伝言板
「あーあ、乗り遅れちゃったよ。」
「お前が土産を買うのにもたもたしてるからだよ。」
「おい、次の電車くるまで2時間待ちだ。
こんな無人駅で2時間も待つなんて勘弁してくれよ。」
「時間を潰す場所もないしな。」
「もう日も暮れてしまうしな。どうする。」
「おい、見ろよ、昔懐かしい掲示板があるぞ。
昔はこれで待ち合わせなんか書いた。」
「今更、書き込みなんかしてないだろう。」
「そうでもないぞ。みんな暇つぶしに書き込んでいるぜ。」
「どれどれ。あっホントだ。」
「結構あるな。」
二人は書き込みを読んでいたが、その一つに目が止まった。
「おい、これ。」
そこには、こう書かれていた。
『あなたが来ないから私は一人で旅立ちます。
探さないでください。探したら不幸になります。私はこの駅の中にいます。』
「なんだこれ?駆け落ちしようとして相手が来なかったって奴か?」
「それよりもこの駅の中ってどういうことだ。」
「この書き込み、割と新しいぞ。」
「どうせ暇なんだ。探してみようか。」
「よせよ。どうせ冗談なんだから。」
そうは言ったものの、二人は好奇心が止まらず駅の中を探し始めた。
「何もないな。やっぱり冗談だな。」
「おい、待てよ、外にトイレがあったよな。」
二人は恐る恐る、トイレの方に向かった。
「あの書き方すると女性だから、女子トイレの方だな。」
二人は女子トイレの方を開けた。
次の瞬間であった。
「探さないでって言ったのに!」
低く、くぐもった女性の声が聞こえ、二人は女子トイレの中に消えていった。
それから数十分後、二人が乗るはずだった電車がやってきた。
車掌がホームに降りると荷物だけが置いてあった。
車掌は、またかという顔をして、掲示板に向かい、さっきの伝言を消し、女子トイレに向かった…