顔
おれは容姿が悪い。
いや、謙遜でもなんでもなくそういう事実なのだ。
丁度運動できない奴が運動できないと言うような。
小学生の頃から学級生にいじめられてきた。
きもい、うざい、死ね・・・
何も悪いことをしていないのにだ。
おれが何か良いことをしてもだれも見向きもしない。
むしろ、キモイあっち行けと追い払われる。
しかし、少しでも悪いことをしでかすとこっぴどく叱られた。
そして皆思うのだ。
やはりあいつは悪人だったか。
そしておれの周りから人が去っていく。
中学生の頃、そういうやつらを見返したく思い勉強を重ねた。
また、スポーツ万能だったので、成績でオール5など余裕であった。
その為、高校は有名進学校に行くことができた。
だが、その話を級友に言っても信じてもらえなかった。
まさか、嘘ついているんだろ。
それが事実と分かっても評価は変わらない。
どうせ、家に金があるからコネで入ったに違いない。
皆勝手な想像をし、おれは孤立した。
高校でも勉学・部活ともに頑張った。
恋人を作って遊んでいる友人たちをしり目に
順位はトップを維持し続けインターハイにも出場した。
しかし、俺の評価は上がらなかった。
はは、なんて運のいいブサイクなんだろうね・・・
そう言う奴らに見返そうと猛勉強を重ねた。
そのかいあって国立一流大学の医学部に現役で合格できた。
おれは実は少し期待していた。
そんな頭のいい人が集まるのなら少しはおれの内面を見てくれるのではないか。
その期待は見事に裏切られた。
寮に入ったとき、相部屋であった者が嫌がったのだ。
あんな奴と同じ部屋に入れられたら気が狂う。
部屋を変えてくれ・・・
仕方がなく、おれは寮を諦めることとなった。
大学生活も良いものではなかった。
友人たちからは「来るべくしてきたものではない奴」として蔑視され
実習の時も教授から口うるさく言われた。
ただ、技術はあったので、
その視線に耐えながら大学院まで進学でき、
博士号を取って医者になることもできた。
だが、医者になった後も苦労が絶えなかった。
少し誤った判断をすればヤブ医者という噂が立ってしまう。
しかも、そもそも信用してきてくれる人がいなかった。
「仕方がなく」「他に当てがなかったから」来た患者がほとんどだった。
仕事だけじゃない。
ただ歩いているだけで、周囲からの視線が痛い。
この顔にはもううんざりした。
しかし、整形しようにも患者が来ないのでお金がないし
他の病院でも雇ってくれなったので転職もできない。
もうだめだ。
スポーツ万能、成績優秀、
何もかも優れていたって、最終的には顔なのだ。
おれについての苦労は全て顔が原因なのだ。
こんな顔にしたのは誰だ・・・
やり場のない怒りをいつもぶつける・・・
悩む彼の姿を顕微鏡で見ていた男がいた。
その男はこの世界を作った者。いわゆる神である。
しかし、彼の本職は科学者。
男は生涯を世界の作成と研究に費やしている。
彼の実験室で作られた世界、それが私たちの世界というわけ。
彼の実験室に仲間の研究者がやってきた。
「やあ、研究は進んでいるかい」
「ああ、この前作り出した男を観察しているのだが」
「あの何もかも完璧だが容姿が最悪な奴かい」
「そうだよ。そいつがどうなっていくかを見ていたら
残念ながらすべての人から邪魔者扱いされてしまったよ」
「そうかあ、やっぱり容姿が一番大事なんだね。
お前、そいつには可哀そうなことをしたな」
彼は当たり前のように答えた。
「なんだよ、おれの作った世界なんだし何したって俺の勝手だよ。
しかも、こんな微生物なんか正直どうなってもいいじゃないか・・・」