第一章六話「妖かしの日常」
明日しーくんがくる――そんな楽しみに浸っていたら、突然の雨。
自分の住処よりも近いので、急いでカザリカの住処へ走る。
「酷い雨」
ざあざあと音を立てて降る雨は、強風が加わって外は酷いことになっている。まるで嵐のようだ。
ひびの入った窓は意外と頑丈なようで、強風にも割れずに耐えている。
こんな天気で、明日は晴れてくれるだろうか――
いや、晴れじゃなくてもいい。せめて小雨か曇りだ。
小雨程度なら傘をさしてきてくれるだろう。だが、こんなに酷い雨ではきてくれないだろうし来させるつもりもない。傘をさしてても確実にずぶ濡れになるだろうし。しーくんに風邪を引かせるわけにはいかない。
「明日しーくん来てくれるかしらね」
ころころとからかうように笑いながらカザリカが言う。
「その呼び方は私専用!」
と、勝手に決めたので頬を膨らませて怒る。
「妬けるわぁ」
「もう、カザリカ!」
くすくすと笑いながらカザリカは狭い小屋の中を逃げ回り、私はカザリカを追いかける。
小屋は思ったよりもしっかりしていて、どたばたと走り回っていても強風がふいていてもまるで揺れる様子はない。この小屋は恐らく40年ほど前に建てられたものだろう。小さい割にしっかりとした作りだ。普通40年も経てばガラスは割れすきま風がびゅーびゅーふくだろうに。くそう羨ましい。
私の住処はすきま風がびゅーびゅーふくのだ。
暫くどたばたと走り回っていたが、やがて二人とも疲れ果て、床に寝転ぶ。
綺麗好きなカザリカのおかげで床には埃一つ落ちてない。何なら今すぐ舐めれそうなぐらい綺麗。いや、しないけど。
掃除は毎日欠かさずやっているらしい。流石綺麗好き。私も見習うべきだろうか。
いやしかし私の住処はカザリカよりも古いし、蜘蛛の巣とかとるの面倒だし嫌なのでやっぱり見習うのはやめよう。
多少汚くても住めればいいのだ。そんな考えの私だからカザリカにもっと部屋を綺麗にしろとお小言をもらうのだろう。あんたは私のお母さんか。
小さい子供のようにはしゃいでるうちに、あんなに激しかった雨と風がすっかり治まっていた。
「明日晴れるといいわね」
カザリカの言葉に、私は笑顔で頷いた。
基本面倒臭がりな日和ちゃん。掃除は多分一年に一回とかそんな感じ。しかも超適当。