第十八話 久遠の時
「それは、どういう…………!?」
「私は時を司る神よ?時に関することならどうってことないわ。時を止めることも、時を戻すことも、時を飛ばすことも、時を加速させることも、時を消すこともね」
レイヤはひどい困惑にへと襲われた。目の前にいるこの少女こそが神なのかと。それはあまりにも信じられないことであった。その容姿は申し分ないだろう、しかしそれを除けばただの少女にしか見えなかった。
「………それじゃあ俺を助けたのはどういう風の吹き回しだ。お互いここが初対面のはず、企みがあってのことでしか考えられないんだが」
警戒するのも無理はない、先程不運にも殺された後なのだから。命を救われたことにもまだ不信を抱いている。絶対に死ねない、そうレイヤの心は全力で叫んでいた。
「そうね。疑われてもしょうがないわよね、うん」
クオンは諦めがついたかのような表情を浮かべると彼女は真っ直ぐにレイヤの瞳を見つめた。恥じらいに頬を染めながらも真剣な眼差しをこちらに向ける。
──────そしてそれを聞いた時には等に警戒など崩れ去っていた。
「───私はあなたを救いたかった。一人の神としてあなたという人間を導いてあげたかった」
クオンは恐怖に怯えるかのように目を瞑る。その姿はどこか大切な誰かの、いつかの日々の思い出のようで。今ここですべきことは既に知っている。
─────そう、あの時妹にしてあげた時のように。
「………………………え?」
「どうしてそういうこと早く言わないかな」
頭を優しく撫でられる感触。目を開けるとレイヤの優しい眼差しが目に入った。
「……黙ってたこと、怒ってないの?」
「黙ってたっていうか言うタイミングがなかっただけじゃない?それにそんな事で怒らねぇよ俺は」
クオンは不安気にレイヤを見つめる。レイヤはクオンの瞳を見て悟った。この目は過去に縛られ怯える者の目だと。クオンの過去に何があったのかは分からない。それでも尚、クオンはレイヤを救うべく行動してくれたのだ。感謝を、伝えねばなるまい。
「………でもなんで俺を助けてくれたんだ?俺は君のことを知らないし、君も俺のことを知らないはずなのに」
「それはね、あなたの声が聞こえたからよ」
「俺の、声…………………?」
「うん、。それもあなたの肉声じゃなくて、魂の声ね。魂ってのはその人の残留した意思みたいなものなの。その魂はどの種族であろうと冥界へと向かうの。冥界って言うのは死後どの世界に向かうかを決める場所のことでレイヤの世界で言う地獄かしら。まあ、それはさておきあなたの魂も本来冥界へ向かうはずなんだけどあなたの魂はこの世界に深い悲しみと後悔を残し定着しようと懸命に声を上げて足掻いていたわ。まだ駄目なんだってね。そしてレイヤのこれまで過ごした時間も見させて貰ったわ。……ええ、だから私はあなたを救いたかったの。あなたが独りで苦しむ必要なんてない、私がレイヤの力になるわ!」
レイヤの両手を握り締めクオンは言い切った。クオンの助力、即ち神との協力を結ぶことになる。これまで以上に頼りになる存在になるであろう。
「………俺に力を貸して欲しい」
「ええ、喜んで」
─────────契約は、成立した。




