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魔王討伐なんて無理です

「つまり暗黒竜というヤツが魔王の正体で、それを倒したら良いのですか?」

「はい。勝手なお願いではありますが、是非ミナ様に討伐して頂きたいのです」

「はぁ」






青髪男さんこと、アルバート第四王子の執務室で互いの自己紹介をした後に、詳しい話を聞いた。


青髪のアルバート王子は、私を召喚した国の王位継承権第四位の、生粋の王子様だった。ちなみにweb小説のテンプレよろしく、イケメンだ。この手の異世界の王子様はイケメンばかりだが、王族の遺伝子にはイケメンもしくは、美少女しか生まれない呪いでも掛かっているのだろうか?


失礼ながらも、他の王子様達も格好良いのか聞いてみたら「皆社交界では引く手あまただな。縁談話も途切れる事がないな。今はそれ所ではないから、白紙状態だが」と返された。

ちなみに、暗黒竜の件があって、まだ次代の王を確約された王子は居ないらしい。


それにしても王子がイケメンばかりなのは、やはり美男美女と婚姻するから、遺伝子的にも美男美女遺伝子で構成されるからなのだろうか?

そう言えば、どこぞの国の王様が美女を囲った為に、美女が多く生まれる国があるとテレビでやっていたな…。

それみたいなもんか。


一夫多妻の国の王様なんて滅びればいいのに。ここの王様が多妻かは知らないけれども。


怖くて言わないけど。


とりあえず、王様が不細工だった場合はどうなるのかが、気になるが。奥さんが美人でも、やはり不細工が生まれるのだろうか?


話が脱線してしまった。銀髪男さんはウラディミールと言う名前で、この国でもトップの高位神官に属するらしい。


見た目はまだ若いのに、すごい出世してるなと思ったら、「先代は暗黒竜に対抗する為に、莫大な神聖魔法を行使し続けた為、もう神官職に戻れない程に衰弱したもので」と補足された。


聞きたくなかった。


それにしても、勝手に異世界人を召喚しておいて、何で国のトップの王様が出て来ないんですか?(勿論、「勝手に呼び出した挙げ句、トップが居ないとは何でですか!?」等とは言っていない。やんわりとした質問の仕方をしたよ)


と、思って聞いてみたら、王様は暗黒竜の復活によって活発化を始め、攻め入ってきた魔物達から自国を護る為に騎士団と共に王都から離れた前線へ出立したは良いが、大怪我を負い、現在療養中との事で面会謝絶だった。


聞くんじゃなかった。


お城は綺麗だし、街並みも綺麗だったから、魔王がどうとか言われてもピンと来なかったけど、今も何処かの国では暗黒竜や魔物達に侵略されるのを防ぐ為に、戦争は行われている。


無理です。


戦争も経験した事のない、平和な現代日本人として生きてきた私には到底出来そうにないです。


「無理です」


言葉に出して返答する。

アルバート王子もウラディミールさんも、瞳を見開いてその場に硬直していた。


「戦争経験も戦闘経験も、ましてや武術や剣術なんてものも習った事のない一般人の自分には、富士山よりもハードルが高すぎます」

「フ…フジ?」

「富士山は日本にある日本一高い山の名前です」

「は…はぁ…」


不思議そうな表情も隠さず、適当な相づちを打ってくる。


おいこら。仮にも一国の王子と神官なら表情に出すなよ。


「それは置いておいて、もう一度言います。刻一刻と崩壊していくこの世界を、お救い頂きたいのです」


富士山の話は華麗にスルーされてしまったようだ。


「いや、だから無理ですってば」


不敬とか気にせず即答する。


「あの、私の話は理解して頂けなかったのでしょうか?」

「ちゃんと理解してますよ?」

「ミナ様が暗黒竜を討伐して下さった暁には、富も栄誉も思いのままなのですよ。一生働かなくても済むだけの贅も伴侶すらも思いのままですよ」


ウラディミールさんが語ってくる。

いや、私元の世界に帰りたいんですけど。


「ミナよ。暗黒竜を討伐しなければ、そなたは元の世界には帰られないのだぞ?」


今度は私が硬直する番だった。


な…なんだと。呼び捨てだと!?


それにしても、何という異世界に都合の良い話なのだ。

そして、こうも思う。異世界人(しょうかんするがわ)に都合の良い展開でもなければ、別の世界の人間なんて召喚しないよな――と。


「例えそうだったとしても無理な物は無理です。大体、このガイアスロイとかいう世界の空気を普通に吸ってますが、私大丈夫なんですか!?こっちの野菜類は確かに私の世界の野菜と一緒の物でしたけど、胃に入れて大丈夫だったんですか!?後から変な感染症とかに掛かって死んだり、灰人になったりしませんか!?何よりも何で言葉が通じるのさ!?」


心に溜まっていた物をぶつける。最後は敬語ではなかったが、構うものか。


肩で息をしている私に、ウラディミールさんがすっと紅茶を差し出す。私も人体への影響など気にしていられず、ぐいっと紅茶を煽った。


「空気や言葉に関しては問題はありませんよ。召喚された勇者様にはこちらの世界の全てが受け入れられるようになっているので。食べ物に関しても問題ありません。数代前の勇者様達が、ガイアスロイにご自身の世界の食べ物を普及されたので、こちらでもミナ様の世界の野菜だったり食べ物が出回っておりますから」


いや、日本では(コボルト)の料理なんて出てませんでしたよ?


あれ?私の世界の食べ物が出回っている?


「ミナ様が異世界から召喚された五代目の勇者様となりますね」


ウラディミールさんが、事も無げにサラッと爆弾発言を発したのであった。





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