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ハイヒールの音が玄関先でカツカツと鳴り響き、金属が軋むような音と共に扉が開かれる。
「朝ごはんはテーブルの上、冷めないうちに食べてね。お昼は冷蔵庫にあるから。あ、夜は遅くなりそうだから、悪いけど何か買って食べてて。私もなるべく早く帰るようにはするから。──それじゃあ、お姉ちゃん行ってくるね」
誰かへと投げかけた言葉は、静寂に包まれた冷たい空にへと消え去る。黒いスーツ姿の彼女は、部屋の奥をしばらく見つめた後、扉をそっと閉める。
マンションに連なる暗がりの階段を降り、最寄りの駅へと向かう。早朝から陽は隠れ、曇天が天空を覆い、凍てつく空気が肌に張りつく。
いつもと変わらない道で、いつもと変わらない景色を見つめながら。
いつからあの扉を、重く感じてしまうのだろうかと。──夜宵 輝夜は、亡き弟の背を幻ながら歩いていた。
◇
九月十五日。二十五歳の誕生日を迎えたあの日、──弟が交通事故で亡くなった。
病院から弟が交通事故に遭ったと知らされた時、なにかの間違いだと思った。そんなことが、こんな日に限ってあるわけないと思った。
──そう思っているのに、心臓が締め付けられるような感覚があったのを覚えている。異常なまでに拍動し、煩わしく鳴り響いてきた心臓の音も、思い出す度に手の震えが止まらなくなる。
勤務している会社を飛び出し、病院へと駆け付けた時のこと。何より、そこで目に入ってきた光景は今でも鮮明に覚えている。
受付所の案内をもとに、小走りで向かった先。紅い『手術中』のランプの文字で廊下をほんのりと照らしだされた手術室の前で、蹲って座り込むセーラー服の少女と、それに寄り添うように隣で座っている女性教員の姿があった。
少女の隣に座っていた教員はこちらの存在にすぐ気付くと、深くお辞儀をすると静かに歩み寄ってくる。
「いつもお世話になっております。担任の倉田です。お忙しい中、お越し頂きありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。妹……夜々音の様子は」
「……相当なショックを受けていました。すぐにお兄さんのもとへ連れて行って欲しいと、かなり取り乱していました。今はやっと落ち着いたみたいなんですけど、病院へ着いてからはずっとあの状態でして」
「……そうですか。妹をここまで連れて来て頂いてありがとうございました。それと、すみませんが今日は早退させてください。後は私の方で面倒見ますので」
「分かりました。何かあれば、すぐにご連絡ください。可能な限り、お力添えします」
「痛み入ります。今日はありがとうございました。お気を付けて」
担任の倉田に別れの挨拶を終え、ようやく妹の傍に寄る。その小さな震えた肩に腕を回し、こちらに抱き寄せ、頭を優しく撫でる。
「きっと大丈夫よ。心配なのはお姉ちゃんも同じだけど、こういう時こそ前向きに信じてみようよ。⬛︎⬛︎⬛︎は無事だって」
「…………お兄ぃは、帰ってくるよね?」
「うん。必ず戻ってくる」
顔を上げ、今にも泣き崩れそうな目で問うてくる妹──夜宵 夜々音に、輝夜はそっと妹の手をとり、ぎゅっと手を繋いで断言する。夜々音はそれに応えるように、弱々しくも握り返す。
戻ってくる。
そして、穏やかで平凡な日常に戻れる。
⬛︎⬛︎⬛︎がいる毎日が、再び訪れてくれる。
──この時までは、そう思っていた。
「ここへ運ばれた時点で彼は、──既に呼吸がありませんでした。あらゆる策を講じ、蘇生を試みましたが……我々には彼を救うことができませんでした」
