28 おっきなおっぱいは万人を魅了する
「獅子王爆砕拳!
覇道十二連脚ぅ!
獣王痛恨撃ぃぃい!」
獅子王ライオネルの連続攻撃が、防戦一方のライラを襲う。
「ぐぁはははは!
なんと歯ごたえのないやつよ。
なにが氷帝か。
王国勇者ライラ、恐るるに足らず!」
「きゃあっ。
きゃあ、きゃあ、きゃぁん!
んー、こほん。
お助けぇー」
「お、おお……。
ライオネルの猛攻が、ライラを圧倒しておる」
興奮したアラゴンが、テラスの手すりから身を乗り出した。
ライラに狙われて、先ほどまで生きた心地のしていなかったのだろう。
老人は、ほっと安堵の息を吐く。
「くくく……。
格の違いを思い知ったか、ライラ!
勇者などとおだて上げられたところで、所詮貴様は脆弱なヒューマンの女。
獅子の獣人たる我からすれば、野原を逃げ惑う角うさぎとさほどの違いも感じられぬわ!
そぉれ。
百獣王咆哮砲!」
「あー、れー」
「いけぇ!
そこじゃ、ライオネル。
よいぞ!
圧倒的ではないか。
カカカッ。
見事勇者ライラを倒した暁には、相応の褒美をくれてやろう!」
「ははは。
そう、焦りなさるなアラゴン老。
御身に触りますぞ。
獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす。
そこに驕りや油断は、あってはならぬもの。
……我には見えております。
このライラなる女。
先ほどから常に、わずかばかり攻撃の急所をはずし、致命傷をさけておるのです」
「そ、そうなのか?」
「ええ。
おそらくはそうして、起死回生の一撃を狙っているのでしょう。
だが御老体、安心召されよ。
我ほどの戦士に、そのような小賢しい真似は通じませぬ!」
「おお!
貴様、そんなに頼もしかったとは!
たしかにライラも怯えておるわっ」
アラゴンが嗜虐的な表情でライラを見下ろす。
棒立ちで退屈そうにしていた彼女は、「へ?」っと不思議そうな顔で老人を見返した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
街外れの闘技場関連施設。
見世物用に捉えたモンスターを閉じ込めておくためのその施設のまえで、俺は息を殺して身を潜めていた。
「警備がふたりか……。
よし」
とあるアイテムを取り出した。
これは昼間のデートで、ライラさんが俺にプレゼントと称して買い与えてくれたものである。
その名も『迷彩マント』。
なんでもこのマントを被ると、周囲の景色と自分を同調させ、姿を消すことができるらしい。
値段は目玉が飛び出るほど高かったようだが、その分、便利な道具ではある。
「しかし、こんなアイテムを事前に買ってくれるなんて、ライラさんはとっくにいまの状況を見越していたのかもしれないなぁ……」
さすがはライラさんである。
俺は深謀遠慮な彼女の行動に、いたく感服した。
「さて……。
のんびりとはしていられない。
潜入してマリエラを助けにいかないと……」
いま、ライラさんが陽動に動いてくれている。
彼女は最強の勇者だが、万が一ということもあり得る。
心配だ。
時間はあまり掛けないほうがいいだろう。
迷彩マントを羽織って見張りの目をかいくぐる。
俺は建物に潜入することに成功した。
◇
息を潜めながら施設内を歩く。
忍び込んですぐ、内部の警備員に眠り草を噛ませて眠らせた。
これで一安心である。
「しかし、すごいな……」
石造りの建屋には大小様々な檻があって、たくさんのモンスターが閉じ込められていた。
血濡れ熊からレッサードラゴン、果ては雷獣鵺にいたるまで。
さながら魔獣の動物園だ。
だがどのモンスターも、特に騒ぎ出す様子はない。
きっと鎮静剤でも打たれているのだろう。
ほっと胸を撫で下ろしながらずんずんと進んでいくと、やがて一際頑丈そうな檻が遠くに見えてきた。
ほかとは隔離された場所だ。
そこに囚われているマリエラの姿が目に映る。
「いたっ。
マリエラだ!
いま助ける!」
俺は気を失っているらしい彼女のもとへと、駆け出した。
だがそのとき――
「グルルルゥ……」
のしのしと、重たい足音が聞こえてきた。
「グルルルルゥ!
ガゥゥウウ!
ガウ、ガウウウッ!」
死角から巨大な何かが飛び出してきた。
いきなり現れたそれは、一直線に俺に向かって襲い掛かってくる。
「な、なんだ⁉︎
うわっ。
って、ま、まさか……。
ケルベロス⁉︎」
突如として姿を見せた化け物。
それは3つの首を持つ地獄の番犬、ケルベロスだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ライオネルの拳が唸りをあげて、ライラを打ち据えた。
だが彼女の体幹はぴくりとも揺らがない。
「ふん……。
しぶとさだけは勇者の名に恥じぬではないか!
ならば我が奥義を見せてくれよう。
くらぇえい!
オリジナル属性技!『獅子王紅蓮天翔陣』ッ!」
地面から吹き上がった紅蓮の炎が、渦を巻き、ライラを飲み込んだ。
轟々と燃え盛っている。
「あー、れー!
やぁらぁ、れぇたー」
ついにライラがばたりと倒れた。
「くくく……。
ついに膝を屈しおったか。
他愛もない」
調子に乗り始めたライオネルが、倒れたライラを見下ろし、舌舐めずりをした。
下心丸出しのいやらしい顔で、熟れた彼女の肢体を隅々まで眺めだす。
やがて彼はライラの豊満な胸に目を止めた。
「ま、まったくけしからん乳をしおって……。
そ、そうだ。
我に楯突いた報いを与えてやらねばなぁ。
よ、よし!
罰を与える……!
与えるぞ!
まずはその大きく膨らんだ乳房を、衆目に晒してやろう!」
「ほほぅ。
よいぞライオネル!
儂が許す。
おほっ。
熟れた女勇者を、裸にひん剥いてやるがよい!」
スケベ爺いの後押しを受けた獅子王が、ライラの衣服を剥ぎ取ろうと、手を伸ばす。
途端、強烈な殺気が彼を襲った。
伸ばした手がぴたりと止まる。
「……わきまえなさい。
私のおっぱいは、ユウくんただひとりのもの。
あなたたちごときの目に、晒すわけがないでしょう。
あまり怒らせないで。
おいたが過ぎると、いますぐ殺すわよ?」
ライラがひと睨みする。
冷たい氷柱に脊髄を貫かれたかのように、ライオネルはぴんと背筋をのばした。
「あなたはユウくんが駆けつけてくるまで、私と一緒に道化になって踊っていればいいの。
分不相応な真似は控えなさい。
わかったかしら?」
「な、な、な、なんだと⁉︎
貴様!
弱者の分際で、この獅子王ライオネルを愚弄する気か!
ぐぬぬ……。
少し服を剥ぐだけで許してやろうと思ったが、もう勘弁ならん。
貴様は存分に痛めつけてから、くびり殺してくれる!」
顔を真っ赤にしたライオネルが、倒れた彼女を思い切り蹴飛ばした。
「そう、そう。
それでいいの。
やれば出来るじゃない」
良く出来ましたと微笑みながら、ライラが吹き飛んでいく。
「……ん、んー。
こほん。
あーん!
きゃあ、きゃあ、きゃあー!」
母の三文芝居は続く――




