遊闘1 サンダーボルトでデッキのモンスター破壊するな
春夏秋冬夏服うざい、でもありがとうございますやで
そう遠くない近未来、OOSAKAシティ郊外のゴージャス☆アイリン地区。
その一画で、おおよそ外出には似合わないトレーナー姿の男がうろついていた。
特段、そういう恰好自体はこの地区では珍しいものではない。
ここはゴージャスとついてはいるが掃き溜めの街、つまりスラム街だからだ。
ゴージャスなのはせいぜい治安を守っているつもりのセキュリティの、要塞のような署くらいである。
ここに行きつく者達は、金など持ち合わせていない事が多い。
そして無銭飲食やら窃盗などでセキュリティを名乗る暴君に私刑を食らい
留置もなしにボロボロのまま外に放り出されるのだ。
春や秋ならまだ程よい気温が体を癒してくれるのだろう。
だが炎天下や寒空の下に、リンチを食らって死に体のまま投げ出され放置されるのは致命的である。
こんな時代にこのスラム、救助も施しもなくそのまま朽ちてゆくのが大半の根無し草なのだろう。
対抗しようにもセキュリティの人間は栄養のあるものを食えて腕っぷしも達者だ。
手に職をつけて糧を得るのが一番いいのだが所詮はスラム、稼ぎや食料も知れているし
いい恰好をしていれば気まぐれな治安暴君によって身包みはがされる危険もある。
この街ではまず、金があるならば札、つまりカードを調達する事が暗に推奨されている。
モンスター、魔法、罠といった種類のものを組み合わせて相手を徹底的に殴り倒すゲームだ。
そのカード40枚以上を束にしたものを持ち歩けば、治安暴君に襲われても撃退できる可能性がある。
このOOSAKAシティでは、暴力よりその紙切れによる戦いが優先されるようになった。いつからか。
無論、セキュリティの人間は持っているカードの質も基本的にはスラムで手に入るものとは段違いだ。
運よくカードの束(以降デッキと呼ぶ)を持っていても、負けてしまえば何にもならない。
下手にレアなカードなど持ち合わせていれば、献上させられた上に徹底的に意識改革という名の暴力を受けるハメになる。
なので少しでも自分のカードの質を良くしようと、他の住人を襲うものすらいる。
ここは実に地獄であった。
さて冒頭のトレーナー男の様子に戻ろう。
他の街より遥かに安い自販機でコーヒーを買い、ブラックでもないのにむせて吐き出して残りは捨てた。
「警告、0点・・・」と誰に言うわけでもなくボソッと呟く。
股間を膨張させながら奇妙なステップを踏んで歩いている。
挙動からしてまずおかしいが、更に奇妙なのは男の顔である。
サングラスをつけているが、ズレを直さず気にしていないようだ。
まるでハエのようである。
さて男は腹が減ったのか、やはり他の街より格安な何の肉が使われているか不明の串カツ屋に寄った。
そこで男は店主らしき人物と適当に世間話をした。
どこから来たのかと聞かれ住んでいた地名を素直に言うと、遠いところから来たんだなと驚かれた。
今回のお代はタダでいいと言われ、お金はあるから大丈夫と断ろうとしたが、
これから先何があるかわからないから金を浮かせるに越したことはないと思い、ご厚意に甘えることにした。
今度は遊郭などのあるエリアを適当にブラブラしていると、何か制服を来た奴が追いかけてくる。
勢いよくぶつかられて吹っ飛ぶより早く、拳が男の顔を思いっきり打った。
「てめぇかぁ!無銭飲食の上に金銭を盗んだっていう野郎は!」
グラサンが吹き飛び、その下にかけていた眼鏡でよく見ると、制服野郎の横で怒っているのは串カツ屋の店主だった。
「そうですコイツっすよ!会計になって金ないとかほざいた挙句に金を鷲掴みにして逃げた奴は!」
「オラはお金なんか掴んでないだで、それにテンチョさんがタダでいいって言ってただで!」
制服野郎は男の胸倉を掴み、脅しかけるように叫ぶ。
「証拠あんのか証拠ォ!?ケータイでボイスレコーダーでも録ってたのかよぉ!?」
しかし男は今のご時世に携帯電話の類を持っていなかった。
元々住んでいた所で、親にデジカメを買ってもらうのと引き換えに携帯を解約したのだ。
といっても携帯を持っていない程度はこの街ではむしろ平均的である。
「きっとこんなところをうろついてたんだ、盗ったカネでフーゾクでも行こうって事だったんでしょう!
