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デマイズ・オブ・ワールド  作者: 雨兎
第二章 東奔北走
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第三十話 大いなる天使


「…………大天使、様?俺を、ですか?」


「ああ、今すぐとのことだそうだ。…………呼びつけた理由はわからんが」


「いや、そもそも大天使様って誰なんですか?名前だけ聞いた感じすごい人みたいな感じはしますけど……」


「では、私が説明してあげよう」


くるくると指で空中に円を描きながら、ドラシルは上機嫌に口を開いた。


「大天使はかつて、神の代行者として仕えた者たちのことだ。神の意思に背くもの全てに天裁を与えたと言われている。神無き後も邪悪なるもの達に裁きを下し我々天使を守り続ける、その名の通り大いなる天使ってところかな」




「そんな偉い人がどうして俺に…………」


「とりあえずレイヤは大天使様のところへ、聖天の塔に連れて行く。学園長にはそう伝えておいてくれ」


「はいはい、レイヤを頼むよ。それじゃあヨーコと私は本でも読んで待ってようか?」


「はい!まだまだ知らないことばかりなのでお勉強したいです!」


「ヨーコは偉いな。じゃあ兄ちゃんは行ってくるから、いい子で待っててくれな」


「いい子で待ってますから、早く帰ってきてくださいね、お兄ちゃん!」


ドラシルとヨーコに別れを告げ、レイヤとラクアは天馬車に乗り大天使の元へと向かった。



天馬車に乗ってからしばらくして、塔らしき建物が見えてきた。巨塔と呼ぶには相応しく、雲を突き抜け、天高くそびえ立っている。すると天馬車は勢いよく上昇し、雲の海へと飛び込んだ。白色が視界を覆い隠す中、上空へと上がるにつれ眩しい光が視界に刺さる。眩しさのあまり、レイヤは瞼を閉じる。そして、白色の景色は、透き通る青色へと変わる。目を開くとそこには、青空と共に塔の頂上が照り映えるが如く垣間見えていた。








「…………もしかしてラクア先生も、緊張してたりしますか」


「…………まあな」



塔の頂上へと着いたレイヤとラクアは、頂上にある神殿の中を歩き進んでいた。そんな中、ラクアの顔の強張り方が尋常ではなかった。ずっしりとした重い空気を漂わせ、いつもの凛々しい瞳には光が宿っていなかった。



「私も大天使様に会うのはこれが初めてでな。どうも緊張を隠しきれずにいるんだ。こんな姿を見せてしまっては、教師としてとても情けない……」


「そ、そんなことないですって。俺だって緊張してますし。だから、元気だしてくださいよ」


今日のラクアは心做しか、極端に弱りきっている。いつも見る冷静沈着なラクアとは一変、今は見る影もない。


そうして歩みを進ませているといつの間にか大きな扉の前へと辿り着いていた。緊張に手が汗で滲む。深く息を吸い息を整える。と、同時に扉が勝手に音を立てながら開かれ、────そこには四人の少女が玉座に腰掛けていた。






「────よくぞおいでになりました。ラクア・ロイアス、ヤヨイ・レイヤ。私たちは、あなた方勇者を歓迎しましょう」


慈悲深き眼差しを向け、こちらを見据える金髪の少女は柔らかな声でレイヤたちに歓迎の言葉を贈る。きめ細やかに輝きを放つ金髪を後ろでポニーテールに纏め、翡翠色の瞳が美しい美少女だ。白が印象の衣装に身を包んでおり、レイヤとは同年代にも見える。



「申し遅れました。私の名はミカエル。大天使長を務めさせて頂いております。どうかお見知りおきを」


立ち上がりミカエルと名乗った少女はおしとやかにお辞儀すると再び玉座にへと腰掛けた。それを隣に座る赤髪の少女が横目で見届けると、すっと起立し、にこやかで溌剌とした表情を輝かせる。


「それじゃあ次私ね!私の名前はウリエル。気軽にウリエルちゃんって呼んでくれてもいいぞー!これからは、どうぞよろしくぅ!」


明るい赤色の髪をサイドテールにし、動きやすさを重視した軽装。それもあってか胸部や足元は他の三人と比べるとやや露出度が高いようにも思えた。そして、隣でおずおずとウリエルを伺う青髪の少女の方を見る。青を基調とする上着を羽織り、少しばかり短めのスカートを履いている。なにやら慌てふためていており、その紺色の瞳は涙で潤っていた。そのままゆっくりと立ち上がると、少女は胸元に手を当て震える口元を開く。



「…………わ、わ、私の、な、名前は、ラファエルって、言います。だ、大天使の、ひとりです。え、えっーと、その、よ、よろしく、お願いします」



必死に震えた声を絞り出し、ラファエルは涙目で自己紹介を終える。それからよろよろと腰を下ろすと、恥ずかしそうに両手で顔を覆い隠した。それを見たウリエルが、やれやれとラファエルの頭を撫でていた。


そんな三人をよそに、一人眠りに就いている少女がひとり。濃い葉緑色の長髪に、頭には大きな黒いリボンが飾られている。

黒と緑のゴスロリなドレスを着飾った少女は、気持ち良さそうに寝息をたてていた。



「…………えーと、この子はガブリエル。普段からよく寝る子でして、今は寝ていて分からないと思いますが、とってもいい子なんですよ。この子のこともどうかお見知りおきくださいね」




寝ている本人に代わり、ミカエルがガブリエルの自己紹介を終える。こうして、改めて四人の大天使を前にしたレイヤだったが、先程の緊張は無く、どこか複雑な感情を持って抱いていた。



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