第二話
武器や防具、道具を売るもの、屋台を出して客を呼びかける声。
そんな賑わいを見せる街中で流はこれからのことを考えていた。
(さてと、とりあえずは金集めからだな)
まず旅に出る云々の前に、生きていくことがまず第一だ。 その為には道具と金が必要である。
ゲームや漫画での知識でいえば、ツボを覗いたり・足元に落ちてたりして拾えるもの。
しかし、ここは現実世界、そんな知識は通用しない。
足元に落ちてたら拾われるし、ツボなんて割れやすいものをそこらへんに置かれるわけがない。
ならばどうやって金を手に入れるのか。
(定番の魔物を倒して手に入れるか、ギルドで依頼を達成して手に入れるかのどちらかだよな……)
前者の魔物退治で稼ぐことはまだ危険だ、流はどの武器が使えるのかはおろか自分の力さえも分からない身で戦うのは自殺行為だ。
ならば、まだそんなに危険な仕事がなさそうなギルドで稼いだほうがいいだろう。
しかし、実際にギルドがあるかは不明だが、もしもなければ「何でも屋みたいな職業はありますか」と聞けばいいだろう。
「すみません――」
流はさっそく街人に聞いてみることにした、
するとギルドは存ること、そのギルドでは街人や承認などの依頼を受けてこなす冒険者がいることを分かった。
そしてそのギルドが近くにあることが分かり、早速向かった。
ギルドは木製と金属製で創られたもので、汚れがあまり見られない綺麗な建物だった。
中に入るとそれなりに賑わっており、幾つかに受付場があり、一番端に冒険者登録と書かれた受付があった。
「登録をしたいんですけどいいですか?」
流は受付嬢にそう尋ねると、受付嬢は笑顔で頷いて書類とカードに一本の針を取り出した。
「こちらの書類にお名前と年齢、魔法属性を書いていただきますか」
「――書くのはいいんですけど、その針はいったい何ですか?」
「? こちらのカードに血を垂らしていただき、冒険者の身分を証明するための『冒険者証明書』を作成するために使用するのですが」
何を言っているんだこいつはと言わんばかりの受付嬢の視線を気にせず、流は「そうですか」と答えて書類をサラサラと書いていく――ふと気づいた。
(あれ、書類……日本語?)
書類は日本語で書かれていた。そして今更ながらも当たり前のように話していた言語も日本語だったが、意思疎通が容易なので助かった。
また文字もファンタジー世界でよくあるミミズのような、現実世界でいうアラビア語のように書かなくて済んだので、流自身的には助かった。
(……テンプレみたいな世界だな、ここはもう)
書き終えた書類を手渡し、今度はカードに血を垂らした。
血を流されたカードはしばらくすると、書類に書いた情報通りに浮かび上がった。
Name リュウ・オオヤマ
Sex 男
Age 17
RANK F
GIL 0
「はい、こちらがギルドカードとなります。 依頼を受ける際にはあそこの掲示板に貼られている依頼書を取っていただき、受付で依頼の説明を聞いて受注をしてください」
「分かりました。 説明ありがとうございます」
流はさっそく掲示板に向かい、どの依頼があるかを調べてみる。
『ランク:F 薬草収集 報酬額:薬草数によって変化』
『ランク:F 食材収集 報酬額:食材数によって変化』
『ランク:F ディーガル草原の調査 報酬額:1,000ギル』
『ランク:F 孤児院の孤児たちの面倒を見てほしい 報酬額:500ギル』
『ランク:E ゴブリン討伐 報酬額:討伐数によって変化』
雑用から討伐までの幅広い依頼書が張られており、流は最初は簡単な仕事でもやればいいかと思い、ディーガル草原の調査の依頼書を手に取り、依頼受付と書かれた受付場に向かい、その受付場にいた男性に手渡した。
「『ディーガル草原の調査』ですね。 こちらはディーガル草原で何か異変が見受けられたかどうかを調べてもらう依頼です。 依頼完了時に受け取れる報酬は1,000ギルです。これはつい最近この草原に出るはずのないモンスターが出現したため、依頼が舞い込んできました。 もしも、そのモンスター『ディアベクス』に出会いましたら、すぐにお逃げください」
「分かりました。 すみませんその『ディアベクス』というモンスターってどんな姿ですか?」
受付の男性は受付場の下から『モンスター図鑑』と書かれた本を取り出し、ページをめくっていく。
数分もたたないうちにディアベクスのページを見つけ、それを流に見せた。
(……紫色の毛深い熊だってことを覚えておけばいいか、あと爪は刀みたいに細長くて鋭いってことだな)
ぺージに書かれているディアベクスの特徴なのは流の思っていることぐらいしかなかった。
『ディーガル草原』がどこにあるかまず聞く。喜ばしいことに、この国の北門から出てすぐとのことであった。
流は受付の男性に礼を言って、ギルドを後にした。
* * * * *
「さて、調査ついでに俺の力も確認しておくか」
流は歩きながら、自身のステータス画面を出し、融合士に触れる。
<融合士>
二つのものを一つにさせ、異なるものを生み出せる融合をつかさどる魔術師。
また基本となる魔法属性すべてが使える。
<能力>
異なる属性の魔法を融合し放てる魔法と、道具と魔法を融合させて放てる魔法――融合魔法が使える。
また、道具同士の融合させる道具融合も使用可能。
(道具融合はできないけど……普通の魔法や融合魔法は試せるな)
自身の力を確かめられるのと同時に金を稼げるのだ、一石二鳥だ。
それに<融合士>という能力の使い方さえ分かれば、こちらの物だ。
喩え、ディアベクスというモンスターが現れても、この力が使えるようになれば問題ないだろう。
流はニヤリと笑みを浮かべて、北門に向かって歩き出していった。