さあ早くこの野郎をとっちめて、有り金全部巻き上げてくださいよォ!」
「そうだなぁ、署まで連行してリンチしてやれば楽なんだがそういう理由があるなら仕方ない。
俺が一人でやってやるがその代わり、取り分はハチニーでいいな?勿論俺様がハチだ」
「ああええ、ええ、セキュリティ様への上納金っちゅーことでどうぞどうぞ」
そして間髪入れずに制服の男の殴る蹴るの暴行が始まる。
細身で薄着な男にとっては、どれも耐えがたいものだろう。
そのうち男のポケットから、パラパラと紙のようなものが落ちてきた。
その瞬間、制服男が手を止める。
「テメェまさか持ってんのか・・・「サテライトのクズ」の分際で一丁前に!」
男は今のうちとばかりに、グラサンをかけなおして制服男の正面に立つ。
「そういやこれあったの忘れてただで、これ見せれば殴る蹴るができなくなるんだったっけ・・・ようわからんわ」
「この俺様相手にやるってんならいいぜ、来な・・・だが負ければさっきの二倍の暴力!
更に金だけじゃなくて服もパンツも毟り取って寒空に晒してやる!」
「じゃあ負けるわけにはあかんな、あかんやで」
「ライフポイントは8000点!手札五枚から!先行ドローなし!いいか!デュエルディスクをセットしろ!」
「これに勝ったらテンチョさんからも慰謝料貰うだで?」
両者は腕に円盤と板が組み合わさったものを装着し、窪みにデッキを入れる。
ただグラサントレーナー男のものは段ボール製である。
「「デュエルッ!」」
お互いにデッキからカードを五枚引き、手札とする。
基本的にはこの手札から攻撃の要となるモンスターを出したり、魔法や罠を仕掛けていくことになる。
「先行はくれてやる、カード資産に乏しいサテライトのクズに優しくしてやらねぇと可哀想だろ?」
「ありがたいだで、では俺の先行いくだで
ドロー飛ばしてメインフェイズ、手札から巨大ネズミを召喚するで!」
男が腕の円盤にカードを置くと、にやにや笑いで二足歩行の巨大な、頭蓋骨を手に持った不気味なネズミの立体映像が映し出される。
巨大ネズミ
効果モンスター
星4/地属性/獣族/攻1400/守1450
(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
デッキから攻撃力1500以下の地属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。
「へえ、そんなボロ段ボールディスクでソリッドヴィジョンが出せるのかい」
「基盤とか廃パーツを組み合わせて、仕上げに段ボールでコーティングしてみたんだで」
「サテライトのクズにしてはできる奴ではあるようだが、そのモンスターは見逃せねえな!
おおかたリクルート狙いだろうが、「神の宣告」を食らいな!」
制服男はピンク色のカードを手札から円盤に出す。
途端に、白髭の威厳ある老人が手をかざし巨大ネズミは霧散して消えてゆく。
神の宣告
カウンター罠(制限カード)
(1):LPを半分払って以下の効果を発動できる。
●魔法・罠カードが発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動できる。
それを無効にし、そのモンスターを破壊する。
「手札から罠・・・どういう事だで!?」
「知らねえのか?セキュリティルールにより、後攻は先行の1ターン目にッ手札から罠を使う事が許される!」
「ウグッ・・・そういう事だから先行を譲ったのか・・・」
無論、そんなルールはない。
権力と暴力によって都合のいい俺ルールを押し通しているだけだ。
だが男は納得してしまっている。
「オラはカードを一枚セット、ターン終了だで」
グラサンの男
LP8000 手札3 モンスター0 魔法罠1
制服の男
LP4000 手札4 モンスター0 魔法罠0
「俺のターン!ドロー!
メインフェイズにアサルト・ガンドックを召喚する!」
制服男の手前に、重火器らしきものを背負った犬が立ち塞がる。
アサルト・ガンドッグ
効果モンスター
星4/地属性/獣族/攻1200/守 800
(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
デッキから「アサルト・ガンドッグ」を任意の数だけ特殊召喚する。
「お、オラのデッキのコマンダーより攻撃力高いだで・・・犬なのに・・・」
「バトルフェイズ!アサルト・ガンドックで直接攻撃だ!
燃やして嚙み千切れ!狩猟のフルバーストォ!」
武装した犬が、男を睨み吠え、重火器を向ける!
