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異世界での冒険融合士  作者: 欄海
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第六話

 首を切断されたゴブリンから血が大量に噴き出し、血なまぐささと鉄臭さが充満する。そして頭を失ったゴブリンはビクンビクンとけいれんし、そのまま倒れ込んだ。


 それを見て、吐き気を催したが、飲み込み我慢する。


 これがこの世界で冒険者として生きていくことなんだ――この位でへこむわけにはいかない。

 ブロードソードに着いた血を振るって落とすと。


「げっ、ぞろぞろ出てきやがった」


 前の茂みからぞろぞろとゴブリンが姿を現してくる。どうやら先程の戦闘で気づかれたようだ――棍棒を中心として持っているゴブリンの中に、錆びつき刃が毀れている剣とボロボロの杖を携えていた。


「剣を持っているのがゴブリンソルジャーで、杖がマジックゴブリンか……」


 特徴的なものがないからそう呼んでいるだけで、もしかしたら中身は普通のゴブリンかもしれないなと思っていた矢先。

 杖を持ったゴブリン――マジックゴブリンが何かを叫んだと同時に、杖から炎が流に向けて飛び出していった。


「うげっ!?」


 慌ててその場から真横に飛んで避けるが、今度はソルジャーゴブリンが剣を振りかぶってきた。


 流はブロードソードで受け止めるより先にヤクザ蹴りを繰り出して吹き飛ばした。


「ちっ、連携攻撃かよ。 やっかいだな」


 相手は多数、こちらは一人――どっちが不利かは明確。武器だけで対応できる相手らではない。


「んじゃあ、異世界定番の魔法を使わせてもらうか!」


 空気の渦巻く風を、烈火のごとく燃え上がる炎をイメージし、それを放出する!


「融合!」


 叫ぶと同時に現れたのは、自分と同じ背丈位の激しい渦巻き状の風と燃え盛る炎。 風と炎は溶け合い一つの魔法となる――。


【融合魔法:ファイアーストームを覚えました】


「レッツゴー! ファイアーストーム!」


 ファイアーストーム――炎をともなう旋風はゴブリンたちに襲い掛かった。

 旋風でゴブリンたちを切り裂かれる斬撃と同時に焼かれる熱傷の痛みに、ゴブリンたちの耳を劈く悲鳴が上がった。


 炎の旋風が消え失せると、そこに広がっていたのは切り刻まれ、焼死体となったゴブリンたちであった。

血と肉の焦げた嫌な臭いに流は顔をゆがませる。


(くそっ、やっぱ結構クるな……)


 それと同時に思い出すのは肉を斬り裂く感触、断末魔の声、死体、どれも平和な国に住んでいた流にとっては凄まじいほどの衝撃を与えるものだった。


 覚悟を決めていたとはいえ、この程度で精神にダメージは無いだろうと思っていたが、魔物とはいえ虐殺に近いことをしたのが堪える。


 ため息をついて、一休みしようと思ったが――。


「グオオオオオオッ!」


「そういうわけにはいかねぇか!」


 大きな叫びとともにやってきたのは、先ほどのゴブリンたちよりも、3倍の巨体を持ち、切れ味が鋭そうな大剣――クレイモアを片手で軽々しく持った巨大なゴブリンであった。


(見た目でいえば……ボスゴブリンといったところか?)


 流命名の巨大なゴブリン――ボスゴブリンは再度大きく叫ぶと同時に、流目掛けて走り出し、大剣をそのまま振り下ろしてきた!


「っとと! そいつは御免だぜ! 風と水と土!」


 風によって起きる波を波浪を生み出し、土はそのまま波浪と混ぜ合わせる――そうすることで生まれるのが、土と水が交じり合って柔らかくなった状態の泥による波浪だ。


「名付けて『泥波』ってか」


【融合魔法:マッドウェーブを覚えました】


「ぶぅおおおおおお!?」


 流が作った泥の波はそのままボスゴブリンを飲み込まれ、そのまま流されそうになった。

 しかし、そうは問屋が卸さない。


 流はそのまま渦巻く風をイメージすると同時に、洗濯機を思い出す。


 昔の洗濯機はグルグル回っていた……ニヤリと流は笑った。

 波に飲まれているボスゴブリンを中心に風を渦巻かせ、回転させた。


「ブルッ……ウガッ! グゲェ、ギャっ! ガベビャッ!」


 渦巻く風と泥水によって身動きが取れず、また脱出しようにも泥がへばり付き、風によって身動きが取れないボスゴブリン。

手に持っていたクレイモアも風と泥水に持っていかれ、外に放り出されてしまった。


【融合魔法:マッドウォッシングを覚えました】


「おぉ……三つも融合魔法を覚えちまったよ」


 流はグルグルと泥水と風に廻されているボスゴブリンを見ながら、呑気に呟く。


 しかし、融合魔法を三度も使ったこともあるが、やはり精神的にクることがあったのか思ったよりも疲弊していると感じる。


 一度、腰を下ろし休憩しようと思ったが、何かがこっちに来た音がする。ゴブリンだった。


「ふ~」


 諦めたように大きく息を吐き、キッとゴブリンを睨みつけ、ブロードソードを正眼に構える。


「かかって来いよ! もう少し、俺をこの異世界に慣れさせるためになぁ!」


 平和な国に住んでいた流にとっては凄まじいほどの衝撃――しかし、生き残るためには慣れなければならない現状に、やけ気味になりながら振るっていく。


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