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3話

普通の生活をしていれば授業を終えて帰って暖かい夕食、入浴、そして就寝となる。だいたい普通の生活といったら塾行ったりとか友達と寄り道するとかというものだが。俺の場合帰宅の選択肢一択しかないんだけど……。



まあ、全国的に見れば俺みたいな人もいると思うが、一人暮らしをしているのだ。朝は洗濯をし弁当を作ったり、夜は夕食、風呂洗い、明日の準備もある。他にもたくさんやることはあるのだが……。愚痴をこぼしても仕方ない。俺と同じ気持ちの奴はたくさんいるのだから。



と言いつつも気分は憂鬱だ。わざわざ住んでいるアパートまで帰ってきて着替えて夕食の準備をしようとしたところで気づいた。冷蔵庫に何も入っていないことに。昨日、料理を作りすぎて冷蔵庫の中身全て使い切ったことを忘れていた。



 朝、学校来る前は覚えていたんだよ。でも授業受けて一日過ぎる頃にはすっかり忘れていた。そう人間誰しもやってしまうもの、ど忘れだ。そして仕方ないので近くのスーパーまで食材を買いにまた外に外出したわけだ。



帰ってきてすぐ気づいたのでまだあいにく空は明るい。帰ってきたが早かったらしく下校中の学生もちらほらと見える。俺は思うのだ。人が何しようが勝手だが学生の仕事は勉強することだと思う。下校中無駄に寄り道するぐらいだったら早く帰って勉強すればいいのにと。

 勉強好きな人なんてほんの一握りだと俺は思っている。俺自身も嫌いだし勉強好きな人がたくさんいるんだったら全ての学生が一流の大学に言っているはずだから。それはそれで気持ち悪いが……。



 そんなこと考えている最中でも足は止まらない。スーパーマーケットまでの道をただひたすら進む。



 この辺の土地は路地裏とか建物と建物の間とか結構あるし、公園だってある。だが、ここら辺は人が通るのが少ない。

 何故か、この時間帯まだ明るいが自分が住んでいる周辺は家の影ですぐ暗くなるのだ。そして暗くなるのが早いのにも関わらず街頭が少ない。なので俺が歩いている道は下校中の学生とかすれ違うことはすれ違うが寄り道するところもないしそそくさと帰っていく。いい判断だろう。学力向上間違いなしだ。



 人がなかなか通らない道なのでスーパーマーケットに向かうにつれて時間は過ぎていき、一人別の世界に来てしまったと思うぐらい静かになっていく。



 

 男性でもなかなかこの静かな道を通るのは勇気がいるなぁ―と思い通り慣れている道ではあるが、不気味に思うこともあるので、紛らわせるように夕飯何にしようかなと考えて公園の近くに差し掛かった時だった。




――――誰かが押し倒されているように見えた。


 

 確かに見えた気がした。暗くて見ずらかったが。帰ってきたのが早かったのは確かだが流石に十月の初めだ。日が落ちるのが早い。ほとんど真っ暗だ。尚且つ街頭も少ないところなのでなおさらだ。



 公園近くまで近づいて中の様子を確認してみる。すると自分の通っている学校の奴が明らかに襲われているではないか。同じ学校の奴に。ここらの公園はこういったことが多いと聞く。誰かに襲われたとか不審者が出たとか。逆もまた然りで恋人達にとっても都合がいい場所でもあるのだ。なので平日の公園のましてや夕方から夜にかけては公園に近づくことはタブ―だ。



 なのでまず初めに恋人同士だと推測を立てたが明らかに違うだろう。襲い掛かっている方が相手の口元を抑えて無理やり制服を脱がせようとしていたのが暗さに目が慣れてきて見えた。さすがに、距離があるので顔までは見えないが。 


 


 誰か助けてくれるだろうと俺なんか行ったところで何もできないだろうと思っていた。他人に任せてこの場から去ろうとした。普通なら。



――――人を信じるな どうせ他人は他人助けてくれる人なんていない



 俺は知っている。他人は他人で助けてくれないことを。痛いほど知っている。人を信じても裏切られることぐらい。



 この場で俺が去り誰かが押し倒されている人を助けてくれる保障がどこにある。ない方が当然だ。俺は他人を信じない。そして押し倒されていて助けを求める人を見捨てるようなそんな薄情な人間でも俺はない。



 なので自分で出来ることをする。本当は力で解決出来ればいいが腕っぷしは強くないので姑息な手を使うことにする。大きく息を吸って久しぶりに大声を上げる。




「公園で女の人押し倒している人がいるー!?お回りさーーーーーーーん!!」




 俺の声が静かな住宅街に木霊(こだま)する。どこまでも響き渡る感じだ。俺の声に気付いたのか近所の人が様子を窓を開けて見ようとしたり、家から電話をもって出てきたりとするのと同時に襲っている同じ学校の奴も慌てた様子で逃げていった。ひとまず危機は去った様子だ。多少、恥ずかしいものはあるが幸い人が周りにいなかったからそこまでではなかった。人がいたらもっと違う手段がとれたんだけど……。




 今の声で近所の人が集まり始めてきた。ここまでやればさすがに無視できないだろうと思い、人が集まり始めて警察が来る音を聞いてやっとのことで公園から離れた。本来の用事である買い物に行くことにする。公園から離れてスーパーへと足を進めた。