「罠カード発動だで!くず鉄のかかし!」
くず鉄てつのかかし
通常罠
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に、
その攻撃モンスター1体を対象として発動できる。
その攻撃を無効にする。
発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。
男を守るようにゴーグルをつけたかかしが現れ、武装犬からの攻撃を肩代わりする。
集中砲火を受け噛みつかれても、そのかかしは健在だった。
「すげえ!セキュリティの攻撃を回避しやがった!」
「そのままやっちまえー!悪徳野郎になんか負けるなー!」
街中でのデュエルのせいか、次々と野次馬が集まってきていた。
セキュリティへの鬱憤を晴らすかのように、野次を飛ばす者もいる。
「助かっただで・・・このカードは通常罠だけど発動後墓地に行かず、再セットされるだで」
「サテライトのクズらしい姑息なカードだな・・・カード1枚セットでターンエンド!」
制服の男は明らかに苛立っていた。
もし男が負ければ、どんな制裁を食らうかは想像に難くない。
グラサンの男
LP8000 手札3 モンスター0 魔法罠1
制服の男
LP4000 手札4 モンスター1 魔法罠1
アサルト・ガンドッグ
「オラのターン、ドロー!
メインフェイズで、怒れる類人猿を召喚だで!」
怒れる類人猿/バーサークゴリラ
効果モンスター
星4/地属性/獣族/攻2000/守1000
このカードが表側守備表示でフィールド上に存在する場合、このカードを破壊する。
このカードのコントローラーは、このカードが攻撃可能な状態であれば
必ず攻撃しなければならない。
「ケッ、サテライトのクズらしい時代遅れのカード・・・攻撃力2000だと!?」
男は正直、このカードの召喚に躊躇していた。
確かにコスト要らずのレベル4モンスターで攻撃力2000は破格の数値だ。
だがバーサークの名を持つ通り、必ず相手に殴りかかりに行ってしまう悩ましいカードなのである。
制服の男のセットしたカードが攻撃反応罠ならそのまま除去されるし
攻撃力上昇カードなら戦闘で返り討ちにあいどちらにしても場ががら空きになってしまう。
ライフポイントで勝っていても、盤面で不利ではどうしようもない。
だがタダでさえカードの質に差がある、モタモタしていると未知のパワーカードを出され畳みかけられるかもしれない。
こちらもひたすら攻めて牽制をしていくしかないのだと、男は判断した。
「バトルフェイズ開始、怒れる類人猿でアサルト・ガンドックに攻撃しまスゥゥゥ・・・」
全身を赤く憤怒に震わせたゴリラは、武装した犬に平然と向かっていく。
犬は怯えを見せ、反撃にすら転じない。
ゴリラが犬に掴みかかる。ソリッドヴィジョン上とはいえ凄惨な殺戮が展開されると想像し、一部の観客は目を背けた。
「いい加減目ェ覚ませって・・・」
だがゴリラは優しく犬を抱きしめ、場外まで運びそこで降ろして男のもとへと戻ってきた。
ゴリラは優しいは定説だった・・・?
それでも戦闘破壊扱いされるらしく、制服の男のフィールドからモンスターは消え、LPが減っていた。
「アサルト・ガンドックの効果!戦闘破壊された時にデッキから可能な限りアサルト・ガンドックを呼び出す!」
だが男が呼び出したのは一体だけだった。
次の戦闘破壊を危惧して、残る一体はデッキに留めておくつもりなのだろうか。
それとも、残る一体は既に手札に来てしまっているのか。
「有利になったところでカードを2枚セットし、ターンを終わりまーす。ほいじゃ、まったのぉ~」
グラサンの男
LP8000 手札1 モンスター1 魔法罠3
怒れる類人猿
制服の男
LP3200 手札3 モンスター0 魔法罠1
「調子乗ってんじゃねえぞ!そんな脳筋カードなんざ・・・ドロー!
どうやら、テメエのマグレもここで終わりだな!」
制服の男はにやけた笑いをしつつ、いきなり手札からカードを三枚捨てる。
「手札から絶対服従魔人三枚を捨て、来やがれ!モンタージュ・ドラゴン!」
絶対服従魔人
効果モンスター
星10/炎属性/悪魔族/攻3500/守3000
自分フィールド上にこのカードだけしかなく、
手札が0枚でなければこのカードは攻撃できない。
このカードが破壊した効果モンスターの効果は無効化される。
モンタージュ・ドラゴン
効果モンスター
星8/地属性/ドラゴン族/攻 ?/守 0
このカードは通常召喚できない。
手札からモンスター3体を墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。
このカードの攻撃力は、墓地へ送ったそのモンスターの
レベルの合計×300ポイントになる。
男の場に、逞しい腕を持ち仮面を被った三つ首の龍が現れる。
「モンタージュ・ドラゴンの攻撃力はぁ、捨てたカードのレベルの合計の300倍だぁ!!
