第一章五話「カザリカ」
「こちらカザリカ。私の友人だ」
私の横に立つのは紫色に蝶が描かれた着物を着た妖かし―ーカザリカである。
カザリカは微笑を浮かべながらしーくんを見据えている。
「よろしく」
そう言って差し出されたしーくんの手に躊躇いが見えなかったのは相手が私の友人だからか。自惚れかもしれないがそう考えると嬉しくてにやけそうだった。
頬が緩まないよう慌てて口を一の字に結ぶ。
そんな私の姿を怪訝な目で見つめていたカザリカはにこり、と笑みを浮かべしーくんと握手をする。
「カザリカは妖かしのお医者さんでもあるの。人間にも効く薬も持ってるから山で怪我をしたらカザリカの所へ行くといい。カザリカはこの間行った川の近くの小屋に住んでるから」
そうしーくんに紹介すると、カザリカが驚いたように声をあげる。
「すごい……なんて強い妖力なの」
妖力とは、妖かしが持ってる力のことである。稀に人間の中にも妖力を持った者がおり、その者は妖かしを見ることができる。
カザリカはたまに人間を診ることもあるようで、見える人間はカザリカにとってはそう珍しくないようだが、しーくんの妖力の強さには流石に驚いたようだ。私も初めて会った時はしーくんの妖力の強さに驚いたものだ。
しーくんのように強い妖力を持った人間が祓い人になっていたらと思うとぞっとする。
祓い人とは――妖かしを術などを使って封じたり、祓ったりする人間のことだ。妖かしにとっては何よりも恐ろしい存在である。
この山はずっと守り神である山神様が守っていた。もし山神様が消えた今を狙われたら――
「ひよ、大丈夫か。顔青いぞ」
しーくんの言葉で、私はしーくんとカザリカの二人が心配そうにこちらを見つめているのに気づき、慌ててぎこちなく笑みを浮かべる。
「大丈夫」
しーくんは暫く心配そうに見つめていたが、もうすぐ日が暮れるからと私が帰りを促すと渋々と言った様子で帰って行った。
「人間の仲間だっているんだから、祓い人なんてへっちゃらよ」
何でも見透かしたようにカザリカが言った。私が祓い人のことを不安がっているのに気づいていたようだ。
「ありがとね」
そう言って、今度こそちゃんと笑みを浮かべた。
愁夜くんの友達に続き日和ちゃんの友達登場。妖怪と言ったら祓い人ですよね!(訳分からん)






