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「そうですか、部屋空いてるんですね。じゃあそこに12泊お願いします」
部屋は空いていたようなので先に取っておく。
「じゃ、俺の部屋行こうか」
俺の部屋に着いてから話を始める。護衛するのはレオンハルトなのでレオンハルトにも来てもらっている。
「イリア、君の事情について俺たちに話すことはできる?」
「はい。私は魔王ディアモテ=セリエールの一人娘です。父が討たれてから320年ほどは自分の部屋に引き込もっておりました。ですがさすがに父の部下が統治を代理するのにも限界があったようで私に魔王の座を継ぐように迫られるようになりました。それが嫌で逃げ出したのが最近のことです」
セリエールって名前と種族の魔族ってところで確信していたがやはり魔王の娘か。助けておいて正解だった。魔王が台頭したら争わないといけない可能性もあったしな。代理政権が320年も持つってどういうことだ。もはや江戸幕府涙目になるレベルの国家だよ。そしてイリアは俺より圧倒的に年上だな・・・。
「なんで魔王になりたくなかったんだ?」
「私だって女の子なんです!年齢は607歳ですけどこれは人間で言うなら20歳くらいのものなんです。まだ女の子として着飾ったりしたいし同じ年頃の娘たちと普通に話したりしたいんです。それに、魔王なんて破壊や殺戮を繰り返すだけじゃないですか。そんなこと私はしたくないんです」
「なるほどね。これを踏まえた上でレオンハルト。お前はイリアの護衛を引き受けてくれるか?」
「もちろんですにゃ。魔族に後れなどは取りませんので安心して優勝してきてくださいにゃぁ」
「みんな二言目には優勝優勝って。俺より強いやつがそんなにいるとは思わないけどそれでも苦戦くらいはするからな?」
本当に・・・下手したら初戦から苦労することだってあり得るんだからな。
「大丈夫でしょう。アダンさんはとてもお強いと私は思いますよ」
「イリアとどっちが強いと思う?」
「私ではまだまだアダンさんには実力が及びません」
「それに、保護対象であるイリアさんが僕たちより強かったら面目丸潰れですにゃぁ」
「言われてみればそうだな。ディアモテの娘って言うから鬼のような強さだとばかり」
魔王ディアモテはストーリーの最後らへんで戦うことになる魔王で異常な強さだった。魔法も物理も完璧でなおかつ化け物みたいな回避性能を誇っていた。
「そういえば私の父を討ったのもアダンさんたちでしたね」
初回撃破は俺たちによるものだったらしいからもしかしてとは思っていたがこっちでは俺らが倒したことになってるのか。
「ああ、申し訳ないな・・・」
「いえ、アダンさんたちに恨みなどありません。父は魔族以外の皆さんからしたら倒すべき存在だったのですから」
「そうか。そんな風に言ってもらえるんだったら少しは気が楽になるよ」
明日からはイリアを守ることも考えなきゃいけないし今日はゆっくりしようかな。