担当した外科医だろうか。こちらを真っ直ぐに見据えて、重たすぎる言葉を吐き出すように二人にへと告げる。
告げられた瞬間、輝夜は反射的に耳を塞いでしまった。
何か今、あまりにも耳障りで、不快な音が、耳の奥底で響いてしまったと。聴こえたことを後悔するように、必死に耳を塞ぐ。
だが、それも無駄であるとでも吐き捨てるように。──目の前の寝台に誰かが横たわっている。
今すぐにでも、この場から逃げ出したかった。この部屋で見えるもの、聴こえたものを全て忘れたかった。しかし、理解したくないと拒み続けるほどに、皮肉にも脳は沈着と理解を進めていく。
「……え?……夜々音?」
ふらふらと、体を揺らしながら夜々音は寝台のもとへ接近する。夜々音はその震えた手で、横たわる誰かにかけられた白い布を取ろうとしているのだ。
つまり、白い布の下に隠されたものが、明かされる。もし、目の前で開け放たれるものが、これから見えてしまうものが。⬛︎⬛︎⬛︎だったとしたら──
「嫌っ……!」
輝夜は無意識下に震えた夜々音の手を、咄嗟に掴んで離さなかった。決してならないと、力づくに妹の手をとる。
これには傍で見ていた医師も、僅かだが動揺し、視線が輝夜へと向けられる。視線に気付いた輝夜は瞬間的に我に返り、慌てて掴んだ手に込めた力を緩める。──だが、その手だけは頑なに離さない。
自分のやっていることが、常識の枠を逸脱し、狂気を孕んだ奇行であることは分かっている。だが、それを見てしまっては、終わってしまうような気がしてならないのである。目にしてはいけない何かがあると、本能が告げているのだ。
「……ねぇ。離してよ、お姉ちゃん」
「────」
視界は寝台へと向けたまま、夜々音は輝夜に手を離すようにと静かに求める。しかし、要求に対する輝夜の選んだ返答は沈黙。目を合わせないまま、俯いている。
「早く離してよ、お姉ちゃん。ほら、早く」
声が、震えていた。
毎日のように耳にしていた妹の声。溌剌として、どこかあどけなさの残る、愛くるしい声。聞こえる度に、愛着と癒しを感じさせるほどに、何度も耳にしてきた声。
瞳に、光明は無く。
煌めく海面のような瑠璃色の瞳。その眼差しは真っ直ぐで、なにひとつ濁りのない。曇りなき眼に映し出されるもの全て、輝いて見えていた。
それが今────
「早く離してくれないと、お医者さんにこの布の下にいる人が、お兄ぃじゃないってことを証明できないよ。お兄ぃは寂しがり屋さんだから、早く迎えに行ってあげなきゃ。だからね……この手を離して、お姉ちゃん」
──おぞましき狂気と嘆きによって支配されていた。
「────ひ」
彼女と視線が絡み合った刹那、気付けば掴んだ手は離れていた。恐怖に震えあがり、不意に輝夜の口から悲鳴じみた裏声が漏れ出した。
この時、輝夜は錯覚した。
こちらを振り向き、たった今話しかけてきた少女は一体誰なのだと。
摩耗した精神下の中、絶望の淵へと追い込まれた彼女はあまりの恐ろしさに、もはや別人だと錯覚するほどの形相へと変わり果てていた。
握られていた手は解かれ、縛りの消えた彼女はゆっくりと視界を寝台に移す。
恐怖の片鱗へと触れてしまった輝夜は、ただそれを眺めることしかできず。医師はその痛ましい光景には耐えられず、ひたすらに目を逸らす。
一歩、また一歩。夜々音は着々と寝台への距離を詰めていく。停滞することは無い。求めるままに、足を運ぶ。
今も尚、静寂を保つ寝台が眼前に来る。寝台を覆い隠すように垂れ下がる白い布の端には、青白い片足だけが覗かれている。
そして、伸ばされた手が白布へと辿り着き、掴み取る。
有り得ない誤ちを正すために。ここに事実を証明するために。
これも全ては、想い人のため。
