:序章
作中では触れていませんが、主人公はジンといいます。
ー今からそう遠くない昔。多くの猿が暮らす山の中、たった一匹だけ脚が3本生えた烏が居たそうだ。そのことから‘八咫烏ノ森‘と呼ばれていたそうだ。その山の麓に住む住民からは化け物として恐れられていた烏は、間もなくして姿を現さなくなる。不思議に思った住民が怖いもの見たさで山に足を踏み入れると、ただ一面に猿の骸が血の海に浮かんでいたとー
「う・・んん・・・」
ようやく家に帰って来れた喜びから、大きく伸びをする。しかしまだ気は抜けないぞと自分の気合を入れ直し、黒光りするハンドガンのグリップを握りしめる。
「よし、まずは我が家の奪還だ!」
何も持っていない左手で玄関のドアノブを握る。すうぅ・・と息を大きく吐き、今一度空気を吸う。右にゆっくりと回し、鍵がかかっていないことを確認する。勢いに乗せてドアノブを回しきり、ドアにタックルをかます。メキッという木製の物特有の嫌な音を発し、後ろにそのまま倒れる。とほぼ同時、前方から異形の者が両手を振り上げ飛び掛かってくる。咄嗟にベルトに装備しているナイフを左手で掴み、振り上げると、金切り声のような耳を劈く悲鳴を上げ、グジュグジュと嫌な音を立てつつ溶けていく。
「うしっ、一体撃破!」
ここからは作業だ。階段を足音を立てないよう上り、先程と同じようドアをぶち壊し、驚いている異形の者にすかさず飛び蹴りを食らわす。
「隙ありゃあぁぁぁぁ!!!」
渾身の飛び蹴りを胸部に命中させ、後ろに吹き飛ばし、怯んでいる隙に脳天に右手に持つハンドガンから発せられる鉛球をぶち込んでいく。またさっきと同じよう、グジュグジュと嫌な音を立て溶けていく。
この異形の者、数年前に日本のどこかで起きた研究所・原子力発電所同時爆破事件の時から現れている。研究員の死体を焼却処分しようとしたところ、突如として息を吹き返し、否、その種の生存本能に乗っ取り、周りの人間に噛みつき、どんどんと増えて行ったらしい。なぜ人間であったはずの彼らが別の生物として蠢いているのか、またなぜそのような進化を遂げたのか。いまだ謎に包まれている。しかし、分かっているのは、闘争本能が強く、視界に入る同種の生物以外を襲おうとするということだけだ。一説では、研究所にて秘密裏に開発が進んでいた「AZ-opx」(エージーオポックス)と原子力が何らかの関係で融合し、周りの人間の体内に取り込まれ、こうなったと言われている。実際、AZ-opxをマウスに投与すると、食欲・凶暴性が大幅に上昇したそうだ。そうして凶暴化した人間は、大まかに呼ぶとゾンビと言われているが、学者や異形討伐組織には薬品名から「アザー」と呼ばれている。
頑張って読んでくれてありがとうね。