第一章七話「一つの不安」
「祓い人……!」
昨日の雨風が嘘のように晴れた日の午後、怪しい人を見たというしーくんの話を聞くと、おそらく祓い人だろう。
山に住む妖かし達の話によると、最近は来任らしき人間が付近をうろついてるとか。
しーくんが見た怪しい人も付近をうろついてる祓い人のことだろう。
こないでくれと願っていたがついに来た!私は頭を抱えて唸りたくなった。
祓い人のよる妖かし狩りも最近じゃ随分減ったが、それでもまだなくなったとは言い切れない。
昔は人間に害のある|(人間を襲うとか)妖かししか祓われなかったのに、時が経つにつれて妖かし狩りが始まるようになった。人間が妖かしの存在そのものを悪として考えるようになったのだ。妖かしは悪だ、悪は滅ぼせ、そんな考えが広まるようになった。
もちろん全ての人間がそうだったわけじゃない。中にはこっそり逃がしてくれる人間もいた。だからこそ私は人間を嫌わずにいられたのだ。
「祓い人って、妖かしを祓ったりする人のことか……?」
「そう。最近じゃ随分減ったけど妖かし狩りなんかをする祓い人もいる」
「そんな……この山の妖かし達危ないんじゃ……」
妖かしに襲われたことがあるだろうに、山の妖かし達を心配してくれるしーくんの優しさに嬉しくなる。
なんて優しくて、いい子なんだろう。
「危ない。けど、何とかする」
この間までただ一人で不安がってた。でも今は違う。カザリカが言ってくれた、仲間がいると。
祓い人と鉢合わせると危ない(祓い人は妖力の強い人間を見つけると勧誘するので)からと帰りを促したが、帰らないと言うので仕方なく二人でカザリカの元へ向かった。
「祓い人ね……そういう話は最近よく聞くわ」
カザリカは渋い顔をして話を聞く。
「とりあえず知り合いに連絡するわ」
そう言ってカザリカが取り出したのは何と携帯。こんな山奥で繋がるのかとか何でそんなハイテク機器持ってんだとか色々聞きたいことはあったが、カザリカが平然とした様子で携帯を弄ってるのを見て、黙ることにした。
カザリカは何度か見てる知り合いに片っ端から電話をかけているようで、かけては少し話し、かけては少し話しを繰り返し、一人の人間と話してる途中で驚きの声をあげる。
「ええ!? そんなお方と知り合いなの?」
続きます。カザリカは日和と違って山を下りれるので携帯のほかにも色々と持ってそうですw