尚も待ち焦がれている、彼との再会を夢見て。
使命感すらも錯覚しながら。狂い縋るように。
少女は真を目にする。
──待ち侘びた再会に、聴く者全ての心を抉るような悲痛の叫びがあがった。
◇
⬛︎⬛︎⬛︎が亡くなってから、約二ヶ月という時が過ぎた。
──そして、あの日を境に夜々音は学校へ行かなくなった。
文武両道。明窓浄机。進取果敢。
成績は優秀で、人当たりも良く。天真爛漫な彼女は、凛と咲く一輪の花のようだった。
だが、それも今では見る影もなかった。
心に空いた穴はあまりにも大きく。そこからあらゆるものが欠落していったかのように、彼女は虚無へと成り果てていた。眩しいほどの笑顔は霧散し、生命力さえ感じない。
最近に至っては、外出することすらままならず、取り乱すほどの拒絶反応を起こしていた。遂には姉の輝夜にさえ心を閉ざすまでに至り、言葉を交わすことも無くなった。
そう。──数奇にも彼女は、廃人の末路へと行き着いてしまったのだ。
その嘆かわしく痛ましい姿を、誰が望んだというのだろうか。誰が、こんなにも無惨に、残酷に。少女の心を壊させたのだ。
明るい未来が待っているはずだった。
笑顔で幸せな日々を送るはずだった。
彼女には絶望など無縁のはずだった。
普通の女の子として生きるはずだった。
ああ、誰が。
誰がこんなにも惨たらしいことを。
誰がこんなにも非道な所業を。
どうして。
どうして、どうして、どうして。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
私ヲ置イテイッテシマッタノ。
「────夢、か」
外は暗黒に満ちた真夜中。輝夜はひとり、夢幻から覚める。
職場から帰宅した輝夜は食事も摂らず、着替えもせずに、疲労からなる睡魔に襲われ、普段から食卓として利用しているベランダのダイニングテーブルに突っ伏して寝ていた。
「……なに考えてんだ、私」
先程まで見ていたであろう、夢の中での出来事が頭の中を過り、自らを嫌悪するように独り言を呟く。
それが本音か否か。分からずとも、浮かんでしまってきたことに、酷く後悔する。
ここ数ヶ月、働き詰めでの疲労だろうか。確かに、自分でも限界は薄々感じてはいたが、原因はもっと別にある。それこそ、単純明快なのは理解している。──ただ、今も尚彼女は。
「……あの子だけは。夜々音だけは」
テーブルに置かれた、今朝に作った手のつけられていない朝食を見つめ、たった一人になった家族を思い浮かべる。
なんとしても、夜々音だけは。
自分のように苦労して欲しくない。どうか幸せに生きて欲しい。今は無理だとしても、必ず絶望から救いだしてみせる。
強い意志のもとに、彼女は再び前を向く。弱った心を、奮起させる。自分が無理をしてでも、痛みを我慢してでも。妹の幸せのためならと、立ち上がる。
しばらくして。眠気と疲れにふらついた足取りで、輝夜は寝室へと向かう。
ふと、夜々音の部屋の扉が目に留まる。寝顔を見るだけでも、と静かに戸に指をかける。
しかしその時、扉の向こう側。微かに物音がするような気がした。現刻は一時四十四分。こんな時間まで起きているとでもいうのだろうか。そんな疑問を抱きつつ、輝夜は息を潜めて、音を殺すように扉を開く。
「────お姉ちゃ……」
「────夜々音っ!!」
お互いに目が合った瞬間、声が重なった。しかし、重なったのは僅かな時間。時として数えるのも曖昧のような、刹那に等しい時間。
その時の間に、輝夜は妹の狂行を目にして戦慄する。
「……その傷全部、自分でやったの」
⬛︎⬛︎⬛︎が亡くなったあの日も、妹の手を強く握り締めた。
己が恐怖から遠ざけるために。
目の前の真実から目を背けるために。
