19
これは罠か!?危機感を感じた俺は両手にクナイを10個構える。地面が近くなってきたので体勢を直し着地に備える。特にダメージもなく着地した俺の目の前には金色のローブに身を包んだ長髪の魔術師がいた。
「お前が一騎当千のアダンか。お前のような強者を葬れる時が来たことを嬉しく思うぞ」
「お前が何者かは知らないが俺に勝てると?」
何者か知らないじゃないな。こいつが誰かの指示で動いているんだとしたらミカエルたちの身が危ないな。
「戦う前に話が聞きたい。お前の後ろに誰かいるのか?」
「ああ、いるぞ。リモーア帝国の皇帝さ。お前らを分断してそれぞれを暗殺する計画だ。今頃ミカエルも刺客に遭遇してるだろうな」
こんなに喋っていいんだろうか。まぁ殺すからってことなんだろうが。ミカエルがここに来ていることを知っているのはごく一部のはずだ。間違いないなく間者がいる。ラインヘルさんたちまで疑わなきゃいけんのが悲しいな。
「そか、ミカエルが負けるなんてことはないだろうがここはさっさとお前を倒すことにしよう」
『従魔召「残念ながらここでは召喚魔法は使えないのさ。それどころか空間に干渉できないこの空間ではインベントリからアイテムを取り出すことすら不可能!貴様に勝機などない」』
どうやら本当のようだ。おそらく最初にクナイを取り出せたのはあの時点ではまだ空間に干渉できない空間とやらに入っていなかったんだろう。
「勘違いしてもらっちゃ困るなぁ。後ろに突っ立ってるだけのやつが八翼であれるはずがない」
近接戦闘もできるし中距離戦闘もできる。ただし武具召喚やクナイさえあればだ。10のクナイしかない現状では少々厳しい状況であると言わざるをえないだろう。あれがあるが・・・失敗はできないしタイミングを作らなければいけない。確実に当てなければまず勝ちはなくなるだろう。
『分身の術』
俺が20人に増えるが驚いた様子はない。俺のアーツは把握済みだということか。
『投擲:参の型』
すべての俺が3本のクナイを同時に投擲する。予想外の攻撃ですべてを防ぐことはできない。
「どっ、どういうことだ。分身はアーツを使えないんじゃ・・・」
「その情報は間違ってたってだけだ」
間違っていただけだ。分身がアーツを使えないのは自動で戦っている時のみ。操作していれば細かい動きの指定やアーツの使用さえ可能になる。アイテムだけは使用できないのだが装備とアイテムの両方の性質を合わせ持つ投擲用の武器だけは別だが。
【サークルフレイム】
一瞬で奴の周りに炎の円ができ、それが広がって俺の分身を焼こうとする。間一髪でそれを回避し次の攻撃を加える。
『投擲:漆の型』
すべての俺が5本のクナイを投擲する。空間を自在に駆け巡る漆の型だ。これは回避も撃墜もできないだろう。
【ウォータードーム】
すんでのところで防御か。ゲームでは存在しなかった魔法だな。こういうのを使ってくるモンスターはいたけどなぁ。魔術師って紙装甲のイメージしかなかったけど防御まで充実となるとちょっと計画を変えなきゃいけなくなってくるな。さぁて、どうしたものか。
【ミストエクスプロージョン】
詠唱から若干時間が経ってから魔法が発動する。魔術師の構えた水球が弾けて霧になり辺りに飛び散り俺は切り刻まれる。威力はそこまでないみたいだが全方位攻撃だから分身は消されてしまった。
『影踏』
『投擲:弐の型』
影踏で接近し至近距離からの弐の型。弐の型は破壊力の高い攻撃だ。これならさっきの水のドームも貫通できるはずだ。
魔術師はローブの中からポーションを取り出し回復する。そりゃ自分だけ回復できる状況にして優勢になるよう仕組むか。
「これは勝ちが見えたぞ。お前はすばしっこいようだから逃げ場のない範囲攻撃で潰してやろう」
あちゃー、これをやられると俺は攻撃にも移れないしじりじりとhpが削られて死ぬことになるな。さっきので俺のスピードについてこれないことは分かったしあれなら一撃でいけるか?念念をってやつだ。
『影縛』
影の縄で魔術師の手足を拘束する。まぁ水魔法のカッターとかなら普通に切れる程度の強度しかないんだがな。
『からくり忍術炸裂花火』
敵に当たった瞬間に炸裂するからくり仕掛けの爆弾、という設定で見た目は普通にミサイル、を投げつける。これはどっから出してるんだろうか。むしろ創り出してるのかな。
すごい音で爆発して魔術師に大ダメージを与える。
慌ててポーションを取り出すがそれをクナイで弾く。
「ほれ、これでも食らえ」
魔術師は俺が投げた物を火の玉で防ぐ。その瞬間轟音が鳴り響き魔術師は命を散らした。




