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一本道のダンジョンで初めて敵に遭遇した。ラフレシアみたいな花の化け物だ。地面から生えていて固定されているようで棘のある蔦が周りに生えている。おそらくあの蔦で攻撃するんだろう。
敵の数は3、となると俺とレオンハルトで1体ずつ相手するのがいいだろう。
「俺とレオンハルトが1体ずつやるんで3人で真ん中のお願いします!俺はこっちやるからそっち頼むぞレオンハルト!」
【不死鳥の唄】
フェニックスの固有スキルで全員に継続回復、反応回復、攻撃時mp回復の効果を与えるぶっ壊れスキルだ。これさえあればほとんどhpは減らないがために昔はレイドすらぬるゲーになっていた。
『従魔召喚:フェンリル』
白銀の狼を召喚する。フェンリルは驚異的なスピードで駆け回りモンスターの蔦を切り刻む。これは・・・放置してても多分勝つな。暇だからレオンハルトの戦いの実況でもするか。
レオンハルト、剣に火を灯し蔦を焼き払う。痺れ粉の攻撃は風の魔法で吹き飛ばし雷を纏わせた剣で敵の動きを止める。あいつは魔法を付与した剣、魔法剣の性能を最大限に活用して戦う魔法剣士だ。棘を飛ばしてくる攻撃には剣を起点として爆発を起こすことで対応した。
氷で再生を送らせたり炎を推進力として使ったりあいつの戦いは見ていてあきない。派手な戦闘もいいよな。俺的には地味~な仕事人みたいな戦い方が好みだが俺自身も派手だから人のことは言えない。
お、そんなこと言ってたら地味にいい仕事してるロベルトさんが視界に入った。あの長さの剣でどうやってあの蔦を両断してるんだろうか・・・。多分スキルなんだろうけど。
ロベルトさんは二刀流で蔦を縦に裂いたり蔦を輪切りにしたりしている。ラインヘルさんは敵が攻撃しようとしたところを攻撃して攻撃を中断させている。
マリィさんも普通の素材でできた矢っぽいのに蔦を貫通させてなおかつ天井や壁に磔にしている。ん?あれはやばいんじゃなかろうか。下手したらあの3人の中で一番強い。技術だけなら八翼並みじゃないかと思うほどに。どういうスキルなんだろうか・・・うちの弓使いもあんなことやってはいたけどもっといい矢を使っていた。
Cランクだって言ってたけどみんなAランクなれるんじゃなかろうか。いやまぁこの世界の冒険者のランクとか知らないんだけどね。3人で俺たちくらいに戦えるってかなり異常だと思うわけだ。言っては悪いけどもっと弱いかと思ってた。
俺が実況しているうちに戦闘が終了していた。うーん、早いね。
「動いたら腹減ったな」
「確かに。そういえばレオンハルトー?こんなの拾ってきたんだが調理できるー?」
「これはベリーボア・・・の亜種ですにゃ?もちろん調理はできますがこんなのをどこで見つけてきたのやら・・・」
「ここの上だよ。あ、花は貰うよ。調薬に作れるかもしんないからな」
「ふむふむ~、やっぱりここはダイナミックにステーキといきますかにゃぁ。臭みがあるのでそこには気を使わせてもらあいますのにゃ」
「おう、楽しみにしてるよー」
というかこんな場所で食事なんぞしててはいけないんじゃなかろうか。ここは難易度不明のレイドエリアであって決して自宅の庭ではないのだ。のんきに肉を焼いてそれを食べるなんていいのか。
「これは・・・においにモンスターが引き寄せられそうだな」
「もうっ、怖いこと言わないでよラインヘル」
「こういうとこで飯食うのって普通なんですか?」
「いや、普通ないな。ちょっと伝説の人物が2人もいるから気が緩んでるのかもしれん」
「まぁそりゃなー。昔は俺たちだってやんちゃしてたし。そうだ、帰ったらミカエルと一緒に昔話でもしましょうか?聞いてて驚くことしかないと思いますよ」
自分で言うのも・・・って感じなんだが間違ってはいないからな。
「さ、ステーキが焼き上がりましたにゃ~」
ちゃんとライスを用意してくれるあたりさすがはレオンハルトだ。食の宝庫なだけあって米もあったんだろうか。あのエリアは全然見て回れてないからなぁ。いつかミカエルが調査隊とか送るんだろうが。
「んーっ!おいしー!」
「うめぇなっ!?これは飯がいつもの10倍うめぇぜ!!」
「・・・力がみなぎるな」
「うん、これは絶品だぁぁ!もう死んでもいいな」
「アダンさんともあろう人が縁起でもないのですにゃ。このダンジョンしっかりと攻略しますのにゃ」
「うん、それもそうだな。そういや先行部隊(妖精たち)から報告来てた。このあとずっと敵いなくてボス部屋らしい。満腹のまんまじゃやばいからちょっと体動かしてから行こうか」
ステーキを待っている間にシルフたちに行かせていたのだ。ふふふ、この周到さこそが二翼に就いていた理由の一端でもあるのだよ。では気を抜かずにいくか。