 この時押し倒されていた女性と押し倒していた男性は暗くて両者ともに顔は見えていなかったが自分には関係ないだろうと思っていた。




 だってそうだろう。告白されるような容姿の人物に、告白かなんかが失敗して自分のものになれみたいな無理やり関係を迫る変態だぞ。関係を持つなんてこっちから願い下げだ。



 けれどこの時は知る由もなかった。

 



 この時助けた女の子が自分にとっての大切な人に。そしてこの時逃がした変態まがいの男がのちに厄介な人物と知ることになろうとは……。



 そして俺の生活が平穏ではなくなっていく序章にすぎなかったことを少しずつ知っていくことになる。

 

 ましてや忘れたかった過去に関係してくるなんて




**************************************************************************




「藤堂 桃花さん。好きです。俺と付き合ってください」




告白されるのはもう何回になるだろうか?今まで数えきれないほど告白を受けてきた。私は自分で言うのもなんだが容姿が優れている。



別に容姿が優れているからといって異性に好かれたい訳ではない。それに私が好きな人はちゃんといる。私を助けてくれた大好きな人が



その人から告白されるのを夢見ていたがもう高校2年も半分終わり3年に入ると受験で忙しくなってくる。私から動くことにしようと決心したところだった。




朝、登校していつものように下駄箱を開けるとラブレターらしきものが入っていた。またかと。

いちいち話題にされても迷惑なので授業中に見ることにする。差出人は2-5で有名な望月 晴斗(もちづき はると)からだった。



入学してから私と同じぐらい女子に告白され続けている生徒でモデルのような容姿で成績も常に上位まさに女子からの憧れの的だ。まるで男子の私のような存在だ。



――――ただ以外にもこの人物から告白されたことはなかった。




ただ告白を受けないように徹底的に調べてはいたが、なかなか告白を断る口実が見つからなかった。私が告白してきた相手を徹底的に調べて心を折るぐらいその人のことを指摘することは自分の安全の為でもあった。



入学してすぐのこと告白を断ったときに断り方が甘かったらしく何回もしつこく告白されてスト-カ-まがいの行為を受けたことがあった。




そこで考え付いたのが告白の相手を自分の友達や先輩後輩に聞いたり、噂を聞いたりしていき徹底的に振るというものだ。




おかげで一回告白した相手からは迫られることはなくなったしスト-カ-もなくなって安心したものだ。




ちなみに告白されそうな相手の情報はあらかじめ調べてある。だが今回の相手はなかなか欠点らしきものがなくどう断ろうと困っていた。




放課後になり手紙の内容には○○公園に来てほしいとのことだったので何とかなるだろうと思い向かったのだ。




この時点で気づくべきだった。その公園は近くの公園の中で街灯の数が少なく早く暗くなることに。そしてなかなか人が来ない場所であることに。




「―――ごめんなさい。私には好きな人がいます」




いつもならこれでは食い下がらない人が多いので徹底的に調べ上げたその人物の行動や性格、直してほしいところをこと細かく伝えて振るのだが、たまにそんなことしないでもすんなりと受け入れてくれる人がいる。




詰め寄ったりされることもなく安心していた時だった。




「分かっていたよ。振られることは」




その言葉を聞いたとき言い表せないような寒気が身体を襲った。




この人は今までの人とは違うと。




そんなときだった。




相手が動いたのは。




一瞬だった。




押し倒されたのは。




「そりゃあ、今まで数数えきれないほど告白を断ってきた相手が簡単に手に入るとは思ってね-よ。でもさ、時には力づくで襲ったっていいとは思わないか?我慢してたんだよ……。ずっと、ずっと!!待ってたんだよ!!油断するときを!!俺なしじゃいられない身体にしてやるよ!!」




そうやって豹変した男子の顔がすぐ近くにあった。今までの雰囲気とはまるで違う。危険を感じた。どうにかして逃げなければ





声を出そうとした。『助けて』と





口元を押さえつけられて喋れない。





必死に足掻こうとした。





だけど所詮は女子と男子、力が違いすぎる。





段々と男の手が恐怖と共に私の制服に迫ってくる。




こんなことなら私が本当に好きな人に告白しておけばよかったのになと思った。




この場所に来るときにもっと用心して来るべきだったと後悔した。




もう駄目だなと目を閉じて覚悟したときだった。






「公園で女の人押し倒している人がいるー!?お回りさーーーーーーーん!!」







この場の雰囲気をぶち壊すような希望の声が聞こえた。





怖かった私の心を守ってくれるような声。





私が大好きな人の声。






男の手が私の制服にとうとう届くことはなかった。






声を聞いた途端、私の口を押さえていた手が離れ、身体を押さえつけられる感覚がなくなったので目を開けてみると男の姿はなかった。



周りを見渡してみると走って逃げていく男の姿があった。叫んだ声を聞いて我に返ったのだろう。だがラブレターはあるし、名前も知っている。私を押さえたときの指紋が制服についているだろう。



叫び声で近所の人が集まってきた。誰かが警察を呼んでくれたのだろう。ホッとした。




私を助けてくれた人はもう近くにはいないようだった。





私は声だけでも分かった






助けてくれた人が







私をかつて救ってくれた大好きな人のことを







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