だが、今は違った。
それ以上の傷を生まないために。
妹の心を救うために。
強く。血に濡れた刃物が握られた夜々音の手を、輝夜は握り締めていた。
◇
「……とりあえず、傷はこれで全部ね」
そっと一息をついて、救急箱の蓋を閉める。──輝夜の視線の先。夜々音の服の袖が捲られた腕には、たくさんの絆創膏と包帯が貼られ、巻かれていた。
夜々音は数ヶ月にわたって、自傷行為を繰り返していた。
白く、細い夜々音の腕には、見るに堪えない無数の傷跡が深く刻み込まれていた。今日も、そのまた明くる日も。自らの腕に、その刃を突き立て、皮膚を切り裂き、血を流していた。
毎日のように、自分を傷つける。日に日に、刃は深くまで肉を断ち。それでも飽き足らず、傷跡の上にまた傷を作る。それを、ひたすらに繰り返していた。
どんな理由があって行為に至っていたのか、想像は出来たとしても。それは本人にしか分からない。
なんのために、なんて聞くのは野暮だろうが。
悩んでいることも、深く嘆いていることも十二分に理解している。
それでも輝夜は、これ以上妹の腕に傷跡が増えることが耐え切れなかった。
あまりにもその悲痛な姿が、目に焼き付いてしまって。
もう誰も、失いたくないと。
弱りきった心が、悲鳴をあげているのだ。
「えーと……最近はどうかな。その、体の具合とか」
夜々音の隣りに腰を下ろして、何やら気まづそうに声をかける輝夜。というのも、妹と口を交わすのも数ヶ月ぶりだった。何より、こうして面と向かい合っての会話なのだ、無理もないに等しかったと言えよう。
「ご飯も、最近は食べてないみたいだし。夜々音も今は成長期なんだから、ちゃんと食べるのよ?」
「……」
こちらの問いかけに沈黙を続ける夜々音。
元からスタイルが良かった夜々音だったが、今は全体的に細みが増して、痩せこけているように見える。衰弱した精神下の中、食べ物が喉を通らないのだろう。
「ねぇ、夜々音。夜々音はさ、辛くて、苦しくて、悲しくて。どうしても、耐え切れなくて。どうしようもなくて、しちゃったんだよ、ね?」
「──」
俯いたままの夜々音が。ようやく、輝夜の言葉に反応したかのように見えた。
悲しみに暮れた夜々音にとって、慰め程度の言葉しかかけられないとしても。
その悲しみを、分かち合うことはできる。
輝夜も同じくして、失うことの悲しみを知っている。傷の舐め合いでは無く。互いを支え合い、励まし合い。共に悲しみを乗り越えることで、生きる希望への糧とする。
それこそが。──亡くなった者への、せめてもの弔いであると信じて。
「二人で頑張っていこうよ。……あの子のためにも。二人で生きていこう、ね?」
この時までだった。
妹と、家族でいられたのは。
「……お兄ぃの、ため?もう、お兄ぃはいないのに、どこにもいないのに。私の生きる理由なんて、もうどこにも無くなったのに。……それなのに、お姉ちゃんは私に生きろって言うの!?」
見たことのない目つきで。
聴いたことのない声音で。
敵を睨み刺すような眼差しで。
全てを否定し、拒絶するような叫びをあげて。
目の前にはもう、輝夜の知っている夜々音はいない。
「……え? な、なんで……? どうして? ど、どうして、そんなこと、言うの……?」
ひどく怯え、悩乱を引き起こし。声が震え、輝夜の瞳が、悲しみに濡れる。
呼吸が覚束なくなり、喘ぐように酸素を肺へと送る。それでも、喉に蟠りがあるような感覚に襲われ、息を塞き止められる。
「私のことなんて、なんにも、なんにも! 分かってるようなふりして! 何が、何がお姉ちゃんよ!? そうやって自分の逃げ道を作るために、私たちを利用してたんでしょ!? ……本当の妹じゃないのに、血の繋がりもないのに。どうして、どうして私を見捨ててくれなかったの。こんなことになるんだったら、こんな思いをするんだったら。……あの時に死ねばよかったッ!」
