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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
ライバル
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1

先日、公一は中学の同窓会へ行った。


その時いつもの様に酔い潰れてしまい、深雪は電話を受け、駅まで迎えに行った。


それから数週間後。


いつもの様に公一を見送り、掃除をしようとリビングへと戻る。


レースのカーテンが閉められた窓を見ると、僅かに胸がざわついた。


もしかしたら、今日もあれがあるのだろうか。


ゆっくりと窓に近付き、カーテンを開ける。


今日は天気も良く、晴れた青空が広がっている。


だが、バルコニーに落ちている物を見て、眉を寄せた。


「今日もやっぱり」


それは黒いビニール袋だった。


見なくとも中身が何なのかわかる為、開封する事なく指でつまんで、外に置いたゴミ箱へ捨てる。


今日は収集日だったのに。


こんなものを、また数日家に置いておかなければならないなんて。


ここ最近、バルコニーにおかしな物を投げ込まれる事ようになっていた。


曜日が決まっているわけではないが、この1週間で4回以上この『ゴミ』を回収している。


初めは何か分からずに中身を見てしまい、鳥肌が立ってしまった。


恐らくエチケット袋を使用したのだろう。


安っぽいビニール袋の中に入っていたのは、雀の死骸だったのだ。


そしてその翌日は、生きたゴキブリが飛び出してきて、追い出すのに苦労した。


「一体どこの馬鹿かしら。大体、このマンションのセキュリティはどうなってるのよ」


せっかくならば庭付きの一軒家が良いと頼んだのだが、公一の祖父が彼の昔の素行の悪さと現代の物騒さを心配し、セキュリティがしっかりしたこのマンションの最上階フロアを丸ごと買い取ってくれた。


入り口には常にコンシェルジュがおり、出入り口にも警備員が配置されている。


にも関わらず、犯人は容易にそれを突破している。


日々続く嫌がらせも、怯えたりする事はないが、気持ちがいいものではない。


しかもここは地上40階立ての高級マンション。


その最上階のバルコニーに嫌がらせをするには、屋上に上らなければならない。


並大抵の覚悟では出来ないだろう。


という事は必然的に、深雪か公一のどちらかに相当な恨みを持っている人物がいるという事になる。


それだけでも気持ちが悪い。


「毎日毎日、本当に飽きないわね」


換気の為に窓を開けたまま、脱衣所に向かう。


せっかくの天気なので洗濯物でも干そうと、洗濯機を回しながら考えた。


恨みは、有りすぎて限定できない。


深雪だけでも、思い付くだけでざっと4~50人はいる。


公一は悪さはしても人望はそれなりにあった筈だから、20人くらいだろうか。


「警察に行くのも馬鹿らしい。なんとか、公一に気付かれないうちに対処しなきゃ」


どちらに対しての嫌がらせかは分からないし、もしかしたら両方へのものかもしれない。


どちらにしても、こんな下らない事で公一を困らせたくはなかったし、仮に警察に相談してもまともに対応してくれないだろう。


警察がアテにならないのは、深雪が一番よく知っている。


過去を消し去りたくても、他人の記憶まではどうにもできない。


きっと、この汚点は一生ついて回るのだろう。


「これが、因果応報というものなのかしら?せめて相手を特定しなきゃ……」


背にしていた洗濯機から、脱水が終わった合図が鳴る。


2人分の衣類をカゴに放り込み、バルコニーへと向かう。


するとタイミングよく、目の前に黒いゴミ袋が投下された。


犯人は屋上にいる。


急いで外に出てバルコニーに出て見上げる。


だが、そこには誰の姿もない。


これではまるでいたちごっこだ。


それに、こう何度も陰湿な嫌がらせが続くと、いい加減腹が立ってきた。


足元を見ると、慌てて放り投げたせいか中身がぶちまけられており、急いで飛び出したせいで素足で踏んでしまっていた。


今度は、恐らく豚か鶏の血と内蔵だ。


わざわざ精肉店で仕入れたのだろうか。


嫌がらせにバリエーションがあるのが逆に癪に障る。


「堂々と乗り込んで来なさいよっ」


屋上に向かい、声を張り上げる。が、当然返ってくる言葉はない。


早々に逃げ出したのだろう。


「あーもう……。また掃除しなきゃ」


見た目だけはホラー映画並にスプラッタな物体を素手で片付け、足と手を丹念に洗う。


コソコソと嫌がらせをする根性も気に食わないが、前回の雀のように、小動物を虐待するという行為も許せない。


生ゴミや汚物ならまだ我慢できるが、動物虐待は立派な犯罪だ。


「もう怒ったわよ。絶対に犯人を捕まえてやるわ」


窓を閉めてしっかりと施錠すると、取り敢えず洗濯物は室内に干す事にした。

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