プロローグ
伊藤:「美里ちゃん大丈夫かなぁ・・・」
狂人たちが『人探し』に出て次の日の朝
第6国民の【伊藤 優衣】が呟いた
直子:「なにあんた美里の事心配してるの?」
そこに国王代理の直子が現れる
伊藤:「あ、直子さん」
美里:「美里は大丈夫よ。むしろ私は智子と哲也って言う2人組の方が心配だわ」
伊藤:「そうですか?」
綾:「あんたら何の話してんの?」
2りが短い会話をかわしていると、汗をタオルで拭きながら第2国民の【桐ケ谷 綾】が近付いてきた
直子:「おお綾さんじゃんか。畑はどうですかい?」
綾:「いい感じよ。今守が食えるのと食えないの仕分けてるとこ」
綾が指さす方向では1人の男が中腰でせわしなく手を動かしている所だった
伊藤:「そうですか。守さんは臨時の国王になっても仕事はサボらないんですね」
直子:「お? それは私への当てつけですかな?」
直子はいたずらを仕掛ける子供みたいな笑顔で伊藤に聞く
伊藤:「あ、いえそんなつもりは・・・」
綾:「守は畑仕事くらいしかとりえないからいいのよ。んで、直子は仕事をサボって居ると」
直子:「さぼってまっせーん。国民の健康状態を知るのも国王の立派な仕事で―す」
綾:「あんたって奴は・・・」
綾は軽く手を振り上げる
直子:「あぁ拳を振り上げないでくだせぇ姉貴!」
伊藤:「暴力はいけませんよ綾さん」
綾:「それあんたの親友にも言ってやりなよ。伊藤さん」
伊藤:「美里ちゃんは昔から気性が荒かったから言っても聞きませんよ」
直子:「昔から気性が荒かったんだ美里・・・」
綾:「まっ、だから今回の遠出? 遠征か。にも狂人とついていけたんだろうね」
直子:「あの騒がしい国王が1日でもいないとこんなに時間が緩やかに過ぎるとは思わなかったわねぇ」
伊藤:「狂人さんは良い意味で騒がしいですから」
綾:「良い意味でかなぁ?」
??:「おいおい女だけで何の話してんだ?」
男が軽い足取りで女の話しの中に入る
スゴイ勇気だ
直子:「おっ、どうした努」
男の名前は【新井田 努】。最近国に入った国民だ
努:「あ、いや見張り番ちょうど変わったところでお前らが楽しげに話してたからよ」
綾:「いや、狂人の話ししてたんだよ」
努:「あぁ狂人さんの話しか。そういえば狂人さんってすごいよな。普通にゾンビはびこる町に行くんだもんな」
努はゾンビの事を思い出したのか肩をすくめる
直子:「凄いっていうか考えなしっていうか、だね」
伊藤:「でも狂人さん達、ゾンビの町で一夜を明かしたんですよね・・・。本当に心配です・・・」
努:「ほんと、無事ならいいんすがね・・・」
直子:「大丈夫だって! 安心しなって!」
直子は無い胸をはって言いきる
綾:「あんた良く言い切れるわね? ・・・・なんか隠してるでしょ?」
そんな直子に疑問を抱き、綾が詰め寄る
直子:「え? な、何故そう思うのかにゃ?」
綾:「根拠もなくあんたがそんな自信満々に言いきる訳ないじゃない。なんか遠征組が無事であるって根拠が有るんでしょぉ?」
伊藤:「え? 直子さんそれどういうことですか!?」
直子:「いやいやなんのことだかー」
努:「教えてくれてもいいじゃないっすか!」
直子:「そ、それは・・・ん?」
直子が返答に困っていると、綾が来た方向から今度は男がこっちに走ってきた
綾:「どうしたの守?」
守と言われた男は、息を切らしながらも声を上げた
守:「ハァ・・・ハァ・・・。 努!お前見張りはどうした!?」
努:「え? 真と交代したが?」
守:「マジかよ・・・! 真は何処だ!?」
努:「み、見張り用のジャングルジムじゃないか?」
守:「わかった!」
守は努の返事を聞くや否や直ぐに走り出す
伊藤:「ま、待って下さい!」
直子:「穏やかじゃないね・・・」
綾:「私も行く」
努:「俺も」
4人は守の態度がいつもと全く違うのに違和感を感じ、直ぐについて行く
そして4人がジャングルジムにつくと、ちょうど守が見張り役をしていた真と話しだしたところだった
真:「あ、守お兄ちゃん! 丁度よかった! 今から行くとこだったんだぁ」
守:「ちょうど良かった?」
真:「うん。あそこにゾンビじゃなさそうな人がいるんだぁ」
真のどこか嬉しそうな声に一同は驚く
直子:「!! まさか、生存者!」
伊藤:「早く助けにいかないと!」
直ぐに行動をしようとする2人を守が止める
守:「まて!! ・・・真、そいつは今こっちに向かっているのか?」
真:「あ、待って今望遠鏡で見てみ・・・・わぁ!!」
真は見張り用の望遠鏡を覗き、驚きの声を上げ望遠鏡を落とす
綾:「どうしたの真!」
努:「おま、望遠鏡おとしたらダメだろ! 壊れたらどうすんだ!」
直子は望遠鏡を拾う。どうやら壊れてはいないようだ
真:「い、いま、こっち見た・・・」
真はジャングルジムの上でお化けでも見たかのように震える
伊藤:「みた・・・?」
真:「凄い遠くにいるのに、僕の方をすごい勢いで振り向いて、笑った!!」
守:「っ! 貸せ!!」
直子:「ちょっと守!!」
守は直子から望遠鏡を奪うと急いでジャングルジムに上がり望遠鏡を覗く
守:「・・・おいおいおいおいふざけんなよ今は美里も勇人も、狂人もいないんだぞ・・・!!」
綾:「なに!? 何を見てるのあんたは!!」
守:「綾! 『緑ののろし』を上げろ!!」
守は焦りながらも的確に指示を出した
綾:「は!? み、緑!?」
伊藤:「緑って守さん!!」
守:「いいから早く!!」
綾:「ッ!! クソ!!」
伊藤:「綾さん! 私も手伝います!!」
綾と伊藤は急いでどこかに走り出す
直子:「もう何なのよ! 真!!」
真:「え、あ、はい!!」
直子:「他の奴らと一緒に小屋に行きなさい!!」
真:「へ!? こ、小屋?」
直子:「ええ早く! あと努は春夜を連れて来なさい!!」
努:「春夜さん!? 今どこにいるんすか!?」
直子:「あのロリコンの事だから子供たちと触れ合ってるはずよ!! いいから早く探して来なさい!!」
努:「わ、わかりました」
直子も守の変わりようになにかを感じ、緊急用の指示を飛ばす
直子:「もう! 守!! 私にも望遠鏡貸しなさい!!」
そしてジャングルジムに登り、守から望遠鏡を渡して貰おうと手を伸ばす
守:「もう必要ねぇよ」
直子:「・・・・へ?」
だがその手は何も得ずに止まる
守:「・・・・くるくるくるくるくるくるくるくる、来た!!!」
その瞬間、この国に紅い招かれざる客が『壁を飛び越えて』来訪した