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未知なる食材のようです

ドレスを着せてもらった私は、ロズさんに案内をされて、食事をする為に使われる部屋へと入った。


凄いな…応接室に寝室、小さいとは言え食堂があり、専用の衣装部屋に、トイレと風呂付き――何でも、この空間が全て私用に宛がわれているのだと言う。


家賃はお幾らですか?


余計な事を考えていても仕方がないので、指定された席に座って料理を待った。


ロズさんとは別の侍女さんが来て(ロズさんと同じ服だから侍女だと思う)、様々な料理を机に並べてくれる。


ここは前菜とか主菜とかが一品ずつ出てくる訳ではなく、まとめて全ての料理が出されるらしい。

一品ずつ順番に食べるのは、何だか食べた気がしなくて嫌だから、こうやって全部の料理を出してもらえるのは有り難かった。


サラダにスープ、肉料理にパン、そしてジュースの注がれたグラスが並べられている。どれから食べるか迷うな…と思ってから、ハッとする。


これ原材料何なのよ!!


普通に見映えと香りの良い料理が出された事で、気を緩めていたがここは異世界。地球とは違う物を主食としているかもしれない。寧ろ――ハズだ。


我に返った私は、傍で待機していたロズさんを呼ぶと、これらの料理の原材料を持って来てもらうように頼んだ。


快く引き受けてくれたロズさんは、それから程なくして、両手に持っている籠に収まりきらない程の食材を持って戻ってきた。


結論から言うと、野菜類は大丈夫そうだった。


何故だか分からないが、野菜は日本でも食べていた物ばかりだったのだ。


異世界なのに何でや!!


そう思いつつ、サラダにかけるドレッシングを手に取る。サラダ油をベースに作ったドレッシングらしく、こちらも問題は無さそうだ。しかし、サラダ油まであるのか…。凄いな異世界。


問題は肉料理の方だった。


ステーキのように焼かれた肉は、かかっているソースも相まって、とても食欲をそそられる。どんな肉を使っているのだろうか?

サラダが大丈夫だったのだし、肉も牛や鳥、豚等の一般的な肉を使用しているかもしれない――そう思って、期待していると男の人がカゴを持ってくる。


中に居る動物が肉料理の正体のようだ。思ったよりも小さいカゴに牛や豚の線は消えた。ならば鶏かな?と思ってよく見ると、二本足で立っている犬だった。


「コボルトです」


そうあっさりと言ってきた男の人に対して、私は無言でカゴに容れられているコボルトをガン見していた。


犬…だよな?二本足で立っているけど、犬だよね?


無言でコボルトを見つめる私に、男の人は説明を始めた。


「コボルトは低級の魔物(モンスター)です。この辺りですと、街から少し離れた森や草原に生息しています。小さくて弱い魔物(モンスター)ですので比較的討伐しやすく、小柄な為、肉は柔らかめで食べやすく、食用としても用いられます。ここではポピュラーな食べ物として狩られる魔物(モンスター)ですね。そうそう、可愛らしい見た目から愛玩動物(ペット)にする人も後を絶たなく、ペットのコボルトの死後は、そのコボルトを食べて冥福を祈るそうですよ」


最後のは聞きたくなかった。


カゴに容れられたコボルトが円らな瞳で、じっとこちらを見てくる。私もそれから目を逸らせない。






コボルトの肉料理以外を食べた私は、グラスに入ったジュースを口に運んだ。有難い事に、ジュースに使われた果物も地球の果物と同じだった。今口を付けた物は、マスカットジュースだ。酸味はこちらの方が強いが、純粋にマスカットを搾っただけらしいから、こんな物なのだろう。


しかしアレだな。犬(魔物ですが)を食べるとか、やはり異世界なんだな。

いや、確かにどうしようもない危機的状況であるならば、有り得る事なのかもしれないが、如何せん現代日本人の私には、犬を食べる事は出来そうにありません。


てか、サラダや果物は普通だったのに、肉だけいきなりファンタジーにならなくてもいいじゃないか…。


しかもコボルトたんマジ可愛かったし。コボルトたんじゃない…コボルトだ。


動揺のあまりネット用語が出てしまった。天使と言わなかっただけマシか。


しかし、お腹が空いていたせいもあって、こちらの食材を胃に入れてしまったのだが、大丈夫なのだろうか?人体に悪影響が出ない事を祈る。


そうして、食後の紅茶(これも地球の茶葉と同じだった)を飲みながら一息吐く。


この後に、昨日見た銀髪男さんと青髪男さんの元へと足を運ばなければならないらしい。


自分で呼んだんたから、向こうから来ればいいのに――と思い、ロズさんに言ってみたら、「ミナ様…今のお言葉は聞かなかった事に致します。私のチキンハートでは、寿命が幾分か縮まった気が致しますわ」と答えられてしまった。


チキンハートって、この世界にも鳥は居るようだ。ちょっと安心した。試しに鳥料理をリクエストしてみよう。


私が違う事を考えていたのに、気が付いたのか、ロズさんからは「ミナ様は胆の座ったお方なのですね」と苦笑されてしまった。


自覚はありませんよ?


まぁ、奴隷ではなかった事には安堵しましたが、本人(わたし)に無断で連れて来たんですから、ちゃんと話を聞かせてもらいますよ?


勿論、話を聞くだけでは済まないのだろうけどね。





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