそんな嬉しい事を言う。
刺身かな?煮付けかな?
何にせよ、旬の魚だ。絶対美味しいに決まってる。そんな事聞いちゃったら今から期待しちゃうじゃない。
ーあぁ、楽しみだなぁー
目の醒めるような青空と暖かな太陽、こんな穏やかな天気みたいに今日は平和に過ごせますように。