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テレビ的な何かじゃない…だと

よくWeb小説にある、定番の異世界トリップと呼ばれる物に遭遇する事になるとは、18年間と生きてきて思いもよらなかった。






そう、私はようやっと慣れてきた大学からの帰り道、もうすぐで19歳の誕生日だなぁ…等と考えながら、てくてく最寄り駅から原付のある駐輪場まで歩いていた。

そこまでは覚えている――のだが、気が付いたら横になって寝ていた。


何を言っているか分からないが、私自身も何を言っているのか(ry

とまぁ、まるでポルナレフ状態になりながら、体を起こすと背中には硬い感触があった。

ちらりと下を見ると成る程、薄暗い視界の中でも分かる、四角いコンクリートのような所で寝ていたらしい。


「あいたた…」


小さく呻きながら立ち上がると、薄暗い中、微かに(うごめ)く気配がする。私がとっさに身構えると、怪しげなフードを被った人?が近づいて来た。


「お待ち致しておりました。この世界ガイアスロイを救いし、我らが希望の勇者よ――」


そう言って、口を開いた人物?がフードを取り払うと、よくある漫画や小説に出てくるような、多分銀色っぽい髪に、こちらも多分銀色っぽい瞳をした男の人が、恭しく片膝をついて一礼してきた。

多分と言うのは、回りが薄暗くていまいち判断がつきにくいからだ。


男の人が一礼した瞬間、辺り一帯が一瞬にして明るくなった。いきなりの眩しさに目が眩み、手で視界を遮る。私のそんな動作に、離れた所に居たらしい何人?(人で合っているから不明だが)かのフードを被った人物達が、一歩後ずった。目の前の男の人は一礼したままだったけれど。ちなみに、明るい中で見るその髪色はやはり銀色だった。


とりあえず、手で視界を少し暗くしながら、周りを見渡すと、突然明るくなったのは松明に火が灯ったからのようだった。どうやって点いたのか?疑問に思いつつも大分と目が慣れてきた為に、手を下ろして辺りをゆっくり見る。


ここは建物の中のようで、沢山の柱が頭上の天井を支えているようだ。壁には不思議な絵が描かれており、中には見たこともないような文字が記されている。

私が寝ていたらしい四角いコンクリートを見ると、回りにはファンタジー世界でお馴染みの魔法陣のような物が描かれていた。


しかし、ガイアスロイとは何なんだ?地球ではないのか?実は国の名前がガイアスロイと言うのだろうか?しかし、地球にガイアスロイだなんて国名があっただろうか?世界史は得意じゃなかったから、分からない。そもそも銀色の髪の毛の人種など見たこともない。

あれか!?世に言うカラーリングと言うヤツで染めたのか?胡散臭いフードまで被っていたし…。


そこまできて、私の頭はピコーンと閃いた。


そうか!!テレビだ!!何かのドッキリ番組に一般人を参加させるという企画なのだ!!

そこに気がついた私は、自然と体が楽になる。知らず知らず、緊張していたのだろう、掌が汗ばんでいた。

しかし、一歩間違えば誘拐だと何だと喚いていただろう。危なかった…本当に危なかった。


しかし、最近のテレビ番組は凝っているなぁ。こんな大きな建物のセットを用意して、知らない内に民間人を連れてくるなんて。

あれ?私、どうやって連れて来られたのだろうか?これテレビじゃなければ本当に誘拐ではないか。いや、テレビでも本人の了承も無しに連れて来るのは立派な誘拐だ。後でたんまりと礼金を貰わなければ。


「あの、勇者様…このような場所ではゆっくりと話も出来ないので、場所を移しても宜しいでしょうか?」


私が一人でこっそりとグチグチと呟いていると、銀髪の男の人が話し掛けてきた。


成る程、この建物を出たらネタばらし――と言う訳か。私は、「はい」と頷いてから、男の人の後ろについて歩いて行く。

しかし、こんな事ならもう少し大騒ぎした方が、テレビ的には良かったのかもしれない。


そう思いながら、神殿のような建物を銀髪の男の人の後ろを着いて行きながら、ひっそりと後悔していた。


そうこうしながら、建物の出入口であろう門をくぐった私は、先程まで冷静すぎた自分自身の脳ミソに、別の意味で後悔する事になった。


「ここ…何処?」


そう、私が目にした光景は、建物の遥か眼下に広がる、正に中世ヨーロッパ風の街並みと、その向こうに見える存在感溢れる巨大な城だった――。






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