表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/53

トイレが詰まりました…泣きたい

おはようございます。窓から差し込む光がとても爽やかです。太陽とおぼしき惑星?恒星?判断がつかない物体が空に浮いてます。あれが、地球で言う所の太陽であるならば、今はお昼前の陽の高さになりますね。


結局、魔法を掛けられたショックから現実逃避の為に、さっきまで見事に爆睡していましたよ私。


ふかふかの布団のおかげで、快眠できた私は昨日よりは冷静になれたようで、とりあえずトイレに行きたい衝動に駆られている。

朝起きたら、皆尿意を催すよね?私だけじゃないよね…。


部屋の中を見渡すと、幾つか扉があったので一つずつ開けて中を確認する事にした。うん…悠長にお部屋探索してる場合じゃないから素早くね。


一つ目の扉の向こうは衣装部屋のようで、大きな姿見の鏡と沢山のドレスが掛けられていた。世に言うお姫様ドレスと呼ばれる物だ。昔なら憧れたであろうドレス達も、今の私からしてみれば「嵩張(かさば)る服だなぁ」位の認識しかない。


二つ目の扉を開けると、私が住んでいる部屋よりも何倍…嫌、何十倍もの大きな部屋があった。家具やら調度品を見るに、来客用の部屋なのかもしれない。応接室みたいな物だろう。


三つ目の扉を開けると、やっとトイレと思わしき個室を発見した。その隣の扉を開けると脱衣場と浴室があった。良かった…バストイレは別のようだ。


ひとまず、扉の鍵を掛け(日本みたいに中からカチリと鍵を掛けるタイプだったのは有り難かった)日本の水洗トイレそっくりなトイレで用を足すと、トイレットペーパーのような物が備え付けられていたので、恐る恐る手に取って調べる。


何か日本のトイレットペーパーよりもゴワゴワしていたが、背に腹は変えられないので、仕方なくそれで拭いた。ちょっとチクチクして痛かった。あまり使い続けるとお尻がかぶれるかもしれない…。使う時はそっと拭こう。異世界でまさかお尻の心配をする事になろうとは。


立ち上がってトイレの水を流そうとして、ハタと硬直する。


どうやって流すの!?


水洗トイレそっくりな造りであった為に、そこまで気が回らなかった。というか、膀胱さんが我慢の限界だったから、なりふり構わず用を足した――と言うのが正解なのだが…。


必死こいて、ひたすら個室内を探しまくった。だって私、年頃の娘さんですよ?流していないトイレが周囲の人達にバレたら恥ずかしくて憤死する自信がある。


トイレ内を探し続けていると、紫色に光る石が後方に取り付けてあった。

半ばヤケになれ!!とその石を触ると、トイレの中からゴポォという音と共に水が流れていく。


これか!?


魔法が使える世界でありながら、しかも水洗トイレまであるとは…この世界の技術水準は日本並に高い。


まぁトイレットペーパーはゴワゴワしていましたがね。これは要改良求む。便座の蓋をして、一息吐いていると――


ゴポォゴポポポ…と嫌な音が聞こえてくる。見てみぬ振りも出来ず、そっと蓋を開けると、トイレットペーパーが詰まっていた。


何なんだ。紙は水で溶ける訳ではないのだろうか?スッポンでもあればカポカポするのだが、生憎トイレ内にはなかった。


部屋中を探してみたが、掃除用具入れはなかった。


どうするべきか…。トイレを詰まらせるなんて恥ずかしい真似を伝えるのは、気が引ける。だからといって、このままにして置いてはトイレに行けない。


仕方がないので、恥を偲んで部屋に入ってきた人に伝える事にした。


部屋に入って来た人は侍女さんらしく、私を呼びに来たそうだ。その侍女さんにトイレに紙を詰まらせた件を伝えると、一瞬だけ「え!?」という顔をしたが、直ぐに真顔に戻り「畏まりました」と言って、私を衣装部屋へと案内してくれた。

大きい方で詰まらせたのじゃなくて、本当に良かった。






◇◇






「着替えられましたらお食事をこちらへと運ばせて頂きますね」


そう柔らかな笑顔で言ってくれたのは、薄い色素の桃色髪に、桃色と赤色を混ぜたような瞳をした可愛らしい侍女さんだ。名をローザヴィと言うらしい。ローザヴィとは、『ピンク色』という意味らしく、彼女にピッタリの名前だった。と言うか、まんますぎて彼女の両親のセンスを疑う。私的にはお似合いの名前だと思いますがね。


言いにくいけれども。


「宜しければローザ、もしくはロズとお呼び下さい。皆には愛称で呼ばれておりますので、勇者様」


考えている事が顔に出ていたのだろう。ロズさんは自身の愛称を教えてくれた。それにしても「勇者様」は止めて頂きたい。何となくテンションが下がってしまうのだ。


「ロズさん。私の名前は水無月と言います。勇者様ではなく、水無月と呼んでくれませんか?」

「ミ…ミナ…」

「水無月です」

「ミ…ミ…ミナ…ヅ…」

「…ミナで構いませんよ」


申し訳なさそうにシュンとしながらロズさんは「申し訳ありませんミナ様…」と項垂れてしまった。


そんなに言いにくい名前だろうか?まぁ、私もローザヴィとは言いにくいし、日本語圏ではなさそうだし仕方がない。


日本語使えてますがね。


ロズさんに進められて着せてもらったドレスは、コルセットを絞めなくても大丈夫な胸の下から広がるワンピースのような型のドレスだった。さわり心地も良く、良い生地を使っているのだろう。原材料が不安だが…。


どうか未知の動物の皮を使っているとかありませんように。体に害を及ぼしませんように。


そんな事を心の片隅に思いつつ、一番の問題はサイズだった。ドレスが大きくて、ぶかぶかなのだ。そんな私にロズさんが、ユルユルにならないように、結構キツく胸下回りをリボンで縛って調整してくれた。流石はプロだ。ドレスがずり落ちる心配もない。


因みにこの世界の女性は高貴な身分の人ほどドレスを着用するらしいが、コルセットは絞めずに己の本来の体型に合ったドレスを着るらしい。上手く調整すれば、ドレスが着崩れする事もないらしい。


どうしてコルセットをしないのか聞いてみたら、「男性が女性本来の体型を愛するべきだからだそうですよ」とか、言われた。

コルセットで腰回りをギュウギュウに細くしても、夜の男女の営みでバレるからだろうか?腰が細すぎると、子供を産めるか心配になるからだろうか?どちらにしても、あまり興味はないのだけど。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