激情と涙ながらに紡がれる言葉。
抉り削られた輝夜の情緒には目もくれず、無慈悲にも放たれる言の葉の刃。突きつけられた断絶に思考は凍結し、輝夜の心に亀裂が走る。
「ぁ、ああ。ああぁああァ……」
頭を抱え、乱すように髪を掻き回す。壊れた人形のように、嗚咽が口から止まらない。譫言のような、空っぽの声だけが漏れ出す。
嫌々と何もかもを拒絶するように、込み上げてくる気持ち悪さに耐えきれなくて、目に映るもの、聴こえるものが恐怖でたまらなくて、ひたすらに涙と悲鳴を零す。
思い出したくもないのに、遠ざけてしまいたいのに。夜々音が言い放った言葉が脳内で激しく反響する。
「いやぁっ、いやっいや、いや!!」
拒むように声を荒げ、響いた声を掻き消そうとしても、声が止むことは無く。耳を塞ぎ、目を瞑り、張り裂けるような叫びを上げる。それでも、声は一層に響くばかり。
「ああああぁああああああああぁぁ!!!!」
微塵すら残すことなく、跡形もなく輝夜の心はひび割れて、崩壊した。
──そんな、機能停止に陥った中で。
輝夜は無意識に、自らに問うていた。
『一体どこで、道を踏み間違えた?』
『今に至るまでの何が、間違っていた?』
『これまでの行動全てが、間違っていた?』
『自分を信じたことが、間違っていた?』
『幸せを望んだことが、間違いだった?』
『あの時に、死んでいればよかった?』
『あの人に、全てを委ねていればよかった?』
『あの時に、見捨てていればよかった?』
『あの夜に、逃げていればよかった?』
『私は、生まれてこなければよかった?』
答えなんて返ってくるはずが──
「──そんなの、私が知るはずないでしょう」
月明かりより這い出るは、影。
純黒の外套。艶然たる赤髪。冷徹な碧眼。
「恨むのであれば、貴女方の愚かな先祖を存分に恨んでくださいまし」
◇
「──おはようございます。担任の倉田です。夜宵さん、いらっしゃいませんか?」
チャイムを押し、夜宵家の扉の前に、ひとりの女性教師の姿があった。
彼女の呼びかけに応じる声はなく。もう一度呼び鈴のボタンへと、人差し指を伸ばそうとしたその時、
「……あら?」
扉から隙間が生じている。
違和感を抱きつつも、取っ手に手をかける。
鍵がかかっている感触はなく、金属音と共に扉は開く。
「夜宵さ……」
シャルル・ペロー執筆。
『青髭』から──
『地下室の小屋だけは、開けてはいけない』
あぁ! あぁ! なんということか!
我が秘密の部屋を覗いてしまったのか!
我が秘密を見てしまったというのか!
いと悲しきかな、我が妻。
して、なんと憐れで愚かなる我が妻。
──殺さねば、血に染まらねば。
なんとも童話を彷彿とさせる、最期だった。
「好奇心は猫をも殺す、とはまさにこのこと。さて、役目も終えたわけですし……早く城に帰りませんと」
伸び出た触手の先に滴る血を、艶やかな赤い舌でなぞるように啜る。
「……本当、因果なものですわね」
心臓を貫かれ、重なり合った姉妹に向かって吐き捨てるように呟き、女のような形をしたなにかは、三人の遺体を残して瞬く間に影へと姿を消した。
倉田 菜々子
年齢:25歳
・夜々音の通う中学校の教師であり、二年C組の担任。黒縁の丸メガネとミディアムボブの髪型が印象的な可愛らしい容姿をしている。教師となって三年が経ち、ようやく教師らしい落ち着いた態度を身に付けたことを自負し、やや誇らしげになっていたとか。誰よりも生徒思いな彼女は『なーこ先生』という愛称で親しまれ、尊敬されていた。




