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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
おしゃれへの目覚め
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3

午後7時。


公一は地下の駐車場に車を止めると、エレベーターに乗って最上階の自宅へと向かった。


最近は束の間の休息で、年末までの1ヶ月程は仕事があまりない。


普段は残業は当たり前、休日も接待やらで多忙だが、この期間だけは何かトラブルがない限り定時に帰宅する事ができる。


今日もいつも通り6時に仕事を終え、軽く部下達の様子を見てすんなり帰宅できた。


だが1つだけ気がかりな事があった。


「まさかまた、寝てるのかな」


今から帰ると連絡をしても、深雪から返事がないのだ。


基本的に深雪の返事はすぐにある。


ずっと家にいて、直ぐにスマホを触れる状態だからだろう。


しかし今日は、1時間前に送ったメッセージが未だ未読のままだ。


専業主婦は暇な時間が多いらしく、よくうたた寝をしてしまい、夕飯を作り損ねる事がある。


それ自体は大した事ではないのだが、夕飯がないのならば外食しなければならない。


この時間はどこも混んでいる為、夕飯がないならば早めに店に確認したい。


「まぁ、最悪出前でも良いか。久々に鰻でも食うかな」


寿司はこれからの年末で、嫌という程口にする羽目になる。


深雪は寝ているものだと決めつけ、エレベーターを降りて鍵を開けようとポケットをまさぐった時だった。


「お帰りなさい。早かったのね」


ドアが開き、下着姿の深雪が出迎えた。


一瞬、何で下着姿なんだと疑問を抱いたが、見慣れている格好より、見慣れない髪色に意思気が向いた。


「髪の毛、どうしたんだ?」


「今日美容室に行って染めてみたの。どう?似合うでしょう」


「あぁ。よく似合ってるよ」


これは確か、ハイライトだっただろうか。


雑誌ではよく見るが、生で見るのは初めてだ。


見慣れない色だが、よく似合っていると思った。


「なんで下着姿なんだ?」


見慣れない光景についての疑問が解消された為、この場には相応しくない格好を指摘する。


「帰りに服とかを買ってきたから、着てみてたの。あ、公一の好みも知りたいから見て!どれが似合うか……」


「わかったけど、そろそろ部屋に入れてくれないか?」


セールスじゃあるまいし、なぜ玄関で立ち話をしなければならないのだろうか。


苦笑いを浮かべると、深雪は「あっ、ごめんなさい」とリビングに戻った。


「それで今日は夕飯作れなかったから、デパ地下でお惣菜買ってきたの」


「えっ。なんだ、そうなのか」


すっかり鰻気分になっていたため、キッチンに置いてある惣菜を見てがっかりする。


チラッと見ただけだが、洋食の様だ。


「ごめんなさい。髪を染めたら、色々新しくしたくなっちゃって。お風呂入るなら、洗ってくるけれど」


「いや、シャワーで良いよ」


スーツの上着を受け取り、ハンガーにかける深雪はまだ下着姿だ。


下心よりも、寒くないのだろうかと心配になる。


ネクタイを緩めてソファに座る。


いつもならばビールを持ってきてくれるが、深雪はそそくさと寝室に引っ込んでしまった。



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