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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
最初の友達
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「行ってきます。今日も多分、早く帰れると思うから」


「わかった。行ってらっしゃい」


いつもの様に公一を笑顔で見送ると、ドアが閉まると同時に溜め息を吐いた。


最近は『1日をどう過ごすか』よりも『1日をどう潰すか』を考える事が多くなっている。


「最近いつもこの事ばかり考えてる。このままだと鬱病にでもなっちゃいそうだわ」


もう一度溜め息を吐くと、何となくスマホを見る。


連絡先には公一や近藤家の義理の家族の他に、まだ連絡が取れる昔の仲間達の名前がいくつか登録されている。


だが、連絡することはできない。


もはや『仲間』ではなくなった友人達と話が合うわけもなく、遊ぶなんてこともできない。


ここに登録されている彼らは立派に更正しており、それぞれの家庭や生活を持っている。


「掃除は、もう少し後が良いわよね」


公一にあわせて寝起きしているため、時間はまだ朝の7時半だ。


防音性は問題ないマンションだが、早すぎるだろう。


リビングのソファに座り、コーヒーを飲みながら雑誌を読む。


その中に、婚活ならぬ、友活の記事を見つけ、目を止めた。


なんでも世の未婚既婚を含めた女性達の中では、同じ立場、同世代の友人がおらず苦労しているらしい。


未婚は既婚と話が合わず、仮に未婚同士であっても世代があわない。


そんな同性の友人不足に悩んでいる女性達を対象に、この特集は組まれているようだった。


記事によれば、友活に効果的なのは習い事らしい。


そういえば昨日、公一も似たようなことを言っていた。


趣味の場には、色々な女性が集まる為、その中で趣味も話も合う友人を作ろうというものだ。


「やっぱり、何か習い事でもしようかしら」


次のページには、たくさんの手頃なカルチャーセンターや、習い事教室の紹介がされている。


華道や茶道、英会話などポピュラーなものもあるが、最近は名前を聞いてもよくわからないものや、これが習い事になるのかと目を疑う様なものも多々ある。


その一つ一つを見ながら、心惹かれるものを探し求めていた。


「料理は役に立ちそうだけど面倒臭いし。英会話は今更よね。フラワーアレンジメントとか、アロマテラピーは微妙だし──なにこれ。ポールダンス?」


独り言を言いながら、ページをめくっていく。


もともと無趣味なせいか、これといって興味がわくものがない。


料理を習うと言えば公一は喜ぶかもしれないが、特段好きなわけではないので、友人ができる前に辞めてしまう可能性が高い。


ヨガは体を動かすし美容にも良さそうだが、それよりもこっちのボクシングの方が楽しそうだ。


公一は多分、反対しそうだが。


「やっぱり仕事よね。でも私にできる仕事なんて無いって言うし、オシャレはしたい……」


世の中がこんなに学歴社会だなんて思っていなかった。


当時は学校なんて場所は苦痛でしかなく、義務教育を終えてせいせいすると思っていた。


学力的にも金銭的にも、高校へいく選択肢はなかったのだ。

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