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シルフは戦士風の男と激しい戦闘を繰り広げていた。シルフの撃った風の弾丸を敵は剣で弾く。鎌鼬は受け止め、小さな竜巻でさえも切り裂く。
「これは・・・きりがありませんね」
「大丈夫だ、精霊。そろそろ終わらせてやるよ」
シルフの段幕を切って捨て徐々に距離を縮めていく。
そしてついに距離は0になりシルフの身は剣撃に晒される。
「もうやめてください。私が帰れば済む話でしょう。だから精霊さんに手を出すのはもうやめて」
「言質は取りましたからね?ではこちらへ」
少女は戦士風の男へ近付いていく。
「こちらへこないで!あなたはマスターのご厚意を無駄にするつもりですか!」
「そんなことを言ったって・・・しょうがないでしょう!無関係な方を傷付けたくないのです」
「私にはマスターの命令を遂行する義務があります。だからまだ戦う。マスターの命令があるかぎり、私はまだ戦える」
【シルフブレス】
風の奔流が敵を飲み込み吹き飛ばす。小さな風の刃が身体中に傷痕をつける。
「今のはなかなか効いたな。だがその程度ではやられはせん」
『魔封剣』
「これで俺の剣は魔法を斬る性質を持った。もはや貴様に勝機など一片も残ってはいない。おとなしく引き下がることをおすすめしよう」
「いやです。たとえ魔法が通じなくともこの身を盾にすることくらいならできますから」
『イビルキリング』
紫の斬撃がシルフの体を抉る。それでもなおシルフは立っていた。主人から与えられた命令を遂行するために。命令は目の前にいる男に勝つことではなく後ろにいる少女を守ることなのだ。目の前の脅威を取り除けないならせめて命尽きるまで脅威から少女をかばうことにしよう、そんな気持ちだった。
その瞬間その場にいる全員が動きを止める。全身を殺気で染め上げた一人の召喚術師が現れたのだ。
「おい貴様、よくもシルフをこんなにしてくれたものだな。さっさと物言わぬ肉塊にでもしてやるよ」
「ずいぶんと自信過剰ではないか少年よ。お前がその精霊の主人か」
「ああ、さっきまでは私怨もなかったし見逃してやるかと思っていたが今からは私怨があるからな。全力を以て叩き潰すぜ」
『技能召喚:メイルシュトロム』
『技能召喚:コキュートス』
水の渦で切り籾状にしてから飛び散った血液ごと凍らせる。叩き潰すとか言ったけどこんな女の子の前ではさすがにダメだよな・・・と考え込むアダンであった。