よって攻撃力9000!!!」
「なんだっで!?」
不意打ち的に現れた超大型モンスターに、流石に男の余裕も消え失せる。
「きたよセキュリティの特権インチキカード・・・これであいつも終わりだな・・・」
「でもあのセキュリティに手傷を負わせたんだから凄くないか?俺らのゴミデッキじゃ完封されるだろ」
野次馬達も、三つ首龍に不満を言ったり威圧されたりと動揺が広まっていく。
「消えろカスゴリが!モンタージュ・ドラゴンで粉砕してやる!!!」
「そうはさせないだで!くず鉄の・・・」
「何度も甘ぇんだよサテクズが!カウンター罠、ギャクタン発動!」
ギャクタン
カウンター罠
(1):罠カードが発動した時に発動できる。
その発動を無効にし、そのカードを持ち主のデッキに戻す。
「またセキュリティ特権のクソカードかよー!1000ライフ払えよー!」
強靭なかかしが吹き飛ばされ、男のデッキに戻っていく。
「デッキに戻しちまえば、もはやほぼ再利用不可能!食らいな!パワー・コラージュ!」
ドラゴンの口から放たれた赤、黄、緑の三色の光線がゴリラを消し炭へと変えてゆく。
「クレープいらんのかああああああ」
「あれぇ?丘people!?なんでこーなるのぉ!?ああああああああああああ!」
攻撃の余波で男は衝撃を受け吹き飛ばされる。
LP8000→1000
「続いてがら空きのサテライトのクズにアサルト・ガンドックでダイレクトアタック!これで終わりだぁ!」
武装犬が男に向かっていく。何も守る手段がなければ男は実質これで終わることになる。
「・・・罠発動。ガード・ブロック」
ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
男の体を巨大なシャボン玉が包み、武装犬からの猛攻を受けきった後に割れる。
頭上からはカードが一枚落ちてきた。
「ハンッ!たった一枚のドロー増加で何ができるってぇんだ!壁を立ててもモンタージュで潰してガンドックでダイレクトだ!
せいぜい逆転の一手を望みな!ターンエンドだ!」
グラサンの男
LP1000 手札2 モンスター0 魔法罠1
制服の男
LP3200 手札0 モンスター2 魔法罠0
ボロボロになりながらも、男の目は諦めというものを映してはいなかった。
「オラのターン、ドローッ!・・・よし!
まず、罠カードのリビングデッドの呼び声を発動!墓地のゴリラよ、蘇るだで!」
リビングデッドの呼び声
永続罠
(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。
そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。
地面からゴリラが怒りの表情のまま這い出し、制服男を睨みつける。
「あっはははは!馬鹿かお前は!よりにもよって強制攻撃持ちモンスターを蘇らせたかよ!
ガンドックを殴ってもまた一体出てくるし俺のライフは残る!」
「じゃあアサルト・ガンドックを洗脳して味方につけるだで」
洗脳-ブレインコントロール
通常魔法
(1):800LPを払い、相手フィールドの通常召喚可能な表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。
LP1000→200
「だぁからなんだってんだよぉ!そのカードのデメリットで、特殊召喚モンスターのモンタージュは奪えないからアサルト・ガンドックを選んだのか?
だがこれでテメェのゴリラの攻撃対象は攻撃力9000のモンタージュ一択だ!自爆ご苦労さん!あっははは!」
「まだ通常召喚はしてないから、こいつを出すだで」
肩にドリルのついた不敵な笑みのモグラモンスターが召喚される。
N・グラン・モール
効果モンスター
星3/地属性/岩石族/攻 900/守 300
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う
ダメージステップ開始時に発動できる。
その相手モンスターとこのカードを持ち主の手札に戻す。
「フン。悪あがきに弱小モンスター召喚か!これからテメエはサテライトのクズモグラ野郎だな!」
「バトルフェイズ、グランモールで攻撃だで!」
「血迷ったかよ!8100ダメージでテメェは大敗北だぁ!迎撃しろぉ!」
モグラモンスター、グランモールは両肩のドリルを頭に被せ、地面に潜り地中から遥か格上のドラゴンを襲う。
両者ともに反発して吹き飛び、互いの手札へと戻っていく。
「なにぃ!?なぜテメエ惨めに敗北していやがらねぇ!」
「このグラン・モールは、”ダメージ計算前”に戦闘相手モンスターと一緒に手札に戻るんだで。
だからオラはダメージを受けていない!」
「ふざけるなぁ!この俺の手札消費はどうなりやがる!畜生!」
「次はゴリラでダイレクトアタック!」
怒れるゴリラは制服男の目の前に一瞬で躍り出、怒りのままに殴打をかます。
LP3200→1200
「よくもやってくれたな!!サテライトのクズ野郎!
