第八話
仕事忙しい。でも、書くことやゲームすることは辞めたくないです……そうなっちゃえば只の社畜になってしまうし、つまらなくなってしまうので、書けるときやプレイする時間があるときはやりましょう、みなさん。
ゴブリン五十体で一万五千と、マジック・ゴブリンソルジャー計三十体で一万二千円、ゴブリンキングで一万五百ギル也……。
三万七千五百ギルが入っている袋の中身をアイカと一緒に確認し、受け取る。
千五百ギルのその日暮らしの自分が、一気に小金持ちになったなと流は苦笑しながら、ポケットに突っ込んだ。
これにて合計が三万九千ギルとなった。
「驚きました……まさかランクFの方がいきなりこのような金額を受け取るなんて」
「いや、俺も驚いてる」
それは流も内心驚いている……無我夢中で戦った結果がこの金額だなんて誰が思うだろうか。
しかし、それはレアスキルの御蔭だということを忘れない。それがなければ自分等すぐに死んでしまうだろう。
融合魔法が使えるからと傲慢にならず、上手く剣と融合魔法を使って生きていかねばならない。 魔法だけ強くなっても、それがいざ使えなくなってしまえば、頼れるのは己の腕と剣だけだ。
異世界で生きるには片方だけ強くなっても意味がない、両方の力を均等にしてこそ生きていけるのだろう。
(……と思っても、まだ魔法に頼り切るしかないんだけどなぁ)
現実世界では武道の武も学んできていないため、剣の使い方も間合いの仕方すら何もかも知らない流。それに関しては実戦で学んでいくしかないだろう。
とりあえずは魔法に頼りつつも、剣での実践も積んでいかねばならない。
(まっ、とりあえずはそうしていくか……早く帰って休もう)
今後のことを一先ず置いといて、宿屋に戻って早く休もうと、冒険者ギルドに出ようとするが。
「待ちな、兄ちゃん」
目の前に、申し訳程度にシャツを着たその男――見た目は地球で例えるならば熊を思わせる程の巨漢だ。
厭らしい笑みを浮かべながら、背中には背負っている斧に手を伸ばしている。
「大量にお金をもらえたじゃねぇの。 貧乏なおれっちによ、少しは分けてくれねぇかい?」
「……必死こいて稼いだ金をなんで見ず知らずの人にあげなきゃいけないんですかねぇ」
やっかみをかけられたと思う。
こっちは既に満身創痍で、相手は依頼を受けていないのか汚れもない恰好で疲れも見せていない様子だ。
圧倒的にこっちが不利――。
「こっちとらサッサと帰って寝たいんですよ。金が欲しいなら、依頼を受けろやこの野郎」
しかしそれよりも休みたいという気持ちが先走り、そのイラつきを思わずぶつけてしまっていた。
周囲にいた冒険者たちは「何言ってんだ、あいつ!?」、「死にてぇのか!?」と驚愕の声を上げていた。
そんな流の態度に男は米神を引きつかせ、斧を引き抜いて振り上げていた。
「さっさとよこ――おぼぉあああ!?」
無論流はその斧を振り下ろさせるつもりはないため、右掌から融合魔法・ハイドロを出させ、男の口に注ぎ込ませる。その十秒後にはハイドロの勢いは失い、やがて途切れた。
流自身が故意的消したわけではない、まるで自動的に止められたかのように終わったのだ。
そのことに戸惑いを覚えた流は再度ハイドロを使おうと魔力を練り上げようとしたが、自分の意思と反して全く出せず、また閂にかけられたかのように出せなかった。
(……魔力を使うことを俺の身体が拒否しているのか、これ以上使うことを? まあ、何にせよここに来るまで結構な魔法を使ったからしょうがないか)
理由は不明だが、もう魔法が使えないことは確かだ。
今後魔法が使えなくなったらこのようになるのだろうか……それを確かめるためにはまた後日だ。
「がはっ、げはっ、て、てめぇ」
「おっと、それよりもあんただったな」
「ぶ、ぶっころし、はおぉう!?」
男の腹からピーギュルルルという音が鳴り響いたと同時に、両手を腹部を抑え、足は何かに耐えるかのように内股となった。
どうやら十秒間だけながらも効果が出たようだ――無論ハイドロの効果や使い方は決して腹部を下すことではないことは示しておこう。
「て、てめっ、なにしやが――おおおぅ!?」
「とりあえず忠告だ……人間や冒険者としての威厳を保ちたかったら、トイレに行け。 このままじゃあんた漏らすぞ」
何がとまではいわない。さすがにそこまで行ってしまえば公開処刑のようなものだ。恐らく人前で倒されるよりも、漏らす方がよっぽど恥ずかしいだろう……。
そして流の言葉の意味が分かった周囲にいた冒険者たちから「さっさと出てけー!」や「きったねぇもんみせんじゃねぇ!」と男に暴言を飛ばす。
しかし男はそれよりも、自分にこのような目に合わせた流に痛い目を合わせたいのか、内股ながらも足を進めつつ拳を振り上げるが。
ギュロロロロという音が鳴り響いた同時に、男の拳は再度腹部を抑えるようになる……そして対には内股で地面に座り込む。
(あっ、やばいなこれ)
「それじゃあ、受付さん。 あとはよろしくお願いします……これ始末代ね」
「えっ、ちょっ!?」
流はアイカに咄嗟に取りだした三千ギルを両手に握らせたと同時に駆けた。
これから起きる悲劇と異臭に、この冒険者ギルドにいる人たちが耐えられるように祈りながら。
そしてギルドから出ると同時に撒き散らすような排出音と悲鳴が聞こえたが、流はそれを無視して、宿屋へと戻っていった。