憐れ、皮衣
方々に、頭を下げても足りなくて。
片時も、忘れるなかれ、その言葉。
余は対岸の火柱の、なおも轟々と燃える様の
いくらの思いの丈さえも、わが身燃えるが如くに痛み、
終には灰がちになったとて、今日の思いも覚えずに。
方々に、頭を打てども脳に、響かず。
片時も、覚える事もなく流れ
薙がれ流れて凪がれ、和がれる。
如何ほどの思いの丈よりも、わが座を保つがなお勝る。
終には座さえも燃え移り、今日の思いも灰がちに。
擦れば火鼠の皮衣も、大火過ぎれば白み萎びて、
対岸の火を求めては、この皮衣を河川に浸し、
穏やかに流れる川の深みに、潜り、潜りて、対岸へ
憐れ皮衣、燃えるより、先に、爛れて終い、お終い。