だが俺のライフはまだ残っている!次のターンで反撃を・・・」
「オラの場にはまだもう一体だけいるんだで、忘れたのか?」
「ハッ!俺のアサルト・ガンドックゥ!」
武装犬はかつての主であった制服男を睨みつけ、照準を合わせている。
「ただの壁として使い捨てられるモンスターの痛みを教えてやろうか!セキュリティ野郎!
いけアサルト・ガンドッグ!・・・えーと、シャム・ファイヤー!」
武装犬は砲撃を制服男に浴びせ、怒りのままに噛みつく。
「ぐぇぁーッ!」
LP1200→0
制服男はライフポイントがちょうど0になり敗北した。グラサン男の勝利だ。
「信じられんゥ・・・クズどもにぃ、この俺がァ・・・負けるなどッ!」
「アノ・・・クズカードクズカードっていや、それは君が、君らがそう思ってるだけやでぇ?
どんなカードだって存在している限り、活用している人もおると思う・・・ぞ?
クズの一言でカードを切り捨ててたらねぇ・・・いつか自分が牙剥かれる時が来るんじゃないかと思いまスゥゥゥゥ・・・ソソソソ」
「・・・モグラ野郎、名前は」
「ほならね、そっちから先に名乗ってみろっていう話でしょ?私はそう言いたいですけどね」
「いちいちイラつく物言いだな・・・ジャンポ牛尾だ」
「ウィイーッスどうも~シャムでぇぇ~す」
「覚えたぞ・・・潰してやる・・・潰す・・・」
制服男は野次馬からのブーイングを受けつつ、ブツブツ言いながら去っていった。
「すげえよ!あのセキュリティの切り札を潰した上に勝っちまうなんて!」
「いったいどこの出身だ!?ここじゃお目にかかれないカードばっかだ!」
「素人にしてはなかなか凄い戦法だな」
野次馬からの賞賛を受けつつ、シャムはある一点を見逃さなかった。
自分を陥れてセキュリティをけしかけ潰そうとした串カツ屋店長が、人込みに紛れて逃げようとしている。
「そいつを捕まえてくれだで!嘘ついてオラにセキュリティとデュエルさせたんだで!」
シャムが叫んだ瞬間にはもう店主はダッシュをし始めていた。
呆気に取られた野次馬の人込みを押しのけ、逃げてゆく。
シャム自身はデュエルによる疲労がたたり、満足に走れない。
取り逃してしまうかと思われた瞬間、人影が飛び出し店主に蹴りを入れ確保する。
シャムが小走りで追いつき、男に礼を言う。
男は軽く髭を生やしており、ちょっとイケメン風であった。
「ありがとうございますやで、コイツには借りがあるんだで。本当ありがとうございますやで」
「気にするな、アンタみたいな大人しそうな奴がそうそうセキュリティに捕まりそうな事案は起こさないと思ってな
何か事情があるんじゃないかと思ってた。
しかしアンタのデュエルは一部始終見てたよ。卑怯者のセキュリティに勝つとは流石だな」
「褒めても何も出ないでスゥゥゥゥ・・・まぁ今回のデュエルは勝てたから100点満点やな」
「シャムって言ったっけか?俺は雑賀だ、よろしくな・・・便利屋さ」
遊闘1 終
今日の最強カード
N・グラン・モール
効果モンスター
星3/地属性/岩石族/攻 900/守 300
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う
ダメージステップ開始時に発動できる。
その相手モンスターとこのカードを持ち主の手札に戻す。
ウィィィーッスどうも~シャムでぇ~す
今日の最強カードは、グラン・モールを紹介したいと思いまスゥゥゥゥ!
オラが信頼するモグラモンスター最強カードだで!
攻撃が通れば、ほぼどんなモンスターも手札に戻せるんだで!
ステータスは雑魚いけど、それが幸いして場に出せる方法は多いだで!
下級とか特殊召喚が簡単なモンスターを戻しても次ターンには召喚されちゃうと思うので
上級や融合シンクロエクシーズなどの召喚に手間がかかるモンスターを戻すとお得ですね、はい
では、まったのぉ~