第一章八話「日照りの神」
カザリカは興奮したように話しを続け、十数分ほどで電話を切った。
くるりと振り向き私達のほうを向くと、やはり興奮したように話す。
「由香がヒデリ様と知り合いなんですって!」
由香とはカザリカの知り合いの人間のことだ。
それよりも今すごいこと言わなかったか?
「あのヒデリ様と……?」
「ヒデリ様って?」
「ヒデリ様はその名の通り日照りの神。雨が続いた時などに畑や田んぼを照らしてくれる”神様”だよ」
ヒデリ様は今でも農家の人間に信仰されているようで、強い力を保っていると聞く。
「とりあえず今は情報を集めましょう」
カザリカの言葉に「いえっさー」と返事をする。
しーくんは自分も協力すると言ったが、色んな妖かしがいる山の中ではいつ襲われるかわからないし、何よりカザリカの家に来るのはOKしたのだからと説得し家に帰した。
山の妖かし達に話を聞いたところ、二日後に祓い人が山に来ることがわかった。下見か本番か分からないが、警戒するに越したことはない。
「二日後……それまでにヒデリ様の所へ行かなくちゃね」
カザリカの言葉に、私はこくりと頷く。
二人で話し合った結果、明日ヒデリ様の元へ向かうことにした。
翌日、来るはずのないしーくんが来てしまった(気になったのだろう)ので仕方なく三人でヒデリ様の元へ向かった。ヒデリ様は人間と強く関わりがある。しーくんが一緒でも平気だろう。
ヒデリ様に事情を話すと、協力することを約束してくれた。
「祓い人か……最近は随分減ったと聞くがいなくなったわけではないからな。山神とは古くからの知り合いだし必ず協力しよう」
「ありがとうございます!」
三人で頭を下げお礼を言う。
山神様を呼び捨てにできるのは古くからの知り合いであるヒデリ様ぐらいだろうなと思った。
「よかったわ、ヒデリ様の協力が得られて」
「帰ったら山の皆にも事情を話して協力を要請しよう」
祓い人がくる。ヒデリ様の協力が得られたからと言って安心しきってはいられない。
しーくんと途中で別れ、カザリカと二人で山へ帰った。
協力者が得られました。しかも神様。これで一安心……ってわけにもいかなそうですね